秒速10センチの越冬
A short story that captures youth, labor, and loneliness in a dry, restrained style. The sense of precarious urban life becomes the work’s core.
Work Information
It directly captures the lived feel of precarious work and life.
Published by Kodansha and winner of the Gunzo Newcomer Literary Prize. It calmly depicts everyday instability and the work experience of a younger generation.
Book Information
- Publisher
- 講談社
- Published
- 1997-11-01
- Pages
- 164 pages
- Language
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062089678
- ISBN-10
- 406208967X
- Price
- 1980 JPY
- Category
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
おれのくそったれな労働の日々。 粗野で繊細、シニカルで純情。独自の文体で「現在」をとらえる各紙誌絶賛の群像新人賞受賞作。 【選評より】 ●『秒速10センチの越冬』を推した。これはいわゆる「フリーター」の生活と労働を描いたものだが、ここには数年前まで跋扈したような軽さがまだ残っていながら、同時にそれが危うくなりホームレスとの境界に近づいているような曖昧な状態がとらえられている。──柄谷行人 ●リアリズムの鮮烈さが長所といってよい。「敗北」した自分と他人との「関係」を淡々とけれん味ない文体で語っているけれど、風刺と抵抗の気分が溌刺としていて、ひとつの青春風景を書き抜いていた。──李恢成
1968年東京生まれ。早稲田大学第2文学部卒業。1997年、『秒速10センチの越冬』で第40回群像新人文学賞を受賞。
Reviews
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フレンドリーなプロレタリア文学
岡崎祥久は1990年代に突如出現した「プロレタリア作家」だが、彼が好んで描くところの労働者の生きざまには、かなりの香ばしげな味がある。主人公は工場で単純労働をやっている青年。精神も身体も、なぜかいつも過剰に力みかえっていて、孤独であることに軽いこだわりを持ち、ひいては美学のようなものすら持っている。それによって独自のライフスタイルを確立している。しかしまた、この手の変人にありがちな自家中毒的な頑迷さの無いところが素晴らしい。 月に一度、必ず行きつけの美容院で髪をカットしているのも可愛いし、専らバッハばかり聴いていて女子に初めてローリング・ストーンズを聴かされ、「鳴り出してみると、そいつはなかなか強力な音をしていた」と述べたりするフレンドリーだがどこか浮き世離れしている感受性が読んでいてたまらないのだ。
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芥川賞を獲って、作品が文庫化されるといいな。
この作品を読んだのはもうかれこれ10年以上前になるでしょうか…。 当時この作品が、あの群像新人賞を獲った事を知り、タイトルも内容も面白そうだったので、図書館で借りて読むと、やはり面白かった事を昨日の事のように(ではないですが)覚えています。この作者の作品が、文庫本になったら集めようかなと目論んでいたのですが、僕の知る限りまだ一冊も文庫化されていません。(作者が文庫化を許可していないのかもしれませんが・・・) 芥川賞候補に三度もなり、野間文芸新人賞も受賞していて、何より作品が面白いのに、それほど知られていない、読まれていないのは少し釈然としません。 この間の芥川賞を受賞して一躍時の人!?となった西村賢太さんと年齢もそう変わらないので、まだまだこれからだということを信じて応援します。
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工場労働者に
工場のライン作業をしたことのある人にとったら、すごく分かる内容。書籍取次工場で働きながらの心の内や葛藤を淡々と描いた、一見、日記の様な小説だが、十分楽しめる。そうなんですよね、小汚い工場にたまに、「何でこんな所に?」って言う、きれいな女の子が入ってきたりするんですよね。著者は実体験に基づいてなのか、とてもリアルで共感できました。希望とプライドを持つことが大事なんですよね。自分も希望を探してみようと思いました。フリーターをはじめ、悶々としてる人に読んでもらいたい佳作です。
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労働をつきぬける希望
書籍取次ぎの会社で働くフリーターの青年の一冬の生活を描いている。読んでみると意外と古典的な小説だと気がつく。作者は1968年生まれだが、古くて新しい主題に、乱暴なスタイルに擬装しながらあえて挑戦していて、そこに独自な物を感じた。労働を重ねていくなかで、労働にハマっていたことを自覚させられる。その体験は苦痛を伴うものではなく、新たな希望を若者のなかに培っていく。それは今も昔も変わらない希望の一つを探しあてたような気がして、心強くさせる部分でもある。労働そのもののなかに価値や喜びを見出す瞬間に出会った思いだ。なかなか多く書き手が挑戦してきたところだが、作品につづるということは簡単なことではない。恋愛もあるがそれはプラトニックなものに推移していくが、それがかえってリアルな重みがある。なげやりな文体にしばし、幻惑されるが、それが主人公の真摯な心の叫びを聞くことができる。どこかに自分と重なる部分があり、この作品に共感した。
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もういちど読みたくなる本
群像新人賞受賞と聞いて期待した気持ちを裏切らない本。読みながら最初に感じたのは、早稲田出身の作家かも?ということ。最初から最後まで読みやすい文体で、寝る前に読み始め、もったいないと思いつつ、一気に読んでしまった。 どこかに属すだれかになりきらなず、若者本人の生活を書いている。愉快すぎず悲惨すぎない、その間に浮かんでいるところがとてもリアル。ほのかに好意を寄せる女性のあるパーツを何度も描写するのも特徴的で、若い時代、あいまいで膨大な日常の中に目印となるのは、案外、こういうものなのかもしれない、と、その年代を通り過ぎた今思う。「秒速10センチ」で通り過ぎた後、きっと気持ちの中に涼やかな風が吹く。若い人にも、若かった自分を懐かしく思う人にも、ぜひ読んでほしい1冊。