涙香迷宮
A fair-play mystery that pursues secrets hidden in the iroha poem and the shadow of Meiji-era translator and detective-fiction pioneer Ruiko Kuroiwa. It combines codes, wordplay, and literary history to offer the pleasure of decipherment.
Work Information
Beyond the labyrinth of words, Ruiko's shadow and a murderous intent emerge.
Published by Kodansha and later issued in paperback, this novel won the 17th Honkaku Mystery Award for fiction. It links Kenji Takemoto's characteristic linguistic devices with literary-historical material surrounding Ruiko Kuroiwa.
Review Summaries
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The dense craft around language and code is strongly appreciated by readers who enjoy the act of solving itself. At the same time, the intricacy of the devices asks for attentive reading.
Book Information
- Publisher
- 講談社
- Published
- 2016-03-10
- Pages
- 364 pages
- Language
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062199544
- ISBN-10
- 4062199548
- Price
- 2420 JPY
- Category
- 本/文学・評論
明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰! いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。 明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰! いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。 そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。 日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。
1954年兵庫県生まれ。大学在学中にデビュー作『匣の中の失楽』を伝説の探偵小説専門誌「幻影城」に連載し、1978年に幻影城より刊行。日本のミステリ界に衝撃を与えた。ミステリ、SF、ホラーと幅広く活躍し、ファンからの熱狂的支持を受けている。天才囲碁棋士・牧場智久を探偵役としたミステリは1980年~1981年のゲーム三部作(『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』)から現在まで書き続けられ、著者の代表的なシリーズとなっている。
Reviews
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迷宮職人
竹本健治氏の作品は、久しく読んでいなかったのだが、たまたま手にした近作の『かくも水深き不在』が一気読みの面白さだったことに勢いづいて、本作にも触手を伸ばしたら、これがさらに感嘆させられずにはいられない傑作だった。 かつて土屋隆夫氏が、事件÷推理=解決、という数式で推理小説をあらわして見せたのはよく知られているところだが、確かに普通のミステリは、おおむねこの式に当てはまるのだろうが、竹本作品の場合、代表作とされる『匣の中の失楽』や『ウロボロスの偽書』など、本質的にこの式には嵌まりにくいものが多い。あえて同じような数式であらわせば、推理×推理=∞ とでもなるだろうか。推理に推理、思考に思考を重ねるほど、無数の解答の連鎖に見舞われ、唯一の答には永遠にたどり着けない迷宮にはいり込むような作品といった趣がある。普通のミステリでは一番重要な“解答”よりも、複雑無辺の思考の迷宮を描くことが主眼であり、すべてが割り切れた唯一無二の解答などむしろ無用。本作も解答があたえられていない謎が残されていたりするが、普通ならば不満や批判の対象となるこうした点も、いかにも竹本健治らしいと筆者などは思った。 読み始めるや間もなく、囲碁や歌に関する蘊蓄に目くらましをかけられるよう。そして勃発する殺人事件と、発見される黒岩涙香の隠れ家。涙香の家は、子、丑、寅…十二支の名がついた部屋に分割され、それぞれの部屋に四首ずつ掛けられたいろは歌がある。ページにはさまれた見取り図が、まるで星座の輝きに彩られた天体図を見るようでワクワクさせられる。作中のいろは歌が、すべて竹本氏の自作というだけでも驚倒ものなのに、それがさらに暗号をも秘めているという、まさに超絶的な職人技を見せつけられる。囲碁の盤面、殺人事件の犯人捜し、そしていろは歌の暗号―。それらが折り重なって、精妙巧緻な謎解きアラベスクが織りあげられるさまに陶然とさせられる傑作である。 江戸川乱歩や横溝正史などに影響をあたえた、日本ミステリの始祖ともいえる黒岩涙香に関する、伝記的な興味で読んでも楽しめる作品だ。ただ、複雑緻密な趣向や謎解きをじっくり読み込むよりも、スピーディーなストーリーを右に左に大胆にひっくり返してゆくようなミステリが好みの読者には、いささかしんどい作品かもしれない。そういう方には、同じ竹本作品なら、前述の『かくも水深き不在』の方がオススメ。 本作の紹介文を目にした時、暗号ものということで泡坂妻夫氏の『掘り出された童話』を、作中の歌が作者の自作だということで連城三紀彦氏の『戻り川心中』を思い出していた。同じ『幻影城』出身のこの両氏も、練りに練り、凝りに凝った職人技に傑出した作家だったが、本作にも、それに負けず劣らずの名工ぶりが発揮されている。同門の名匠が相次いで鬼籍に入られた後、竹本健治氏には、さらなる傑作を生みだすべく、より息の長い健筆を期待したい。
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牧場智久さんが全て解く
ミステリーというか、推理小説の体を成してはいますが、いろは暗号も事件も牧場さんが最初から最後まで全て解く物語。黒岩涙香さんという傑出した人物を活用し、いろは暗号を作り上げ、推理小説風の物語に編み上げることが目的であって、最初から読者への謎解き挑戦を目論んでいないと思われます。仮に、いろは暗号を解くとなると、作者がこの暗号を作り上げるのに要した時間は最低限必要でしょうから、おそらく、通常読み下す読書時間では到底解けないと思われます。いろは暗号をいかに鑑賞するかが、この物語を楽しめるかどうかにかかってくると思います。 ミステリー的といえば、秋水のクイズの解答は明かされなかったけれど、おそらくは・・・・・だと思います。
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うんちくが凄い
囲碁やいろは歌や黒岩涙香のうんちくが凄い。このあたりのネタが好きな人はたまらないのでは。 だけど私はその辺りの知識も興味もさほど無いので、延々と続くうんちくがきつかった。 ミステリーとしては、目新しさもあまり無く、殺人の動機も弱い。
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美酒⁈
読む巻措くをあたわずというような、ぐいぐいと読者を引き込み、次はどうなるのだろうとページを繰る手の止まらないミステリーが傑作であるのは言うまでのないところでありますが、本作はそれらの作品とは趣きを異にします。 端的に言えば、本作は読者に立ち止まることを要求するミステリーなのです。 ページをめくろうとはやる気持ちをぐっと抑え、手を止め、日本語の奥深さをいかんともなく発揮する目くるめく暗号の数々をとくと味わってもらう、Googleで言葉の意味を逐一調べるのもいいでしょう。つまりは読者に酩酊感、作者と相互的な没入感を持ってもらう、そのことこそが本作の目論見なのです。 芳醇、濃醇な美酒をたっぷりときこしめされた酔客が車を走らせて場をそうそうに立ち去るのがもってのほかの如く、迷宮に放り込まれたものが方角もわからぬまま闇雲に進むのがいかにも浅薄な行動であるが如く、読者は立ち止まって、紙面から滲み出し溢れんばかりの、魅惑的な言葉を杯で掬い取り傾ける、その時間を意識的にでも持たなけれはばならない、その読者の姿勢こそが本作を空前絶後の暗号ミステリーの傑作にまで昇華させるのです。 親切ではないです。言うなれば、竹本健治氏が読者に期待した、頼むぞと願いを込めた、あるいはごめんなさい、なんてお茶目な気持ちも見え隠れする、そんな作品ではないでしょうか。 終盤に智久の涙香分析で、「意味が通じて綺麗にできあがっている作品よりもむしろ遊戯的技巧の極致のような作品の方がむしろ自慢だったのでは」と涙香についての的を射た見解を述べる箇所があります。 これにはまさに竹本健治と『涙香迷宮』の関係性が表わされているのと思います。綺麗に纏められた破綻のないミステリー作品に仕上げることはもちろん竹本健治氏の経験、技術をもってすれば容易かったはずですが、そこにあえて重点を置かない意識的にずらそうとする竹本健治氏の創作への遊戯的意識(趣味?)を、智久に代弁させたかのような智則の涙香考察が竹本健治氏が『涙香迷宮』の創作において暗号(遊戯)を散りばめることに徹した、必然性とも言わないまでも動機が垣間見え、いくらかは得心できるのではないでしょうか。 それとまあ、これは蛇足ですが、智久シリーズであるゲーム三部作などでは当時幼き智久はまるで見当違いの推理などを披露して、事件解決どころか、逆に犯人に追い詰められてしまう始末で、脳生理学者の須藤信一郎がもっぱら事件を解決していたのですよ。ようやく彼も成長してやっと周囲から手放しで褒められるようになったので大目に見てあげてください笑。
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正直厳しい
最初っから延々続く、登場人物同士の褒めあいとそれを上回る主人公賛美がすごい。 ハイハイ天才なのはよくわかりましたよ…と思ったとたん今度は涙香作とされるたくさんのいろは歌を、 登場人物が粋だ上手いと延々褒めるという褒めスパイラルで閉口。 作中では涙香作ということになっていますが、結局これ作者の方が作ったものでしょ? 自分で作ったいろは歌を自分のキャラクターに褒めさせているという構図が最高に気持ち悪くて、 何度かギブアップしようかと思いましたが、読了したら印象が変わるかもしれないと思い、 なんとか読み終えました。 うーん厳しい。でもこれシリーズなんですよね…?僕は竹本さんの本を読むのが初めてだったのですが、 こんな毎回延々「天才!」「いやいや偶然ですよ~」のようなやりとりをしているんですか?正気ですか? 途中から褒めるのにも飽きたのか事件が展開しはじめるのですが、 少なくなったとはいえ「さすが天才」「かなわないな」のような言葉が合いの手のように入り、 なんだか最後のほうは面白くなってきました。ですがそういう面白さはいらんのです。2000円以上するんやぞ! あれだけのいろは歌と暗号、さぞかし大変だったでしょう。すごい。 すごいけどこんなもやもやした本はないです。 褒められたさすぎでしょ… レビューなど書いた事はないのですが、思わず書いてしまう程に主人公が天才かつハンサムでした。 というかその印象しかもはやありません。厳しい!ここ10年ぐらいの読書で一番厳しい。 天才ハンサムと碁といろは歌が好きな方はどうぞ。 ミステリとしては他の方も指摘しておられますが、「何故外部犯だと最初思い込んだのか理解に苦しむ」以外は普通です。
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ついついレビューしたくなる作品
本書の圧巻は、言うまでもなく「いろは」に「ん」を含めた48文字の並べ替えで作られた、50首以上のいろは歌だろう。それらはほとんどが黒岩涙香の作という設定になっているが、実際はもちろん竹本健治の偽作。 1首、引用すると、 ケンタウロスよ 星降らせ けんたうろすよ ほしふらせ 琴座のベガも 笑み送れ ことさのへかも ゑみおくれ 天ぞ指にて 螺子廻る あまそゆひにて ねちまはる 夜話を紡ぎぬ 営為なり やわをつむきぬ えいゐなり 登場人物の1人が「ちょっと宮沢賢治を先取りした感じ?」などと評していて、涙香の天体趣味も まことしやかに語られてるが、まあ明治の感性ではない。 しかし、ほかにも花鳥風月や妖怪尽くし、虫尽くし、ミステリいろは… と趣向をこらしているので、これは読んでみる価値がある。 作中で「どうしてこんなふうにうまく作れるのかしら」と賛嘆したり、最後のほうで明らかにされた秘密についても「こんなこと、人間にできるものなのか?」と驚いているが、そう書いている竹本氏自身が考え出したことなんだから、自画自賛も極まれり。作者のドヤ顔が鼻につくとの意見もあるようだが、ここは愛嬌と受け取って置きたい。 ただ、いろは歌の暗号は感心する人も多いようだが、私はあまりいいと思わなかった。ふつうの いろはに謎が込められてるのなら感心するのだが、暗号のいろはは一見意味不明の文章で、これだったら何とでもつくれるという感じ。 殺人事件の謎と、いろはの暗号が全く別物なので、読後の快感が少ないという問題もある。 まあ謎解きに到る過程のうんちくは堪能できたが、これも読むのがシンドいという人には逆効果だろう。 うんちくと言えば、遊芸百般の黒岩涙香についてはあまり知らなかったぶん、ちょっと詳しい評伝を読むような感じで私には愉しめた。連珠のルールを定め、正調俚謡を広め、競技かるたを創始し、闘犬、囲碁、ビリヤードでも通人の域に達していたことなど、一般の人にも伝わるようになかなか巧く語られている。 天才囲碁棋士の主人公に、囲碁にも何にも詳しくない女子高生の彼女を配することで、知識のない読者にも入りやすくしているのは、よくある手法だが悪くない。 笑ったのはTwitterで、主人公はロリコンと呼ばれてるだろうな、などとつぶやいた人がいたことで、確かに『涙香迷宮』本文中には説明がないものの、主人公も高校生なのは巻末著作リストの解説を読めば分かるだろ。 まあ高校生の言うことに対して大のおとなが称賛してばかりで、唯々諾々と従っているというのも奇妙な図だが。工藤新一かよ。そう言えばヒロインの女子高生は剣道2段で、空手少女の毛利蘭を思わせるが、前者は1992年には作品に登場している(『凶区の爪』)から1994年スタートの『名探偵コナン』よりは早い。 そういうわけで、うんちく部分を除けば、ものすごくベタな推理小説なのだが、この小説での殺人の動機は多くの人がクサしているものの個人的には納得できた。 犯人が「世界の中心に…」という少し前の流行語を口にするのは減点だが、ゲーム性にのめり込んだこの小説だからこそ許される動機づけだろう。 すでに多くの人のレビューがあるのに、つい語ってみたくなる作品ではある。
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小説としては凡作。作者も充分自覚して書いてると思うが。
黒岩のウンチクとか 古語の深い知識とか いろは歌の扱いは物凄い。 ただ、ひとつの小説としては 凡作としか言いようがない。 トリックが安易とか 何よりも動機が安直すぎる。 そういった欠点あるけど、それを補う日本語の不思議さを追求してる点で空前の作り込みだ。 少し辛めの3点。
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解かれなかった謎について
他の方のレビューに、小説中のいろは歌は作者自身の作とあり、こんな凄い人がいるんだと本当に驚きました。 小説中で解かれなかった涙香と秋水の謎については、 秋水が当時の世論に反する過激な非戦論を展開していたという前提と、 この物語の展開を合わせて考えると、涙香は秋水に「命を狙われている」くらいの立場だということに気づかせたかったのかなと思いました。 だから牧場さんも答えを言いたくなかったんじゃないかなぁ。 間違っているかもしれませんが。