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家庭用安心坑夫

Gunzo Newcomer Literary Award

家庭用安心坑夫

Chito Kosunagawa

Komi, who feels an unsettling unease in her marriage, is drawn into a world where daily life and fantasy erode one another after finding a sticker tied to her childhood memories. A Gunzo Newcomer Literary Prize-winning work where reality and madness overlap.

FamilyFantasyMadnessThe erosion of daily life

Work Information

A sticker she thought she had stuck on her childhood home appears on a pillar at Nihombashi Mitsukoshi.

Starting from unease within the home, the novel depicts the sensation of memory and fantasy invading reality. Winner of the 65th Gunzo Newcomer Literary Prize.

Book Information

Publisher
講談社
Published
2022-07-11
Pages
128 pages
Language
日本語
Size
13.5 x 1.4 x 19.5 cm
ISBN-13
9784065288573
ISBN-10
4065288576
Price
1280 JPY
Category
本/文学・評論/文芸作品

夫との平穏にみえる家庭に漠然とした不安を抱えた専業主婦小波が、ある日、日本橋三越の柱に、幼いころ実家に貼ったはずのシールがあるのを見つけたところから物語は始まる。小波はいまも実在する廃坑テーマパークに置かれた、坑夫姿のマネキン人形があなたの父親だと母に言い聞かされ育つが、やがて東京で結婚した彼女の日常とその生活圏いたるところに、その父ツトムが姿を現すようになって……。 現実・日常と幻想・狂気が互いに浸蝕し合いながら、人間の根源的恐怖に迫っていく作品。想像力と自己対話によって状況を切り抜け成長していく主人公は不可思議で滑稽な言動と行動に及ぶが、それがかえって小説としての強度となり、ある種のユーモアを孕みながら読む者を惹き込み、我々を思ってもみなかったような想定外の領域へと運んでいく。 誌上発表後、新聞各紙絶賛、話題沸騰! 第167回芥川賞候補作となる。 第65回群像新人文学賞受賞!(以下受賞時選評より) 語り手、そして読む人の立つ足下が揺るがされる――柴崎友香 絶望的成長小説である――町田康 この作品には家族という観念を茶化し批評する視点がある――松浦理英子

小砂川チト(こさがわ・ちと) 1990年岩手県生まれ。慶応義塾大学文学部卒業、同大学院社会学研究科心理学専攻修了。 2022年、「家庭用安心坑夫」で第65回群像新人文学賞を受賞。同作が第167回芥川賞候補作となる。

Reviews

  • 純文学として、おもしろい。

    小砂川チトのデビュー作。奇妙な味わいだ。

  • 超大型新人のデビュー作

    ❝圧倒的筆致とスピード感❞ 帯にこうある。自分もそう思う。 ありえない設定を「あるんじゃないか?」と錯覚させる「文章力だけ」で成立させてる。 周りに心通わせる人が誰もいない小波(サナ・主人公女性)の強迫観念を描いている。 倉庫に買い物に訪れるシーンがある。 p.41---- 血の気が引くほど広い空間 p.42---- あの誘導灯まではいったい何十メートル、いや何百メートルあるのだろう? p.44---- 彼女の後ろにも前にも、数キロずつの通路が茫洋と横たわっていた。 そんな倉庫あるのかよ?小説全体の雰囲気が絵ではっきりと現れるのがこの箇所で非常に寒々としている。 炭鉱のテーマパークを訪れるシーンもチケット売り場・食堂はあるのだが人の精気が感じられない。出会った家族も死んでいるかのようだ。 * * * この作品は初出が2022年6月、コロナ下が舞台なので2025年9月に読んだ自分には少しタイムラグがある。作家が執筆当時は当たり前だと考えていることが、今では当たり前でないこの感覚ちょっとおもしろかった。 p.86---- 駅前のホテル二軒には、どちらも【県外からのお客様お断り】の張り紙がしてあった。 ↑これがとっさになんのことなのか分からなかった。へえ、マナーの悪い外国人観光客のせいかな?そんなホテルが今はあるんだーなんて勘違いしたり。県をまたいだ移動禁止されてたんだ、そういえば。 で、これをきっかけに、【p.42---- マスクから露出した部分の小波の肌はいま----】ようやくみんながマスクして生活していた絵が浮かんできた。 * * * 内容を説明しようとすると陳腐になってしまいそうでできない。 自分が避けてきたものを突きつけられるようで息苦しい。 桐野夏生『OUT』を読んだときと同じような読後感だった。 なんというか、とてもいい小説なのだけど、もっと若くて健康なときに出逢いたかったなと思う。

  • OK!

    入院中に本屋に行かれなくて。

  • 惹き込まれた。でも読まなければ良かった。

    やるせなさと寂しさゆえに、狂気じみたイマジネーションが充満する。 そんな家庭ですっかり茹でガエルになってしまった私の人生を純文学にしたらこんな作品になるんだろうなぁと思った。 ラストについては、うまく言葉になりませんが、私には戒めのように感じられました。 自分の人生に常にまとわりついてきた感触や空気感を言語化されたように思いました。 言語化されることで少しスッキリした反面、言語化されたからこそ、もうなかったことにできないなと。 いまはこの作品を読んだことにちょっと後悔がありますが、傑作だと思います。

  • 狂気に宿る確かな切実さ

    外から見れば狂気にしか映らない所業が、息をも詰まるような切実さを持って語られている。 思わず笑ってしまうヘンテコなアイデア/展開を用いながらもその切実さが変わらず説得力を持つのは、作者がこのエキセントリックな主人公を片時も見放していないからだと感じる。 (実際、やっていることは無茶苦茶でも、その切実さにはある種の普遍性と現代性を感じ、読んでいるこちらも何度も自分を重ねる瞬間があった。) 映画にすれば表層的には奇行の連続としか映らないことであるから、やはり小説だからこそ到達できる境地とも言える。情景描写のうまさや後半のドライブ感も見事。これがデビュー作。可能な限り追い続けたい作家になった。

  • わからない…

    どういうこと? 解説読まないと分からない… 最後にスッキリすると思ったのに

  • 情景描写にリアリティがあり、主人公の不器用さや、(多分)ある種の強迫観念や神経症に悩まされているであろう点は大なり小なり感情移入可能(少し感想変わったので再投稿)

    まず、場面場面の情景描写。 リアリティとそれに伴う語彙が熟(こな)れている感じがします。 どこで何が起きてるか場面には特に、 ラノベ臭さがほぼありません。 本書に出てきます、 三和土(たたき)って表現も、 使われないと死語になってしまう可能性もあるので、いいですね。 また、物語も、どうしようもないままならなさが、 灰色の世界感的印象を醸しだしており、 女性主人公ものの、ペシミズム作品として、 高い哀愁を感じます。 主人公自身も、おそらく、特定の精神の病を患っており、 さらには生育環境的理由から、様々な不器用さも内包しており、 例えば、寂レズの主人公さんの内包している生きづらさの何割かに、 少なからず刺さるものがある方々は、 本作の主人公への感情移入度(偽善的なわかるではなく、比喩的に切実な、当事者性を内包した自己投影)も少なくないと思います。 その一方。 本作は、主人公を導く特定のキーマン達や、 過去パートの主人公と現在の主人公のリンク性など、 いくつか意図したものなのでしょうが、 真相や真実が、最後まで不明瞭な謎も少なくなく。 断片的情報から類推可能な事象はまだ可愛い方で、 ある程度わかってももう一言解やヒントが欲しい点は勿論、 完璧に理解不能な場面もあるので、 思わせぶりに深読みさせたいのでなければ、もう少し作者に説明責任を果たして欲しかった。 それっぽいと明確にわかりすぎるくらいそれっぽいヒントは結構あるし、 私の読みが浅い故に理解できてない箇所もあるでしょう。 でも、事実関係はもう少し明確にして欲しかった。 そこいらの一山いくらな小説群より、 ずっとフェアな、情景描写や主人公で構成されている作品なんですから。

  • 小説と現実

    小説の中で、理解が難しかったり「ふつう」でないことが次々と起こると、「シュール」という言葉をつい使ってみたくなるけれど、わたしたちが生きる現実が整然としているかというと、決してそうではなく、積み重なった記憶とまだ起こっていない未来の予知のはざまの中で極めて曖昧なものだし、自分が知覚する「自分」すらあやふやなもの。 突然「あやふやな自分」に気づいて途方にくれても、どうすればいいかわからないとき、小説の中に答えを見つけることがある。割れた鉱石に光る虹のきらめき。小説の中で「自分のことが書かれている!」と感じたとき、その世界はほかでもない自分にとって、何よりも価値のある「現実」になると思うけれど、この小説は、必ず誰かの「現実」になっていつまでも心に残るのだろうと感じる。 文章と描写がすばらしく、目の前にくっきりと風景が浮かび上がる瞬間があった(主人公の実家など)。次回作が楽しみでならない。

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