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グリーン・イリュージョン (コバルト文庫)

Roman Grand Award

グリーン・イリュージョン (コバルト文庫)

杉江久美子

Set in a near future marked by pollution and rising crime, this light novel follows Ibuki, a junior high school student who can see what others cannot, as he confronts the truth about his power and the so-called new generation. Supernatural ability, urban unease, and self-discovery drive the story.

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Work Information

A boy with visionary powers is forced to ask what he truly is.

Strange incidents unfold around Ibuki, who sees things invisible to others. After meeting a young man named Takuto, he learns that his power is not a mere hallucination but part of a broader change in society.

Review Summaries

  • The opening foregrounds a boy's anxiety and the tension of an unstable city. Through its psychic premise, the novel explores alienation and the urge to uncover the truth.

Book Information

Publisher
集英社
Published
2003-09-03
Pages
272 pages
Language
日本語
ISBN-13
9784086003209
ISBN-10
4086003201
Price
167 JPY
Category
本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル

環境汚染が深刻な2017年。幻視能力を持つ中学生・伊吹の周辺では奇怪な事件が続発。街中の人間から襲われた伊吹は、拓人と名乗る青年に救われるが…。2003年度ロマン大賞佳作の近未来ファンタジー!

Reviews

  • 再評価されるべき、埋もれた良作

    2015年4月のアップルウォッチ発売のニュースと「ウェアラブル端末」なるジャンルの登場がきっかけで、2003年に発売された本書を思い出し再読しました。 結果、「もっときちんと読み込んでおくんだったなあ」と反省することしきりの良作でした。コバルト文庫ではなく、小学校高学年あたりを対象にしたジュブナイル小説でも良かったのではないでしょうか。 おそらく本書の執筆は2002年頃と思われますが、その時点で設定された2017年の近未来世界がいくつも2015年の今を言い当てています。アップルウォッチめいた「ウェアラブル・パソコン」、冷蔵庫に搭載されたタッチパネル(タブレット端末にかなり近い感じ)からアクセスするネットスーパー。ちょっとやりすぎ感はあるものの、おしゃれとして取り入れられた紫外線対策ウェアや日傘。今年2015年の猛暑は、まさに作中で語られる夏のよう。2002年に比べて良いことも悪いこともあるし、2050年頃の暗澹たる未来予想は今と変わらないけれど、それでもたくましく生きている2017年の人々と社会は非常にリアルです。 そして主人公にして進化した脳を持つ次世代人類・伊吹の能力が発現した序盤のシーンには「いかにもありそうだし、面白そうではあるけど伊吹君は大変そう」と唸らされました。次世代人類が2003年を境に次々に生まれてくる謎の解明のくだりや、他のキャラが自分の能力を意図的に特化させてパスワードロックを開錠するシーン、タイトルロールの「グリーン・イリュージョン」のイメージなど、しっかりと作り込まれた世界観から展開していく近未来エピソードや物語の展開に関わっていく脳科学要素や進化の仮説には胸が躍ります。 何より、伊吹をはじめキャラの言動には力強い説得力がある。口は悪いけれどとてもいい子だったことを人生そのもので証明したエミちゃんには涙。伊吹を研究対象としながらも未成年を導く大人して接する、神崎教授の暖かな物腰もいい。伊吹の母親は何気ないつもりの言葉で息子を支えます。登場時から諦念めいた雰囲気をはらんでいた拓人や謎の存在NO.1041が悲しい出生を背負いながらも伊吹を見守っていたり、元気者の伊吹が自分にふりかかる事件や親しい人間の不幸に迷ったり落ち込んだりしながらも前に進んでいく姿には素直に共感し「がんばれ」と思えます。ラストも万事が解決する安易さはなく、問題を残しながらも未来に希望を託した心地よい読後感でした。 ただもったいないことに、導入部のとっつきがあまり良くありませんでした。決してわかりにくくはないのですが、地味というか「これから何かが始まる!」という読者への撒き餌がいささか弱いかもしれません。 そして個人的な感想ですが、マンガなら絵柄にあたる? 文体や会話文のセンスが良くも悪くも古いのが残念です。2003年の初読時、「ウェアラブル・パソコン」の字面に「何かこう、今ひとつあか抜けないなあ」と感じたのを覚えています。(しかし「ウェアラブル端末」という言葉が実現した今、申し訳ないことこのうえない!)「イリュージョン」には当時名を馳せた手品師さんのイメージが強かったこともあります。さらに、悪ぶってる時のエミちゃんの台詞回しは70年代のスケバンみたいだし、伊吹の「チキショー、オフクロ……泣かせやがるじゃねーか」には「ど根性ガエル」のひろし君か? などと瞬時に現実に戻ってしまいました。 しかし近未来という点が辛くなりがちな世界や壮大な科学的仮説をきっちり描ききった筆力は、今読んでも群を抜いていると思います。 もうひとつ惜しまれるのは、タイトルにもなった「グリーン」が表紙では薄い黄色に見えて、しかも背表紙も藍色だったこと。作中でほのかに見える美しいグリーン・イリュージョンが台無しです。もう少しイメージをプッシュしたデザインなら良かったのに……それと、作中の伊吹は表紙の絵よりももっと凛々しい元気者のイメージでした。せめて今後も近未来好きさんが手にとってくださることを願って、☆ひとつ増やした☆☆☆☆☆です。

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