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来福の家

Subaru Literary Award

来福の家

Wen Yourou

A Taiwanese-Japanese woman reconsiders her history and language while her relationship with a Japanese-speaking lover unsettles her. An honorable mention included in Raifuku no Ie.

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Work Information

When language shifts, the world looks different.

Honorable mention in the 33rd Subaru Literary Award. Collected in Raifuku no Ie (2011).

Book Information

Publisher
集英社
Published
2011-01-05
Pages
272 pages
Language
日本語
ISBN-13
9784087713831
ISBN-10
4087713830
Price
1650 JPY
Category
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

在日台湾人の著者が拓く「新しい文学」! 中国語を学ぶ日本人恋人に、自身を揺らがされる在日台湾人女性…第33回すばる文学賞佳作受賞の「好去好来歌」と「来福の家」収録。3つの言語が織りなす新しい文学の担い手のデビュー作。

Reviews

  • 「来福の家」の温かい雰囲気が好きだ。

    著者のエッセイ『台湾生まれ、日本語育ち』も感銘深かったが本書(小説)も素晴らしい。 デビュー作である「好去好来歌」と第2作である「来福の家」、両方とも著者の分身である若い女性が主人公だが、前者が自身の来歴に対する「葛藤」「迷い」「切なさ」をトーンとするのに対して、後者は吹っ切れた感じでとても温かい。ちなみに「好去好来歌」は(ネットによれば)旅立つ人へ「無事な帰還」を願う歌だという。

  • 柔らかな殻

    異国に住む、つまり日本に住む外国の人が、何を思うのか。 己が外国に行くようになってから、それが気になるようになりました。 この著作は、そういう興味に応えてくれました。その点、購入に大満足です。 日本に住まう外国の方の中には、頑なにルーツ国の文化と価値観を貫き通す方もあれば、 欧米の方に多いように、日本ラブを全面に押し出してくださる方もあります。 しかしそうではなくて、もっと普通(表現する言葉が選び難いですが)に 日本に住まう方の、その心の在り方が知りたい人には、よい本です。 日本人の中には、いえ、世界のどの国でも同じでしょうが、自国が最高で 外国になど行きたくもない。住むなど以ての外。という人が結構、います。 ですが、せっかく地球に生まれて来て、少しでも多くの地上を見ずして、 知らずしてどうする。と考え、では外国に住むとはどういう事か? と空想する そんなタイプの方には興味深い内容かと思えます。 そして、心根のかなり似た、外見も似た国の方の、一本目に収録された作品は 個人的には、つい、「申し訳ない」と日本人としてお詫びしたくなってしまうようなものでしたが、 二本目の来福の家で救われ、浮上し、温かい、それこそ幸せな気分になれました。 互いに根っこは違うし、それは捨て去れないし、捨て去らなくてもいいような気がする 近い場所に生きる人間同士。時にシャボン玉のようにくっつきあってしまうような 柔軟で透明な殻を纏って、生きて行けたらいい。どこの、どんな国でも。 夢物語かも知れませんが、そう思いました。

  • 国籍/アイデンティティを巡る話をサラっと描くセンスは認める。

    日本育ちの台湾人である主人公の、日本、中国、台湾の狭間に揺れるアイデンティティを扱った2作品を収録。どちらの作品もアイデンティティの問題が言語や名前を巡る話題で色々と語られるが、ストーリーにドラマ性が希薄なため、星は渋めにつけた。(この作家は、もっと面白くなるポテンシャルがあると思うので、将来に期待したい。) さて、こういう主題の作品では、主人公や登場人物がアイデンティティに苦悩する話になりがちだが、両作品とも登場人物達は自然体でサラっと生きている。そこは作家自身の性格や半生が反映されているのではないかと思うが、好感が持てた。 個人的には、少女から大人になりかけの主人公の情緒や言動がコロコロ変わる掴みどころのなさが印象的な「好去好来歌」が、爽やかでオススメ。

  • 吉兆招福

    おめでたいタイトルで著者もわりと可愛かったので読んでみました。 内容は「好去好来歌」と「幸福の家」の2本立て。それぞれ台湾生まれで日本育ちの楊緑珠と許笑笑という、どことなく著者を連想させる年頃の女の娘が主人公。彼女たちの日本語、中国語、台湾語にまつわるアイデンティティーの問題が穏やかな日常と共にゆったりと描かれています。これが著者の処女作。たまたま中国語の知識が多少あったのでピンインや四声の話も理解できて面白く読めました。何となく、台湾と日本の温度差を感じました。

  • アイデンティティの在り処に対する問いかけ

    自分の故郷ともいうべき台湾がテーマの小説だったのと、 知人から面白かったと進められたので、いざ読書開始。 本書はタイトルにもなっている「来福の家」と 作者のデビュー作「好去好来歌」の2編で構成されている。 印象深かったのは、もっぱら後者の話。 うむ、これは深い。 両親は台湾人、自分の名前も台湾人。 でも物心ついた頃から日本で生活していた主人公。 子供時代は、おかしな名前と周囲の男子にからかわれる。 自分の母親が、友達の前で母語や「変な日本語」を話すのが耐えられない。 中国語教室に通えば、自分の中国語は台湾風の発音だから 「正しくない」、「直しましょう」と注意されてしまう。 親密になった男の子は、自分の前で無邪気に自身の中国語のレベルを試そうとする。 自分の居場所が分からない。 なんともいえない居心地の悪さ。 揺さぶられるアイデンティティ。 似たような境遇の友人達の話を聞くと、 やはり、小さい頃は自分の立ち位置について随分葛藤したようである。 それも踏まえて読んだら、読了後はちょっと切ない気分にさせられた。

  • 来福の家

    「睦まじい」。思わずこんな言葉が浮かんだ。いったい何年ぶりだろう。使うとなるともっと長いこと使ったことがない。それほど、この物語を一言で表すとすれば、睦まじい家族とその周辺の人々とのほのぼのとした物語、ということになろうか。 主人公の許笑笑(キョ・ショウ・ショウ)は、仕事の都合で日本に定住することになった台湾人夫婦の間に生まれた娘で、生まれも育ちも日本である。姉との4人暮らしのなかで話されるのはこのためいわゆる「ちゃんぽん」。台湾語は耳から覚えているが、日本の学校に通い育ったので日本語が母語と言ってよい面も大きい。両親は日本語を少し話すが、とくに母親はたどたどしい。姉は幼少期半ばで日本に来たので台湾語も日本語も問題なく、幼くして家庭内の通訳的役割を果たした。成人してさらに中国本土で本土の中国語を習得し、日本で来日子女の補習を仕事にしている。その縁で日本人男性と結婚。主人公も大学卒業後、中国語の専門学校に入学して勉強中である。 さて言葉はアイデンティティにも社会性にも直結する。だから異国での生活はどこかで個人の深刻な内的緊張、摩擦、葛藤を引き起こしたり、社会的な差別や差別とまではいかなくとも特別視に遭遇したりしかねない。ところがこの物語には大事に至るものはない。うまく除けられているのか、あるいは覆われているのかもしれない。 そのかわりといってよいか、エピソードは言葉に集中している。随所に異なる言葉のおもしろさがちりばめられている。こどもが言葉を覚えるとき、文字を覚えるときの心理。そして成長してからは外国語で同じような経験をすること、今度は意識や記憶がはっきりしている。そして台湾語、日本語に加えて本土の中国語が加わる。三か国語とも漢字を使うが同じ漢字体ではない。最後のほうで母方の祖父母は日本の植民地時代に日本語教育を受けており、今の日本人にはいなくなったほどの格調のある日本語を話すことが触れられている。台湾語より日本語が得意な祖母が初孫と日本語で話をする。そこに立ち会った一家は血縁を実感する。歴史の皮肉ではあるが感動的だ。 他愛もないこどもの疑問やことば遊び、大きくなってからの日常会話のなかに言葉を体感することや言葉とはなにか、さらに文化の違いなどのヒントが隠されている。そして相手の国の言語、自分の国の言葉で外国の人と意思疎通をすることのもどかしさや通じたときの嬉しさ、ふたつの言語を知り使う嬉しさなどがにじみ出てくる。 主人公を日本人、舞台は日本ではなくたとえばイギリスかアメリカ、言葉を英語に置き換えて見ればもっと身近に考えやすい。海外の日本人家族は言葉の面でどういう生活を送るのだろうか。そこに定住することに決めた家族やこどもはどういう人生を送るのだろうか。 その逆はどうだろうか。私が学生の頃、帰国子女は僅かで国際結婚は珍しかった。しかし今や近所にさえいろいろな国の人々が暮らしている。そのこどもたちも見かける。その人たちが個人としての血筋や祖国(バックグラウンド)に基づくアイデンティティを損なわれることなく、国籍や民族と意味合いは異なるけれども日本という社会的なアイデンティティをもつことができているだろうか。余計なお節介かもしれない。でもそうであってほしい、この物語のように普通に幸せだと感じてほしいと思う。

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