山の音 (新潮文庫)
"The Sound of the Mountain" is Yasunari Kawabata's postwar novel set in Kamakura, told through the perspective of Ogata Shingo as he begins to feel the approach of old age. Marital discord in his son's household, a daughter returning home, and his complicated feelings for his daughter-in-law converge, while quiet natural imagery brings out intimations of death and the disintegration of the postwar family.
Work Information
The sound from the mountain at night quietly announces old age, death, and the fraying illusion of family.
"The Sound of the Mountain" was serialized from 1949 to 1954 and published as a standalone book by Chikuma Shobo in 1954, the year it received the Noma Literary Prize. Shincho Bunko's new edition introduces it as the story of sixty-two-year-old Ogata Shingo, who feels his memory and strength declining while relying emotionally on Kikuko, his son's wife, and confronting his son's affair and his daughter's return home. Natural sounds, dreams, memory, and family fractures are delicately layered in this mature postwar novel by Kawabata.
Review Summaries
-
The novel is valued as a major postwar work depicting the sadness and hidden tension of family relationships. Beneath its quiet prose lie old age, desire, and the premonition of death, giving the work an unease that deepens on rereading.
Book Information
- Publisher
- 新潮社
- Published
- 2022-03-28
- Pages
- 400 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 15.1 x 10.6 x 1.45 cm
- ISBN-13
- 9784101002422
- ISBN-10
- 4101002428
- Price
- 825 JPY
- Category
- 本/文学・評論/文芸作品
息子の嫁に、恋をした―― 戦後日本文学の最高峰と評された傑作 尾形信吾、六十二歳。近頃は物忘れや体力の低下により、迫りくる老いをひしひしと感じている。 そんな信吾の心の支えは、一緒に暮らす息子の嫁、菊子だった。優しい菊子は、信吾がかつて恋をした女性によく似ていた。だが、息子には外に女がおり、さらに嫁に行った娘は二人の孫を連れ実家に帰ってきて……。 家族のありようを父親の視点から描き、「戦後日本文学の最高峰」と評された傑作長編。 著者没後50年を迎え、辻原登氏による新解説を増補。
Reviews
-
良い
良い
-
清廉な息子嫁
高校の時に読んで印象に残っていたので、再読。 正妻の意地というか? 偏りすぎかもだけど、同じ女性として気持ちは分かるかも。 清廉で真っすぐに生きたいけど、でもそういう人って世の中では損しがちな気がする。 主人公の息子はクズ。
-
四季の移ろいや、日常の細かな描写
四季や日常の細かな描写はよく分かるんですが、何か響くものがあったかと聞かれると、特に無かったです。 私が読書家でなく、頭も悪いので、この作品の良さが分からなかっただけかも。 川端作品は何冊か読みましたが、この作品も川端らしい、とは思いました。
-
響く
"菊子は顔が小さいので、あごのさきもほとんど面にかくれていたが、その見えるか見えないかのあごから喉へ、涙が流れて伝わった。涙は二筋になり、三筋になり、流れつづけた"1954年発刊の本書は"日本古来の悲しみ""あはれなる日本の美しさ"が表現された戦後日本文学の最高峰、ノルウェー・ブッククラブ『史上最高の文学100』選出作品。 個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。 さて、そんな本書は日本人初のノーベル文学賞を受賞、新人発掘等でも知られ『文壇の総理大臣』とも三島由紀夫らに慕われた著者により、51歳から56歳にかけて断続的に各章が書き継がれた作品で、東京にある会社に鎌倉から通う62歳の初老の男性、夜中に響く『山の音』に死の恐怖を抱く尾形信吾を主人公に、出戻りの娘と孫、復員兵の息子の堕落、息子の妻、菊子へ共感と淡い恋心を抱く日々が四季の移ろい、信吾の見る夢と共に描かれており"老境に至った主人公の目と心とを通して日本の敗戦と戦後が『日本の家庭に何をもたらしたか』を表現していると当時の日本文壇で高く評価された作品なのですが。 まず、率直な最初の印象としては、尾形信吾という主人公の胸への執着、ひらたく言えば"おっぱい星人"ぶりに何とも共感を抱きにくく、また登場人物、特に女性陣が多くて最初のうちは戸惑いました。 一方で、執筆開始時の著者に近い年齢に差し掛かった為、著者の執筆しているときの胸中を考えたり、万人に訪れる老いや死を鮮やかに、そして冷酷な視線で描かれている内容に次第に引き込まれていき、何とも余韻が残る読後感でした。 著者後期の代表作として、また50代以降の方に特にオススメ。
-
「自分は誰のしあわせにも役立たなかった」と老後の哀愁。肉親の重苦しさ。過去の幻想。
ドラマチックな展開はないですが、心に染みてくる小説でした。 全体的にもの悲しい雰囲気が続く中、日常生活でちょっとした光を感じられる。老後の生活、はたまた日常生活はそんなものかもしれない。
-
旧仮名遣いでも
今年主人公の信吾の年齢を迎えるにあたって旧仮名遣い版で再読した。 どんな家族にも他人には知られたくないことはあるものです。 今の時代はそういう出来事を捉えて「成長の機会」などと前向きに言うわけですが、私はこれにいつも不自然さを感じていました。 信吾の心象の抒情的な表現は北鎌倉の自然と溶け合ってとても心地よかった。 また読み返してみようと思います。
-
小説の衣を纏った詩
戦後という時代を背景として、密かにお互いを想う嫁と舅の心の動きを軸に物語は展開する。筋としてはどろどろしたところもあるのだが、不思議と嫌な気持ちにはならず、悲しみや諦念に染まった登場人物たちの姿には美しさすら感じられる。 ひとつひとつの文章が非常に洗練されていて全く無駄なものがなく、文字として書かれている意味以上のものが読者の心に染み渡ってくるのが圧巻だ。その様はまるで俳句のようである。そう思っていると、岩波文庫版の解説に「川端氏の小説はもともと写実主義の常識で律しられない、抒情詩であるところにその特色があり」とあるのに気付き、「我が意を得たり」の感を強くした。そう、これは小説の衣を纏っているが、実は詩なのである。だからこそ、川端は日本で人気のある作家で居続けられるのだろう(ただし、詩としての性格は、本作品よりも 『雪国』 の方がより際立っている)。 さて、岩波文庫版『山の音』の良いところは各章の題が目次にまとめられているところで、ここが 新潮文庫版 との大きな違いである。しっとりと落ち着いた中村光夫氏による解説も小説の性格によく馴染んでいるし( 新潮文庫版 の山本健吉氏による解説にはこのしっとりとした感じが希薄である)、各章は様々な雑誌に発表されているのだが、それぞれがどの雑誌にいつ発表され、発表時の章題が何であったのかが(単行本にまとめられた時とは必ずしも題は一致していない!)、岩波文庫版では目録にまとめられているのも地味に嬉しい。そういう訳で、私は 新潮文庫版 ではなく、岩波文庫版を推したい。
-
寒々
極端にいえば、一文ごと改行改行で、近年の味のうすい、鬆のはいったすかすかした文章の形態をおもわせる。さりながら近年のものとは異なり、それは間とも感ぜられ、気韻といえるものがある、と言えなくもなく、腐っても鯛という風情かと読みながら寒々とした思いがされてくるのを防ぎがたく。間が空きすぎなため、立てつけの悪いあばら家に厳冬の吹き荒ぶ夜にいるような心地のされなくもない。吹き荒ぶ、というのは適切でなく、無風状態に近いのかもしれない。深々と染みいってくる感じ。それは著者の心情であり、狙いでもあろう。荒廃した、うら寂しさ。一言にすれば、そうなろうか。時代の、であり、そこに生きる人らの、であろう。還暦すぎの男が主人公で、還暦というのか死期間近といった趣で、朦朧としながら、朦朧としたがゆえに、性的嗜好があらわになってきていて、女人を性的なものとして露骨なまでに眺めはじめる。性的な物体として。ぺドフィリアの気味がつよいようだ。さりながら欲情まではいたらず、そこが余計不気味さをそそる。野良犬の扱い、というのか、主人公の見方が象徴的。