私の恋人
A recurring I crosses human history from the Paleolithic age to the present in search of an ideal beloved. The novel boldly links myth, history, and contemporary society, using the idea of love to explore civilization and individual existence.
Work Information
Across a hundred thousand years, the search for my beloved continues.
Published in hardcover by Shinchosha and later issued in Shincho Bunko. The hardcover ISBN was checked through the publisher and bibliographic records; magazine publication data was not used as an identifier.
Review Summaries
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Some readers praise the scale of the idea and the intellectual structure, while others find the abstraction demanding. It is often read as an attempt to expand the frame of the love novel.
Book Information
- Publisher
- 新潮社
- Published
- 2015-06-30
- Pages
- 126 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 13.2 x 1.5 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784103367321
- ISBN-10
- 4103367326
- Price
- 1320 JPY
- Category
- 本/文学・評論
時空を超えて転生する「私」の10万年越しの恋。旧石器時代の洞窟で、ナチスの収容所で、東京のアパートで、私は想う。この旅の果てに待つ私の恋人のことを――。アフリカで誕生した人類はやがて世界を埋め尽くし「偉大なる旅」一周目を終える。大航海時代を経て侵略戦争に明け暮れた二周目の旅。Windows95の登場とともに始まった三周目の旅の途上で、私は彼女に出会った。
Reviews
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三周目の歴史の終焉と、素晴らしき新世界。
先日、この本の著者の上田岳弘さんが芥川賞を受賞されたので作品を検索してみると、文庫版のレビューがまだなかったので、今更ですが書きました。 (ハードカバー版の方には10件ほどあるので、そちらも参考にしてください) 個人的にはデビュー作『太陽・惑星』でファンになり、上田さんの作品は2冊目だったのですが、こちらもなかなか面白かったです。 主人公は、10万年前にクロマニョン人として生きていた頃の記憶と、ナチス政権下に絶滅対象として収容所で殺害されたユダヤ人の記憶を持つ、日本人の会社員・井上由祐。 つまり前世と前前世の記憶を持ちながら主人公は生きている。 しかも前前世のクロマニョン人はスーパーコンピューターのような頭脳を持っており、シリアの洞窟の壁に独自に発案した言語で、遥か彼方の未来の的確な予言さえ記している。 このクロマニョン人だった頃の主人公は、周りの人間とのコミュニケーションを半ば捨て、洞窟で未来を想像し、さらにその中で、空想の恋人まで生み出してしまう。 (今で言う二次元の嫁ですね) その空想の女性こそ、タイトルの『私の恋人』だった。しかも主人公は前前世でも前世でも、この架空の恋人の到来を待ちわび、さらには今世が前前前世になっても未来で逢いたいと願っている。 そのうえ、その『私の恋人』は詳細な設定を持ち、それは創作者本人の意思なのか、まるでクロマニョン人時代に予言した、人類の進歩と断念とさらなる前進の歴史を象徴するような生き方をする女性。 現代日本の三十代独身サラリーマンである井上由祐はしかし、友人の紹介で、まさにその『私の恋人』を思わせるようなオーストラリア出身の女性キャロライン・ホプキンスに出逢う・・・。 この女性は果たして、本当に私の恋人なのか・・・というのが物語のスタート地点です。 (以下はネタバレを含みます) じつは主人公にキャロラインを紹介でしてくれた友人の従兄弟が、末期ガンの宣告を受けて旅に出た先のオーストラリアで偶然に出会って道連れになったのがキャロライン。 しかも友人の従兄弟・高橋陽平は、クロマニョン人時代の主人公ほどではないものの、明晰な頭脳で人類の行き着く先を幻視しており、 今の人類が『三周目の旅』の最中にあり、もうすぐその旅も終焉を迎えようとしているとキャロラインに語る。 はじめの旅はアフリカを出た人類が世界中に行き渡った時に人類の勝利として終わり、2つ目の旅は帝国主義の結末として日本に2発の原爆が投下された時に終わり、そしてアメリカが最後の勝者として君臨し、 3つ目は1995年のwindows95の発売よって始まり、これは精神的な獲得として戦われ、やがれそれも『彼ら』の誕生によって終末を迎える・・・。 このディストピア的な予言は、作者の上田岳弘さんの文章によって、人類史における人間とその価値観のバージョンアップを画するブレイクスルーとして描かれています。 それは人間の持つ勝利への欲望と合理性、競走による進化と行き止まり、さらにはその乗り越えという、絶えざる前進の歴史として捕えられていますが、 別の視点では、ナチスに殺された2度目の人生の主人公のような、あるいは主人公の村のクロマニョン人による近隣に住むネアンデルタール人の皆殺しにおけるような、拡大する資本主義の結末としてプルトニウム型とウラン型の原爆が投下されたような、一つの具体的な殺戮としても現出する。 スーパーコンピューターの如き知性を持って未来を幻視した主人公は、その先にある『彼ら』に王座を明け渡すであろう未来をどう捉えるのか。 そして、私の恋人なる、まるでスコラ哲学者が作り上げた空想の神の如き存在は本当に到来するのか。それともゴドーのように永遠に待つしかないのか。 私の恋人なのかどうかも分からない一人の女性キャロライン・ホプキンスをじっと部屋で待つ主人公が、物語の最後で選んだ答えは・・・? その結末が気になる方は是非読んでみてください。 SF好きにも純文学好きにも楽しめる1冊だと思いますよ。
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参りました!
著者のデビュー作を散々diaった者です。 ----- Original Message ----- 「太陽」は、『異邦人』のオマージュ。あるいはパクリ、というか文体は、まんまカミュ気取り。 「惑星」は、伊藤計劃の『ハーモニー』の焼き直し。がっかりだ! 何が気に入らないって、要するに人類滅亡計画もしくはディストピア小説の末席に連なる作品が2つ増えただけじゃないか。(『太陽・惑星』の拙レビューから) たいへん失礼いたしました。わたくしが悪かった。 本作において、登場人物がウーメラ砂漠でJAXA職員と遭遇するシーンがちゃんと描かれており。 いやあ、渡辺えり主宰 オフィス3〇〇 新作舞台「私の恋人」の観劇が楽しみだ!(そこか?w)
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好いテーマなのにもったいない
テーマの根幹は人類諷刺に充ちた壮大ですばらしいものだと思うのですが、細かい部分の齟齬を収拾しないまま書き進めたからでしょうか、なんともすっきりしない内容と結末でした。もっと時間をかけてじっくりと構想を練っておれば、もっとすばらしい作品に仕上がったのではないでしょうか。僭越ながら提案させてもらえれば、三人目の私が過去を振り返るのではなく、一人目の私の視点からの語りで作品がはじまり、時系列に沿って各種テーマを掘り下げながら二人目の私、三人目の私と徐々に語り継ぐ手法の方が、すばらしい作品に仕上がったのではないかと残念です。できればそうした手法で書き直してほしいくらいです。それはさておき、このタイトルは本作品にそぐわないと思います。前作からの流れを汲み『地球』でよかったのではないでしょうか。文章も前作同様、無味乾燥が過ぎます。堅くて重たいテーマに合わせた文体なのかもしれませんが、読者としてはもう少し色艶をつけてもらった方が読み進めやすいです。でもテーマは本当にすばらしいので、著者の今後のご活躍が楽しみです。
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意味が分からず、「オレのテクニックはすごいだろ? ほら喰え、喰えっ!」と言われ続けている気分
新聞に「斬新な文体」といった内容で紹介されていたので読み始めた。 5行で挫折の予感。 意味のない言葉を繋ぎ合わせてひとつの世界観を作ろうとしているようだが、理解ができないので全然先に進まない。 「まずい」と思っている料理を、「オレのテクニックはすごいだろ? ほら喰え、喰えっ!」と言われ続けているようで、だんだん不愉快になった。 我慢して読み切ってしまえば、何か理解できるものがあるかもしれないが、そんな義理も時間もないので、10ページで見切りをつけた。
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むむむ
難しかったけどスラスラ読めてしまった不思議。微妙にすれ違いながらも同じ道をたどり行く運命に、気づくと奇妙な感覚にとらわれて目が離せなくなりました。
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題名とのギャップ、切り口、発想、そしてドライな語り口
好みはあると思いますが、個人的にはかなり好きな本でした。題名からは想像できない切り口にまず驚かせられました。10万年前の天才クロマニョン人→ナチス強制収容所で絶命するユダヤ人→平凡なサラリーマン井上の生まれかわりで、とうとう夢にまで見てきた恋人と出逢う。 話のメイン(?)、大半を占める「行き止まりの人類の旅」という発想も面白かった。 語り口は極めてドライで、物語の展開にハラハラドキドキする面白さはないかもしれないが、これはこれで良いのだと思う。色はつけずに内容を堪能しました。 もったいないというレビューもあったように、欲を言えば、設定に未知のものが見たかった。行き止まりの人類の旅が、やや偏った日本人視点になっていたのが物足りなさを感じさせた。 とはいえ、現在進行形のテロ集団の記述は勇気がいると思う。 最後の方の一節がたまらなく好きです。 「ふとこの感じ、どこかで覚えがあるなと思った~確か10万年前のあのことだと思い当たる」「一人目の私は、自分で思ってたよりも、ネアンデルタール人の少女が洞窟にやってくるのを楽しみにしていたらしい」「あれは私が一人目のクロマニョン人だった頃のことだ」 他の作品も是非読んでみたいと思います。
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クロマニョン人のジュラシる姿、あるいは思念に萌える話
既に「太陽・惑星」は既読済の、好意的な読書の立ち位置からの感想。 ……「私」の意識は早くはクロマニョン人の頃から始まり、ユダヤ人の「ハインリヒ・ケプラー」を経て、今は日本人の「井上由祐」となっている。 そしてクロマニョン人だった彼は明晰な頭脳を持って、今後2000年以上の未来を予想し、未だ見つからぬ壁画に独自の言語体系で描いていた。後年のクロマニョン人の「彼」は自分の理想とする伴侶を――「私の恋人」を死ぬまで夢想する。そして現に理想と見合う相手に遭遇するのは3度目の生となる「井上由祐」の時だった――。 ……上記のようなあらすじだが、特筆すべきは文体、というか時制であり、話法だろう。一番初めの人格であるクロマニョン人の意識がこの作品を支配しており、起こった出来事を契機に、時系列を飛び越え、過去へ現在へ太古へと目まぐるしくシーンは飛んでいく。それを可能としているのもクロマニョン人の意識の支配(……同居というべきなのか?)という構造がなせるものだろう。同時にこれらユダヤ人「ハインリヒ・ケプラー」、日本人「井上由祐」の話も彼の壁画に描かれた挿話でしかない……かも、という可能性が示唆されていることもある。だが、逆にユダヤ人の「ハインリヒ・ケプラー」の末期からは「いや、前世とか単なる妄想っしょ?」という否定的な可能性も匂わせている。 前述の通りの『もしも』を秘めた構造からして、文体は乾いた、情緒を欠いたものであるが、この少ない総量の中で「良くぞ!」と言いたくなる濃密な内容が描かれている。情感たっぷりに時系列順に描くと、およそこの着想を使う必要はないだろうし、そういった内容は純文学の専門家か、ハリウッドに任せておいた方が外れがないだろう。 「私の恋人」候補となっている女性「キャロライン・ホプキンス」に決定的な影響を与えた人物が自分でないことを幾度も言及し、隙あらばそこに自分の影をねじこもうと高尚かつ傲慢な文体で記述するクロマニョン人の意識がいじらしいという、実はクロマニョン人萌えの本でもある。 ……こうして上田岳弘は、彼にしか書けないジャンルの純文学SFの傑作を、もう一冊増やしたのだった。
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期待はずれ
書店で手に取りページをめくるとGoogle翻訳によるH・G・ウェルズ『宇宙戦争』からの引用 (なにそれ斬新&なんかちょっとかっこいい) 本編が始まると冒頭に「人類の二周目の旅」という気になるフレーズ (一周目があったというのか!) あらすじから察するに 「旧石器時代」「ナチスの強制収容所」「東京のアパート」という 異なる時代を股にかけたラブストーリーが壮大なスケールで描かれるらしいぞ! (表紙の絵がパウル・クレーというのもポイント高い) ということで興味をもち、買って読んでみました。 が、う〜ん、読み終えてみた直後の正直な感想は、がっかり。 『千年女優』や『クラウドアトラス』、あるいは『百億の昼と千億の夜』のような 途方もないスケール感を期待していたのですが、 恋愛要素も複雑なストーリー構成も超越的な語りも、 どれもこれも意外なほどコンパクトでスマート。 なにやら文学賞も受賞されたらしいですし、 実力は確かでしょうし、きっとすごい作家さんなんだと思いますが、 店頭でものすごく期待してしまっただけに、 とても残念な気持ちです。 もし別の作品を読む機会があったら、 次はまっさらな気持ちで向き合いたいですね。