Mainichi Publishing Culture Award
ラジオと戦争: 放送人たちの「報国」
A nonfiction study that traces testimonies and records from wartime broadcasters to examine how radio became entangled with war.
Work Information
What did radio transmit, and what did it leave unsaid?
Based on a long-running NHK Broadcasting Culture Research Institute series, the book explores broadcasting before, during, and after the war.
Book Information
- Publisher
- NHK出版
- Published
- 2023-06-26
- Pages
- 576 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 14.2 x 3.8 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784140819401
- ISBN-10
- 4140819405
- Price
- 3960 JPY
- Category
- 本/社会・政治/マスメディア/放送
第46回・講談社本田靖春ノンフィクション賞&第77回・毎日出版文化賞W受賞作! 1925 年に登場し、瞬く間に時代の寵児となったラジオ。ラジオ放送に携わった人々は、その成長と軌を一にするかのように拡大した「戦争」をどう捉え、どう報じたのか、あるいは報じなかったのか。また、どう自らを鼓舞し、あるいは納得させてきたのか。そして敗戦後はどう変わり、あるいは変わらなかったのか――。 NHK放送文化研究所の月刊誌「放送研究と調査」は、2017 年~21 年の5 年間にわたり上記をテーマとした「戦争とラジオ」を掲載、その単行本化が本書である。筆者の大森淳郎はNHKのドキュメンタリー番組のディレクターとして、戦争中のラジオについても長年取材を続けたのち、2016年~22年12月まで同研究所の特任研究員を務めた。 本書では、「放送人」たちが遺した証言と記録、NHKにある稀少な音源・資料などを渉猟し、丁寧にたどり、検証しながら、自省と内省の視点を欠くことなく多面的に「戦争とラジオ」の関係を追い、ひいては、いまメディアに携わる者がどのように思考・模索し、振る舞うべきなのかをも照射したノンフィクション。 【「序」より】 ……夜空に浮かぶ月の表面は鏡のように平らに見えるが、実際は数千メートルの山々がそびえるクレーターだらけのでこぼこの世界だ。戦前・戦中の日本放送協会の歴史を遠望すれば、軍や政府に支配された、非自立的で没個性の、のっぺらぼうのような組織の姿しか見えない。でも、もっと接近して見れば、放送現場の絶望や葛藤、あるいは諦念といった感情の起伏が見えてくるのではないだろうか。そして政府や軍の指導を、放送現場がいつのまにか内面化し、ニュースや番組に具現化していったプロセスが浮かび上がってくるのではないだろうか。 現在の価値観から戦時ラジオ放送を断罪しようというのではない。いわば「仕方がなかった史観」を乗り越えて戦時ラジオ放送を検証すること。戦時中のラジオが何を放送していたのか、単にその事実を羅列するのではなく、現場が何をどう考えて、あるいは考えることを放棄して放送していたのかを検証すること。それこそが重要なのではないだろうか。 戦争協力は仕方がなかった。そこに止まっている限りは、戦時ラジオ放送の経験から学び、現在の放送に生かすことはできないだろう。(後略) 【もくじ】 序 第1章:国策的効果をさらにあげよ ー検証・戦時下ラジオニュース 第2章:前線と銃後を結べ ー戦時録音放送を聴く 第3章:踏みにじられた声 ー戦時ラジオ放送への道 第4章:日本放送協会教養部・インテリたちの蹉跌 ー講演放送・学校放送は何を伝えたのか 第5章:慰安と指導 ー放送人・奥屋熊郎の闘い 第6章:国策の「宣伝者」として ーアナウンサーたちの戦争 第7章:敗戦への道 ー「負け戦」はどう伝えられたのか 第8章:敗戦とラジオ ー何が変わらなかったのか あとがき
1957年埼玉県生まれ。1982年、東京外国語大学ヒンディー語学科卒業。同年NHK入局。富山、東京、広島、福岡、仙台の各放送局に勤務。ディレクタ-として主にETV特集を手掛ける。作品にETV特集「モリチョウさんを探して―ある原爆小頭児の空白の生涯―」(1993年)、同「祖父の戦場を知る」(2006年)、同「シリーズBC級戦犯 第二回“罪”に向き合う時」(2008年)、同「ひとりと一匹たち―多摩川 河川敷の物語―」(2009年)、同「シリーズ戦争とラジオ 第一回 放送は国民に何を伝えたのか」(2009年)、同「敗戦とラジオ 放送はどう変わったのか」(2010年)など。 2016年からNHK放送文化研究所に研究員として勤務。2022年退職。 著書に『BC級戦犯 獄窓からの声』(日本放送出版協会、2009年)、『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社、2012年)。ともに共著。 本書は第77回「毎日出版文化賞(人文・社会部門)」を受賞し、「第46回講談社本田靖春ノンフィクション賞」も受賞。また著者は日隅一雄・情報流通促進賞2024奨励賞受賞。
Reviews
-
『アナウンサーたちの戦争』の時代を、より深く知るために。
ゆえあって、この労作にして大著はドラマおよびそれを再編集した映画『アナウンサーたちの戦争』(出演:森田剛、安田顕、橋本愛、水上恒司、小日向文世ほか)の原作等ではなく、著者である大森氏の名前もクレジットはされていない。しかし、同作が描き出した暗黒の時代とその背景に、さらに深く踏み込んでいる点において、必読の一冊である。 対象とした時代は、満州事変から敗戦を経てアメリカによる占領の終了までと幅広く、遺された貴重な音源、および資料に丹念にあたり、丁寧に解き明かしている。 およそ570ページに及ぶ力作ゆえ、たとえば図書館から借りて、試読はともかく期間内に通読することは困難かと思われるので、なんとかしてご購入の上、お読みいただきたいと思っている。
-
NHK職員必読書、ジャーナリストを自認して読んでいない人はいないだろう
戦争中のマスコミは政府の強権に屈したのではなく自分から進んでああなった面も多かった、もちろん抵抗したひともいた。多くの人が流されてしまった… これを読んだ若い人が 「公共放送はどうあるべきか、専制政治や腐敗政治にとりこまれてよいのか」 と考えるのか 「昔の先輩も政府の言う事に従ったのだから自分もそうなってもしょうがない」 と考えるのかどちらだろう 考えがなく保身に走る人は後者であろう