月世界小説 (ハヤカワ文庫 JA マ 5-7)
A radical SF novel where languages create countless delusional universes and humans resist divine unification.
Work Information
Language can destroy worlds and also become the weapon that protects them.
月世界小説 is a work by 牧野修. A radical SF novel where languages create countless delusional universes and humans resist divine unification.
Review Summaries
-
Readers value the depth of treatment and the firm structure. Some may find the specialist focus or length demanding, but the work is supported by its affection for the subject and substantial reading experience.
Book Information
- Publisher
- 早川書房
- Published
- 2015-07-08
- Pages
- 431 pages
- Language
- 日本語
- ISBN-13
- 9784150311988
- ISBN-10
- 4150311986
- Price
- 1078 JPY
- Category
- 本/文学・評論/SF・ホラー・ファンタジー
友人とゲイパレードを見に来ていた青年、菱屋修介は、晴天の空にアポカリプティック・サウンドが響くのを聞き、天使が舞い降りるのを見た。次の瞬間、世界は終わりを告げ、菱屋は惨劇のただなかに投げ出された。そして彼が逃げこんだ先は自分の妄想世界である月世界だった。多数の言語が無数の妄想世界を生み出してしまった宇宙を正しく統一しようとする神の策謀と、人間は言語の力を武器に長い戦いを続けていたのだった。
1958年大阪生まれ。大阪芸術大学芸術学部卒。高校時代に筒井康隆主宰の同人誌〈ネオ・ヌル〉で活躍後、1979年に〈奇想天外新人賞〉を別名義で受賞。数年の沈黙ののち、1992年に〈ハィ! ノヴェル大賞〉を長篇『王の眠る丘』で受賞、同書にて“牧野修”としてデビュー。1996年、特異な言語感覚に満ちたドラッグ小説『MOUSE』で、高い評価を得る。1999年、『スイート・リトル・ベイビー』で、第6回日本ホラー大賞長編賞佳作を受賞。2002年、『傀儡后』で、第23回日本SF大賞を受賞。
Reviews
-
日本語が亡びるとき
Amazonで購入させていただきました。 はじめに、ぼくはSFはあまり読んだことがないSF初心者であることをお断りしておきます。 SF初心者でも十二分に楽しめる小説、これが牧野修(まきの・おさむ)さんの『月世界小説』です(はじめぼくは、タイトルを「つきせかいしょうせつ」だと思っていましたが、実際のところ、「げつせかいしょうせつ」と読むようです)。 村上春樹さんは、ジョージ・オーウェルの『1984年』の向こうを張った『1Q84』で、その後の世界の分岐点を1984年と考えて物語世界を構築しました。 この『月世界小説』は1975年(あるいは1945年)をその分岐点と考えて物語っているようです。 物語は2014年現在からはじまります。 主人公の菱屋修介(ひしや・しゅうすけ)は、ゲイの小説家です。 菱屋くんは友人で出版社勤務の石塚啓太(いしづか・けいた)のことが好きです(つまり、菱屋くんはゲイです)。 菱屋くんは石塚くんに誘われてとプライド・パレード(LGBTQの祭典)を見学しに来ています。 そのとき、天使たちがラッパを吹き鳴らして登場し、「地に住める者どもは禍害なるかな、禍害なるかな、禍害なるかな、尚ほかに三人の御使いの吹かんとする喇叭の聲あるに因りてなり」(p.19)と人間たちに告げ、辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図となります。 そこから世界は1975年に巻き戻され、「1975 世界n+1」の世界と「世界n-1」のメタ世界ーー時には「1958-1975 世界n+1」の世界ーーへと行きつ戻りつします。 そして最終的には人類対神の闘いへと発展します。人類の武器は「物語ること」です。物語ることによって、語られたものが現実化する、まさに「物を語る」ということです。 人間は神に勝てるのか、勝てるとしたらどうやって、という本書のさわりの部分は実際に読んで確かめてください。 ささやかだけれど確かなことは以下の引用に示されています。 「「それで、どっちが勝ったのかね」子供のように不安な顔でジョンが訊ねると、ケートは優しく彼の頭を撫でる。/「まだ勝敗は決まっていないのですよ。でもね、こうしてあなたが幸せになる物語が語られることもまた、人類のささやかな勝利なんですよ。一匹の蝶が羽ばたくことが大きな竜巻を引き起こすように、この勝利はやがて人類とその物語の大きな勝利へと繋がる、のかもしれませんね」」(p.423) アウトサイダー・アートの巨匠ヘンリー・ダガーや日猶同祖論や言語的ジェノサイドやバタフライ効果やチューリングテスト、『聖書』やミルトンの『失楽園』、そして主要なモチーフとして日本語の言霊思想などいろいろなギミックが散りばめられています。 ぼくはそうしたもののなかに伏流しているものとして、大本教の出口王仁三郎の思想や水村美苗さんの『日本語が亡びるとき』(筑摩書房、2008)がある気がしますが、どうでしょうか。 SFを読んだことがない人でも楽しめること請け合いです。 オススメです。
-
ただの「ドタバタ不条理劇&夢オチ?」に終わらない、良質な「SF小説」
主人公 菱屋修介が、破滅しようとする世界n(本来の2014年?)から「現実逃避」した先であるはずの彼の「妄想(と思われていた)=世界n-1」は、実は「太平洋戦争後に米国に支配されたままの1975年」=世界n+1で重要な役割を果たすとされる本「月世界小説」の中身である、という具合に、複数の「パラレルワールド」が交錯、互いに干渉しながら物語が進行します。 テーマがテーマなために「言葉遊び」的な要素も多く、「学園紛争」や「公安」といったキーワードのせいもあるかもしれませんが、全体的に押井守監督のアニメや漫画、あるいはつかこうへいなどの不条理(?)劇をイメージしながら読み進めていました。また、終盤に向かって、聖書をモチーフに「多彩な言語をもって神の意志に背いた人類」対神=「非言語的存在」の戦いが中心となるあたりからは、アニメ「エヴァンゲリオン」が連想されたことから、必然的に「訳が分からないエンディング」を危惧していました。しかし、これが意外と(?)「きちんと」物語は完結していて、それなりに納得して読み終えることが出来ました。
-
余韻と妄想が膨らむラスト
冒頭での唐突で荒唐無稽な場面,さらに続くニホン語の失われた世界という設定など, 始まってしばらくは,妄想世界で繰り広げられるパラレルワールドかとも思わせますが, その不思議な様子や独特の章題に引っ張られ,却ってそれが先への興味に繋がる印象です. また,合間に挟まれる宗教観や思想といった,理解の追いつかない面はあったものの, 入り組んだ時系列や人,出来事と,『世界』を取り巻く数々の疑問が明らかになる中で, 繋がっては離れ,それらが収束していく気持ちの良さが,終盤に向けての関心を煽ります. このほか,全体的にはシリアスに映るものの,物語の世界になぞらえた言葉遊びなど, 大胆に放り込まれるコミカルテイストについては,思わずニヤリとなってしまうことも. さらにはいくつかのオマージュ(たぶん),帯の下に隠された『小ネタ』にも遊び心が…. いくつもの夢を重ねた物語の還る先は現実か,それとも誰かの綴った世界の続きなのか, ラストで描かれる人々を眺め,考えながら,余韻と妄想を膨らませるのも悪くありません.
-
最高のことばあそび
文字通り(?)言葉を武器に戦うのかっこよすぎる。 小説が好きならきっと一度は空想したことがあるであろう、「自分の物語で戦う」を見事に描いていて、この作品中学生とかで出会ってたら絶対影響受けすぎて人生狂ってただろうな…。 映像が頭に浮かんでくるようでその想像すら本の中から出てくる腕に鷲掴みにされグシャグシャにされる快感。 ラストは普通に泣いてしまった。
-
ディックの「宇宙の眼」を想い出させる妄想パラレルワールド譚。
パラレルワールドを巡る冒険小説。 同性愛者である主人公は失われた恋人を求め、一方、主人公に関る運命を持った男もも、もう一人の主人公として様々なパラレルワールドで事象の核心に迫って行く。 それにしても塁の最終兵器としての姿は、下手な作家ならばリアルロボットものの方向へ行ってしまう事だろう。そう成らなかったのは、この作家ならではの事。
-
面白かった。
言語と多重世界が交錯する物語に翻弄される不思議な感覚。 惹き込まれた。
-
勢いだけで最後まで走っている印象
SF大賞の特別賞を受賞した作品である。その講評を見ると「イメージの喚起力とドライブ感覚(北野勇作)」「イメージの鮮やかさとスペクタクル(篠田節子)」といったように、視覚的表現が評価されているようだ。確かに、『月世界小説』の状況描写は読者の脳内に鮮やかな色彩を持ったイメージを想起させる。それはまるで今敏の『パプリカ』を見ているような感覚だった。しかし、それ以上のものはなかった。物語として成立しているのか不明な構成、言語学の概念を無視した設定などなどは、読んでいて苦痛だった。
-
主人公は中二病ってことですか?
期待が大きすぎたのかもしれない。 言語を武器にして戦う、言語のために戦うという話らしいというので、言葉の使い方を楽しみにしていた。 ところが読みはじめてみれば、なんともごちゃついた、終始ガチャガチャとした文体とストーリーで、読むことが気持ち良くなかった。 高校生の書くような文章だという感触。 が、これは、このレビューを書いていて気づいたのだけれど、もしかして、あえての演出だったのだろうか。だとしたら、荒削りな感触うぃ受けるのも納得するし、これは作品として見事なんじゃないかと思う。「月世界小説」の世界が成立している。 ただ、外側の1読者からしてみれば、進め方が急すぎる、分割もされすぎている。映画のCMを見ているようで、非常に忙しい。 ページ数が倍ぐらいでもっと書き込んで、文章ももう少しスマートな感じで、言語での戦闘シーンが多かったら、面白くなっていそうだと思う。
Related Literary Awards
- Nihon SF Grand Prize Edition 36 (2015) ・special award