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ジェリーフィッシュは凍らない

Ayukawa Tetsuya Award

ジェリーフィッシュは凍らない

Yuto Ichikawa

During the final trial of the small airship Jellyfish, built with special technology, a dead body is found in the sealed cabin. The development team becomes trapped in the snow mountains and must face a sequence of tragedies in an inescapable classic mystery.

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Work Information

Inside a trapped airship in the snow mountains, death and mystery begin to cascade.

Winner of the 26th Ayukawa Tetsuya Award. It was first published by Tokyo Sogensha in 2016 and later republished in Sogensui Bunko in 2019. The novel combines a SF-like airship trial setting with the tension of a classic mystery.

Book Information

Publisher
東京創元社
Published
2016-10-09
Pages
340 pages
Language
日本語
ISBN-13
9784488025519
ISBN-10
448802551X
Price
2850 JPY
Category
本/文学・評論/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

第26回鮎川哲也賞受賞作 特殊技術で開発された、小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、次世代型ジェリーフィッシュの長期航空試験に臨んでいた。ところがフライト中に、密室状態の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行プログラムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。精緻な筆致で描く本格ミステリ、新時代の『そして誰もいなくなった』登場!

Reviews

  • 他の作品を読み、最初の作品を読みたいと思った。

    圧倒的に面白かった。とりあえず、この全シリーズを買うことにしました。おそらく、ハズレることはなさそう。

  • 小型飛行船でのクローズド・サークル

    予備知識なく手に取ったので、誰が主人公なんだ?と思いながら読んでいました。 本作は〈マリア&漣シリーズ〉の1作目。 主人公は女性刑事のマリア、その部下の青年の九条漣とのバディものです。 物語は ①ジェリーフィッシュ(気嚢式浮遊艇・つまり小型飛行船)の船体内、ウィリアム視点が多め? ②漣とマリアのいる地上 これら2つの時系列が交互にくる構成で、2章おきに「私」視点のレベッカとのSSなどのインタールードが挟まります。 ジェリーフィッシュが近未来的で忘れがちですが、1980年代の設定。 漣やマリアの些細な会話でも、昔の話だとわかるような言葉の応酬が多いです。 有名な『そして誰もいなくなった』『十角館の殺人』のような連続殺人の起こるクローズド・サークルのミステリー。 殺人描写自体はグロテスクでもないので、誰でも読みやすいと思います。 衝撃度で言うと上記の作品より薄め。 ただし、航空工学には全く明るくないのですが、ジェリーフィッシュそのものが興味深く、ミステリー以外の部分で面白かったです。 連続殺人の動機としては納得のいくものでした。 スカッとするような作品ではないです。

  • 怪人20面相のような結末はいただけない

    クローズドサークルで次々と殺人が起こり、結果登場人物全員が謎の死を遂げるというシチュエーションの作品は、やはりどうしても『そして誰もいなくなった』や『十角館の殺人』の衝撃度を超えることはできないと思いますが、それでも手を変え品を変え挑もうとする著者の気概が窺えます。アンフェアに感じる部分はあるものの、メイントリックと犯人象を巧妙に隠す手法はうまいと感じました。化学・科学のことはチンプンカンプンなので、結構な比重の解説があるのはなかなか厄介でしたが、このプロットとトリックを成立させるためには不可欠な要素なのでこればっかりは仕方がありません。あと、「U国」「C国」とか「A州」とか「J国人」という伏字表現が、昔から使われてきたものではありますが、やたら多いだけに結構面倒くさいです。唐突なラストはあれでいいのか?と思いました。

  • 『十角館の殺人』を越えた傑作

    意外なことに言及している方が少ないのですが、亡き〖レベッカ〗という名の女性を軸に動く物語であること、主要人物なのに最後まで本当の名前がわからないキャラがいること、邸宅が大炎上すること、「大団円」とまでは言い切れない微妙な結末など、D・デュ・モーリアの代表作『レベッカ』を彷彿させるオマージュ作品です。 アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』とか綾辻行人『十角館の殺人』へのオマージュであることは文庫本の「帯」や千街晶之の解説などに書かれていますが、個人的にはF・W・クロフツ『樽』の影響が大きい気がしています。わけがわからない複雑怪奇な現象が複数を想定して捉え直した途端にごく単純な動きで説明できてしまうあたり、欠陥が残されたままの『樽』以上かもしれません。幾重にも重なったクローズド・サークルが織り成す緻密な作品なので、再読しないと真価はわかりません。特に、そっけない上にとっつきにくい第一章ですが、記述の「巧みさ」は脱帽ものです。 ただ、気になったのは「A州」とか「H山系」といった表記で、フェニックスとかフラッグスタッフとか何度も実在する都市名を出しているのですから、「アリゾナ州」「ハンフリーズ・ピーク」でなぜいけないのでしょう? 匿名が必要とされる差しさわりがある件とも思えませんし「詩的効果」と言うほどの効果もない気がします。「アリゾナ州」から厳しい雪山を連想できる日本人は少ないかもしれませんが、フラッグスタッフ市の標高とかスキー場関連の記述を数行加えれば何の問題もない話ではないかと。

  • クローズド・サークルの傑作

    プロットは十角館の殺人の同様ですね。ネタバレになるので深くは語れませんが楽しく読み進めました。読後感も余韻が残り、記憶に残る作品となりました。

  • ノスタルジーな美しい光景が浮かびました。本格好きには堪能できます。

    前半は途中でやめようかと思うくらい退屈でしたが、後半、見事本格らしくなり、堪能させていただきました。 口数の多い探偵、突っ込み役のワトソン、死体のトリック、軸となるトリック、もうおいしくおいしくいただきました。ごちそうさまです。 図面もあったし、最&高。 探偵役が巨乳美女のツンデレとか、動機が薄いとか、本格ならトリックさえよければどうでもいい派なのでOKです。 中心のジェリーフィッシュのトリックは、「なにこれ、ありなの? 都合よすぎない?」と思いましたが、理由付けが良い。ありよりのありです、と一発で納得。 やっぱり本格は良き良き。鮎川賞は裏切りませんな。 ジェリーフィッシュが空を行く美しい光景が所々にちりばめられているのも良きかな。 飛行船やら気球などが浮かんでいる世界に行ってみたくなりました。 ジェリーフィッシュっていう名前も良い。凍らない、っていうのはヒロインなのか、ヒロインへの主人公の思いなのか。などと読後もロマンチックにいろいろと考えていましたが、なるほど! タイトルの妙が過ぎます。いやあ、深い深い。 ラスト、墓所にジェリーフィッシュが浮かんで消え去っていく場面、主人公のヒロインへの思い、など、美しい情景が浮かんできました。 凄く好きな作品です。

  • 雪山に墜落炎上した飛行船という単純で不可解な密室殺人

    これは面白かったです。 それほど推理小説は読み漁ってないけど、自分の知る限りではたしかに「そして、誰もいなくなった」(以下「誰も」と略)を意識してるんだなと思えました。「誰も」に比べると、推理パートが充実しているのが大きな違いですが、後書きによると、当初は推理パートがなくてより「誰も」に近い構成だったようです。 まずは本筋にもネタバレにも関係ない部分から。 ・時代は80年代。自動操縦装置のRAMが「大容量256キロバイト」(!)だとか、修正ソフトのインストールに「フロッピーディスク」が使われているのも時代に合わせたためでしょう。8801が81年だから、当時としては256KBは間違いなく大容量だ。5インチフロッピーもビジネス用途限定の高級品。 ・携帯電話やインターネットはない。アマチュア無線はあるだろうけど、普及率は低い。今のように「ネット経由でPCにハッキング」や「携帯電話で911に電話する」のような手段は議論の対象にさえなりません。ジェリーフィッシュの自動操縦装置も、今のドローンより遙かに原始的なものだし、もちろんGPSなどはない。 ・架空のU国とかA州とか出てくるけれど、ほぼUSAのArizona州フラグスタッフ周辺を想像すれば良いでしょう。人口密度が低い砂漠地帯。J(apan),C(anada)、R(ussia)の各国家も同様。 ・主人公の女性警部は、有能だけど素行に問題があって僻地に飛ばされた感じ?パトレイバーでいう後藤隊長みたいな人だな。田舎警察にしてはかなりの切れ者。 ・ジェリーフィッシュとは真空気嚢を使った、画期的に小型化された新型硬式飛行船。しかしこの真空気嚢に関しては …… 仮に中を真空にしても飛躍的に小型化するのは理論上不可能です。ここはスチームパンク的なガジェットとしてスルーしましょう。 事件は新型ジェリーフィッシュがその実験中に開発者ともども山中に墜落炎上。現場にかけつけると、そこには6人全員の他殺死体が。雪の密室で殺したのは誰だ。一体なんのために、そしてどうやって。 トリックとしては、「巧妙な不可能犯罪」というよりは「単純で不可解」。 毒薬の入手、侵入方法、ジェリーフィッシュへの破壊工作、「密室」の構築など、一つ一つには十分に穴がある。ある意味ではその犯罪は誰にでも可能だった。だけど誰にもできない。一つ一つのピースは手に入るけれど、パズル全体として全てのピースをを一つに填めようとしても嵌まらない。 例えば関係者全員が殺されるのは「誰も」と同じだけど、「島から出た者は一人もいないことが目的証言から明らか」だった「誰も」とは違い,ジェリーフィッシュに目撃証言はありません。極論すれば、十分な装備と経験と時間があれば、墜落現場からの脱出は徒歩ででも可能なのです。しかしそれは同時に非現実的でもある。ベテランの登山家でさえこの悪天候下では困難だし、そもそも周到に用意した犯人が、そんな不確実な手段に訴えるだろうか?まさか雪山に謎の七人目が隠れて待ち伏せしていたのか?(この気温でいつ来るかも分からない相手を?)ジェリーフィッシュの中に隠し部屋があって、そこにずっと隠れていた?(開発者にも秘密で水と食料も込みで?重量計もパスして?)空中で飛び移る?どれにしても不可能ではないにせよ、あまりに筋が通らない。真相はいったい? そもそも犯人はなぜ全員を明らかに他殺と分かる状況で殺す必用があったのか。目撃者のいない雪山なのだから、中の一人を機外に放置して凍死させたり、撲殺したうえで斜面を滑落させれば、ちょっとくらい不自然でも「仲間割れの末、犯人自信も事故死or自殺」でケリがつく話なのだ。なぜ犯人はわざわざ事故ではなく事件にしたがったのか? それだけに最期にパズルが嵌まる爽快感は良かった。一度読み終わってからもう一度読み返して、最初からはられていた多くの伏線がようやく理解できました。(まだ気づいてないのがあるかも。) にしても、あの質問に対してあの答は寂しいねえ。 自動操縦装置回りの設定は少し不自然だった。 8bitパソコンレベルのIT技術でも、飛行船用なら原始的な自動操縦装置は可能だろう。しかしおかしいのは、自動操縦装置が故障した際に「解除できなかった」という部分。このような装置を設計する時は、物理的に壊しても解除できないような設計にはしないだろう。ましてやこれは初飛行したばかりの試作品。しかも民間機用の後付けタイプなのだから、適当な工具があれば開発技術者である彼等に外せないわけがない。(あくまで試験飛行なのだから、必用なメンテナンス装備一式くらいは持参してるはず。) たとえソフトが書き換えられていても、なんらかの異常が認められた時点で持ってきた工具で装置を取り外し、手動操縦で雪山を脱出すれば良かったのだ。(むしろ技術者が同行する最大の理由がコレだろう。)自動操縦装置を壊してもいいなら、開発者に解除できないはずがない。 これについては月並みだけど、「爆弾が仕掛けられていて、蓋をあけるとドカンだ」「設計図にはなかった分厚い鉄板で覆われていて、手持ちの道具では手が出せない」などの一言が欲しかった。

  • 美しさと哀しみに包まれた大型トリック(ネタバレなし)

    私が本格ミステリで最も注目しているのはトリックであり驚きです。急に世界が 一転して鳥肌が立つあの瞬間です。極端な話、そこが見事でさえあれば、ある程 度の事には目をつむります。そういった意味で本書のトリックは合格点でした。 トリックを成立させるために無理をしている所は多々あるし、個人的に引っかか る箇所もありますが、それらを差し引いたとしても、作品をトータルで見るとや はり満足度の高い作品でした。読後には余韻が広がり、また再読したくなります。 小型飛行船(ジェリーフィッシュ)の存在や、我々の住むこの世界ではないパラ レルな舞台によって、どことなく幻想的な雰囲気が漂うのも本作の魅力でしょう。 それぞれの視点によってかなりノリが違うのも緩急としては悪くなかったです。 尚、物語の設定上どうしても専門用語が多く出てくるのですが、はっきり言って その辺は流し読みで問題ありません。私自身も「ふーんなるほどね?」くらいの 感じで読み進めていましたが、それでマイナスが生じた箇所はないと思います。 「そして誰もいなくなった」というよりも……と、ミステリ好きな方なら誰しも がとある作品を思い浮かべるのではないでしょうか(そして本書の解説を読むと その辺りも腑に落ちます)。本格ミステリが好きな方にお薦めしたい一冊です。

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