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火定

Yoshikawa Eiji Literary Newcomer Award

火定

Toko Sawada

A historical novel set in Nara-period capital society during a smallpox epidemic, following people connected to the Seyakuin and Hidenin relief institutions. As disease exposes discrimination and fear, the novel follows those confronting care and salvation.

historical fictionNara periodepidemicmedicinesocial anxiety

Work Information

The force of epidemic illuminates social darkness and human prayer in the ancient capital.

Published by PHP Institute. Asahi's book page confirms ISBN 9784569836584, publication date, and 414 pages.

Book Information

Publisher
PHP研究所
Published
2017-11-21
Pages
414 pages
Language
日本語
Size
13.5 x 3.1 x 19.5 cm
ISBN-13
9784569836584
ISBN-10
4569836585
Price
1100 JPY
Category
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

パンデミックによって浮かび上がる、人間の光と闇。 これほどの絶望に、人は立ち向かえるのか。 時は天平、若き官人である蜂田名代は、光明皇后の兄・藤原四子(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)によって設立された施薬院の仕事に嫌気が差していた。 ある日、同輩に連れられて出かけた新羅到来物の市で、房前の家令・猪名部諸男に出会う。施薬院への悪態をつき、医師への憎しみをあらわにする諸男に対して反感を持つ名代だったが、高熱に倒れた遣新羅使の男の面倒をみると連れ帰った行為に興味も抱く。 そんな中、施薬院では、ひどい高熱が数日続いたあと、突如熱が下がるという不思議な病が次々と発生。医師である綱手は首をかしげるが、施薬院から早く逃げ出したい名代は気にも留めない。だが、それこそが都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせた、“疫神" 豌豆瘡(天然痘)の前兆だったのだ。 病の蔓延を食い止めようとする医師たちと、偽りの神を祀り上げて混乱に乗じる者たち――。疫病の流行、政治・医療不信、偽神による詐欺……絶望的な状況で露わになる人間の「業」を圧倒的筆力で描き切った歴史長編。

作家

Reviews

  • 歴史を通じて現代医療を問い直す一冊

    歴史好きであり、医師という立場から本書を読みましたが、医師としての価値観が変わるほどのインパクトを受けました。 現代医療は西洋医学の発展により「科学」として高度化してきましたが、本書からは現代の医療者にとってなお学ぶべきことが多いと感じました。特に、死に触れる機会が少なくなり、「死=医療の敗北」と見なされがちな現代において、本書の示す視点は非常に示唆的です。 人は遅かれ早かれ必ず亡くなります。その死に意味を見出し、後世につなぐことこそが医療の本質であり、医師にしか果たせない役割だと改めて気づかされました。 パンデミックという題材についても運命かというほど身に沁みました。 私は2017年、新型コロナが流行する前にはじめて本書を読みました。しかし、その後のコロナ禍では、医療崩壊、国家中枢の混乱、不安につけ込む悪徳ビジネスなど、本書に描かれていた事象が現実のものとなり、著者の人間心理に対する解像度の高さに驚かされました。 医師同士でおすすめの本を紹介する機会があれば、迷わずこの本を挙げています。医療に携わる者だけでなく、人間の「死」と真剣に向き合いたいすべての人に読んでほしい一冊です。

  • 圧倒的迫力の凄まじいまでの物語なんですが、さまざまな人物が登場し、特に主要人物たちの心情や心の葛藤が深く追求するように描かれ悲惨な場面も多いのですが、最後は救いのある結末になってます。

    時は奈良時代の天平9(737)年、舞台は寧楽京(ならのみやこ)。この年は、いわゆる藤原四兄弟(藤原不比等の4人の息子)が(おそらく)天然痘で相次いで亡くなった(4月:次男房前、7月:四男麻呂、長男武智麻呂、8月三男宇合)、天然痘が猖獗(しょうけつ)を極めた、まさにその年です。 内容を簡略にまとめると、圧倒的迫力の凄まじいまでの物語なんですが、作者らしく、施薬院・悲田院の医師や官人や子供たち、出入りの薬商人、天然痘に効能があると偽って禁厭札(まじないふだ)を売り広める詐欺師たち、天然痘を日本に持ち込んだとされる遣新羅使、天然痘に感染する多くの人々(特に市井の)などさまざまな人物が登場し、特に主要人物たちの心情や心の葛藤が深く追求するように描かれつつ(医とは?医師とは?生きるとは?死とは?など)、結果的に個々の伏線も見事に回収されて(まあ、ミステリーではないので、すべてがつながる感じ(前に書かれていたことが、後になって、そういうことだったのかと腑に落ちる感じ))、また悲惨・凄惨な場面も多いんですが最後は救いのある結末になってます(特に、藤原房前の死にからませる人物設定は特によく考えられてると思います(史実では全く不明のはずです)。また、調べた限りでは、登場する人物の内、歴史上の人物は2人だけ(大伴三中と羽栗翼(唐人女性と日本人の父とのハーフで唐で生まれ育ったので唐語に堪能。遣新羅使だったという史実はなさそうですが、年齢的にはありえる。後に遣唐使として唐に渡る))のようです(残りの人物はすべて著者の完全な想像・創造ということになりますが、キャラクターそれぞれの書き分けが非常に見事です(PHP研究所のサイトの「PHPオンライン衆知」の『火定』の著者インタビューで「私にしては珍しく、8割方、想像で描いた作品です。」と語ってます。)。)。 あまりに多くの人々が登場し、特に最初の章など、それぞれを関連付けるために、矢継ぎ早に次から次へと話を展開させていて、ちょっと息をつく暇もない感じのところもあるので、星を1つ減らしましたが、天然痘に急激に見舞われていく寧楽の京(みやこ)をさまざまな角度から描くには、いたしかたなかったのかもしれないとも思われます(そのおかげで、勿論映像記録など残っていない、天平9年の寧楽の京(みやこ)の様子を垣間見ることができます(勿論、想像・創造によるものなのですが)。)。 あと他のレビュアーさんが、藤原四兄弟があまり絡まないので不満だというようなことを書かれてますが、本作は、あくまで天平9年の天然痘禍の寧楽の様々な階層の人々がどのように生きていたのかを想像・創造してみることに主眼があるので、ないものねだりというものです(藤原四兄弟を絡ませると、元長屋王派の暗躍・呪い・対決などになりそうで、まったく違う物語になりそうです)。また、「「白村江の戦い」、の後の時代なので、新羅が日本に朝貢するなんて有り得ない」とも書かれてますが、作中でも言及されてるように、『続日本紀』天平7年2月27日条に「入京した新羅使・金相貞に対して遣使の趣旨確認を行うが、国号を「王城国」に改称したと告知したため、無断で国号を改めたことに対して無礼と責め使者を追い返している。」(Wiki「多治比縣守」の項より)とあり、新羅からの使は日本に来ています。 ちなみに、本作は直木賞候補になったんですが落選し、評価しなかった選評でも有名な歴史上の人物が出てこないので物足りないというようなものがありますが、古代歴史小説の第一世代?(黒岩重吾や杉本苑子、永井路子)とは違い、澤田瞳子をはじめ、年上の帚木蓬生や梓沢要、周防柳、このレビューの最後に記した久保田香里など、新しい世代では、より一般の官人など、普通の無名の人物が主人公になることが多いように思います。私はそうした、古代の一般の人々の生きざまを想像力・創造力豊かに描く古代歴史小説も大変面白いと思います(第一世代の作品では、有名な歴史上の人物たち(蘇我入鹿とか、天智、天武、持統とか、藤原鎌足や不比等とか)の皇位継承の争いとか非業の死とかになりがちです。新しい世代の歴史小説家の小説は、敢えて言えば、井上靖の『天平の甍』の系譜とでも言えましょうか)。)。 なお、巻末の「主要参考文献」から分かりますが、『孤鷹の天』での大学寮や『日輪の賦』での大宝律令などと同様に、本作では古代の医療や天平年間の天然痘について(あと古代律令制下の獄制も)の調査量、知識量が半端ない感じで、物語の随所でそれが窺われます。 ちなみに、同じ天平9年の平城京(ならのみやこ)を舞台にした、『氷石 (こおりいし)』 (久保田 香里著) という小説(児童書なんですが)もあり、児童書のためか、凄まじさはややソフトで、ファンタジー要素もあり、また淡い恋の物語ですが、こちらもなかなかの力作なので、本作が面白かった方には、ぜひお勧めします。

  • 小説は世界を先取りしてパンデミックを描いていた!

    迫力のある物語。群像劇で登場人物はステレオタイプではあるが、 パンデミックのただ中にあって、それぞれの思い、立場、運命が絡み合い、飽きさせない。 歴史小説とも言えるし、奇遇なことにコロナ以前に発表されたパンデミック社会を抉り出した、 社会小説・医療小説でもある。 おぞましい情景の描写が多い理由を文庫本の解説では分析しているが、 そんなことを考えなくても面白い。 クリーンな日本社会は生老病死を隠蔽しがちなので、それを見直す良いきっかけになる。 若い人にも是非読んで欲しい。医療関係者も是非。こんなご時世だからこそ。

  • いつの世も、、、

    時節柄、身に染みる題材でした。 遠い昔から、流行り病に市民は 苦しんできたのかと。 ただ、時代考証と話し言葉に 若干の違和感を持ちながら読み ました。

  • 施薬院の活躍

    奈良時代に留学生がもたらした天然痘の被害とその対策がリアルに描かれていて、非常に興味深い作品です、

  • 久しぶりに当たりの本

    眼の前にある本をなんとなく期待もせず手に取り、読め始めてすぐ天平時代のものと分かり最後まで読めるかなぁ…と更に期待度を下げて読み進めたものの、すぐに杞憂とわかる。 読者を引き込む構成。 つい数年前のパンデミック、コロナを思い起こす。 人間の性はどの時代も同じか。 見えないものを恐れ、怒り、理不尽さに憤慨しそれを何処かへぶつけずにはいられない。 あまりにコロナ禍と共通点を感じ、コロナの時に書かれたものかと思いきや、コロナ前の発行でびっくりでした。

  • 極限状態を設定し、その中での人の生き様をリアルに描いた読み応えのある小説である。

    天然痘が蔓延し、日本人口の1/3が死亡したとされる奈良時代(天平時代)を背景に、それに立ち向かう医師たちと それを支える人達、さらには宮城内で働く官人達の人間関係などを絡めて、その人達の運命・生き様を描いた読み応えのある小説である。

  • 昔も今も

    人の行動は変わらないものだな。今のコロナ時代を見ているような臨場感を感じる。

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