Mainichi Publishing Culture Award
杉浦康平と写植の時代: 光学技術と日本語のデザイン
A scholarly study that traces postwar Japanese book design and typographic culture through Kohei Sugiura and phototypesetting.
Work Information
The shape of letters reflects the technology and aesthetics of an era.
Using the collaboration between Sugiura and Shaken as its entry point, the book examines how typesetting and book design reshaped print culture.
Book Information
- Publisher
- 慶應義塾大学出版会
- Published
- 2023-04-07
- Pages
- 488 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 21 x 15 x 2.5 cm
- ISBN-13
- 9784766428803
- ISBN-10
- 4766428803
- Price
- 4400 JPY
- Category
- 本/趣味・実用
宇宙としてのブックデザイン 戦後日本のグラフィックデザインを牽引したデザイナー、杉浦康平。 彼は写植という新たな技術といかに向きあい、 日本語のデザインといかに格闘したのか。 杉浦康平が日本語のレイアウトやブックデザインに与えた決定的な影響を明らかにする。 【目次】 序 章――ある解体 第1章――杉浦デザインの誕生と写植の革命(1956-1964) 第2章――杉浦タイポグラフィの躍進とカタカナ化する世界(1964-1978) 第3章――写植の起源 石井茂吉と森澤信夫Ⅰ(1923-1933) 第4章――写植の起源 石井茂吉と森澤信夫Ⅱ(1933-1945) 第5章――写植と杉浦デザインの深化 石井裕子と中垣信夫(1946-1972) 第6章――ブックデザイナーという発明 杉浦康平と和田誠(1956-1969) 第7章――新書体の時代 中村征宏と写研(1969-2001) 第8章――宇宙としてのブックデザイン 杉浦康平と戸田ツトム(1979-1987) 第9章――「組版」の文化圏 電算写植とCTS(1960-1987) 第10章――写植の終焉と書物の最後の光芒(1987-2001) 終 章――星の本 註・参考文献 あとがき 索引
阿部卓也 (あべ たくや) 愛知淑徳大学創造表現学部メディアプロデュース専攻准教授、デザイナー。 1978年生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、東京大学大学院情報学環博士課程単位取得満期退学。 専門は、デザイン論、メディア論、記号論。 フランス・ポンピドゥーセンター・リサーチ&イノベーション研究所(フランス)招聘研究員、東京大学大学院情報学環特任講師を経て、2017年より現職。 主な著作に、『知のデジタル・シフト――誰が知を支配するのか』(共著、弘文堂、2006年)、『デジタル・スタディーズ2 メディア表象』(共著、東京大学出版会、2015年)、『日本記号学会叢書 セミオトポス11 ハイブリッド・リーディング』(共著・企画・編集・構成・装丁、新曜社、2016年)、『いろいろあるコミュニケーションの社会学』(共著、挿画装丁も兼担、北樹出版、2018年)、『デジタル時代のアーカイブ系譜学』(共著、みすず書房、2022年)等がある。 論文「漢字デザインの形態論」で第4回竹尾賞優秀賞受賞。第15回立命館白川静記念東洋文字文化賞教育普及賞受賞。
Reviews
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鉛の活字を写真植字変えた影の人‼️
杉浦康平の功績をもっと評価するべきだ。ただブータン🇧🇹王国の切手をデザインしたことで有名だが、それに止めるべきではない。出版社や活字を扱う職業の人が毎日お世話になっている写真植字の発展にどれだけ貢献したか、を 思い起こすべきだ。
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杉浦康平を通して浮かび上がる写植技術の宇宙
杉浦康平にとって本は一つの宇宙であった、と著者は述べています。それを踏まえて本書のエッセンスをあえてまとめるとすれば、杉浦康平が手掛けた本を「写植の宇宙」として読み解いていく、ということに集約されるのではないか(ちょっと乱暴か)。杉浦の作品群は写植という技術がもつ可能性を凝縮した「写植の宇宙」であるのだから、それを解きほぐしていけば写植という技術が秘めていた襞という襞もまた明るみに出すことができるはずだ、と。 ではなぜ杉浦の作品は「写植の宇宙」でありえたのか。杉浦のデザイナーとしてのキャリアは、たまたま日本における写植技術の隆盛と軌を一にしていた。杉浦は、目の前にあったその新たな技術的可能性から出発しながら、「文字」と「本」をめぐっていったい何が可能であるのかを徹底的に考え抜き、そしてまったく妥協することなくその可能性を十全に作品という形に落とし込もうと格闘してきた。そしてその格闘は、写植技術が発展し、あらたな技術的可能性が開かれるたびに、そのつどその可能性の限界をぎりぎりまで探求するという形で継続されていった。結果として杉浦の作品の歴史は、写植技術の可能性と限界とを時間をかけて濃縮した「写植の宇宙」となった。本書はそのような杉浦像を浮かび上がらせていきます。 そのうえで、本書の中心的な特徴の一つをなすのが、杉浦の作品群ににじりよっていくきわめてマテリアルなまなざし(および歴史的、技術的な補助線)と、その結果として見えてくる作品理解の圧倒的な解像度の高さです。そしてそのように杉浦作品を超高解像度で見ていくと、あら不思議、写植をめぐる技術発展の歴史的うねりのようなものが透かし見えてくる。これがすごい。もちろんところどころで技術についての一般な歴史記述も入ってくるのだけれど、書物全体としては、「写植の宇宙」としての杉浦作品に向けるまなざしの解像度を極限まで上げていくことで見えてくるものとして技術の歴史が位置づいているように見える。うーむ、面白い。。。 この杉浦の写植技術の宇宙では、さまざまな登場人物たちがそれぞれを中心とする重力を発生させています。写研の石井茂吉とモリサワの森澤信夫、また茂吉の娘で写研を継いだ石井裕子の重力はとりわけ強力で、重い。また和田誠や戸田ツトム、中垣信夫や鈴木一誌といった杉浦と近い立場にいたデザイナーたちや、さまざまな技術者たちもそれぞれの重力場をもち、写植技術と対峙しています。技術的な発展を織りなす必然と偶然が交差する地点に、実際に歴史をつくっていった生身の人間を必ず見出していく、というのも本書の大きな特徴の一つです。本書のために行われた膨大な聞き取り取材によって、すでに過去のものとなった写植技術がとても身近に感じられるのです。みんな、よくがんばった(涙) 最後に。デザイナー杉浦康平がつくった「本」のマテリアルな部分へのまなざしの解像度を極限まで上げていった先に写植技術の宇宙を発見していく、という本書のアプローチは、著者自身が研究者であると同時にデザイナーとしてもキャリアを持ち、装幀などの仕事で本づくりにも実際にかかわっている、という経歴や資質も大きく関係しているように思えます。杉浦の技法を実際に再現してみることで検証する箇所などは、まさに自身がデザイナーだからできる手法だという側面もあるでしょう。本書自体の造本にも、デザイナーとしてのこだわりが強く感じられます。それも、デザイナー兼研究者という立場から杉浦康平について本をつくる、という行為を具体的な造本という形で引き受ける、というこだわりです。こんなに手に持ち甲斐のある本はなかなかないはず。間違いない。 写植技術の歴史の可能な書かれ方というのはいくつもあるでしょう。でも、杉浦康平という写植技術の可能性を展開しつくした天才的なデザイナーがたまたま存在し、その杉浦を入り口としてこの著者でしか書けない写植技術の歴史が書かれたという事実は、きっとすごいことであるはず。いや、ほんとに。
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