月岡芳年伝 幕末明治のはざまに
菅原真弓(著)
Life and Works of Tsukioka Yoshitoshi: Between the Bakumatsu and Meiji Periods is a scholarly study tracing the life and work of the ukiyo-e artist Tsukioka Yoshitoshi. Through documentary research and close analysis, it reconsiders an artist often reduced to images of blood-soaked prints.
Work Information
It redraws the last ukiyo-e master as a living figure through documents and analysis.
Published by Chuo Koron Bijutsu Shuppan in August 2018. With 422 pages and 24 pages of plates, it examines Yoshitoshi's life, subjects, compositions, and return to Edo culture from multiple angles.
Review Summaries
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The book is valued for avoiding sensational clichés and building a fuller image of Yoshitoshi through careful reading of sources. Though specialized, it can also be read as a biography.
Book Information
- Publisher
- 中央公論美術出版
- Published
- 2018-09-03
- Pages
- 456 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 15.3 x 3.1 x 21.6 cm
- ISBN-13
- 9784805508541
- ISBN-10
- 480550854X
- Price
- 3960 JPY
- Category
- 本/アート・建築・デザイン/日本の伝統文化/浮世絵・絵巻物
□□第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞(評論等)受賞作□□ □□『美術手帖』12月号にて本書が紹介されました! □□ □□週刊読書人「読物文化」(2018年11月2日付)にて本書が紹介されました! □□ □□『美術の窓』11月号(No.422)にて本書が紹介されました! □□ □□東京新聞書評欄(10月28日付)にて本書が紹介されました! □□ ■■重版出来! ! ■■ 「最後の浮世絵師」とも称される月岡芳年(つきおか・よしとし、1839-1892)。 「江戸」に生まれ「東京」で歿した芳年は、幕末から明治期という未曾有の大転換期に、絵師としてどのように向き合ったのか。 残された資料や作品の精緻な博捜に基づき、客観的かつ立体的に芳年の生涯と画業を描き出す、芳年論の決定版!
大阪市立大学大学院文学研究科教授。学習院大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(哲学)。主な著書に『浮世絵版画の十九世紀―風景の時間、歴史の空間』(ブリュッケ、2009年)。共著に『月岡芳年 和漢百物語 (謎解き浮世絵叢書)』(二玄社 、2011年)、『激動期の美術―幕末・明治の画家たち 続』(ペリカン社、2008年)など。
Reviews
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資料の正確さ
芳年に関する基礎資料だと思います。
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芳年の生きた時代を考察しながら繙く優れた評伝
月岡芳年と言えば誰もが真っ先に思い浮かべるのは「血みどろ絵」ではなかろうか。 だが、その一部の作品群が余りにも衝撃的、且つ生々しい所為で却って芳年が正しく評価されていないように感じるのは恐らく私だけではないと思う…そんな中、芳年の生きた時代を考察し、これまで余り注目されて来なかったジャンルにも目を向けながら改めて「本物の絵師」としての芳年を論じたのが本書である。 本書は先ず「月岡芳年の人物像」に於いてこれ迄の彼の評価を辿ると同時に残された史料を基に彼の生涯も紹介し、次に幕末と言う時代に目を向けて彼の「血みどろ絵」が描かれた背景に迫った上で、明治時代以降の芳年については、新しい分野…即ち、メディアとしての浮世絵に着目しながら、例えば「西南戦争錦絵」や「歴史画」を通して彼の活躍を論じている。 尚「月岡芳年と江戸」と題された最終章では、本書のサブ・タイトルにもある「幕末明治の狭間」という激動の時代を考え直し、「江戸への回帰志向」と「江戸時代に戻れない現実」という狭間の中での芳年の作風が如何なる様相を示したかを紹介しているし、更にはとかく低く評価されがちな彼の美人図についても、この時代の眼を通して再評価している。 そして、同時代に活躍した小林清親と豊原国周、或いは芳年の弟子達にも言及しながら、この時代における芳年の立ち位置を確認して本書は幕を閉じており、実に読み応えがあった。 本書の中で特に認識を新たにしたのは歴史学にしても美術史にしても、現代の価値観で量ってはいけないという事であろうか…例えば「血みどろ絵」については、芳年が精神を病んで亡くなった事実とも相俟って、まるで芳年独特の作品でもあるかのように捉えられてしまうが、実はこうした残酷な作品は彼の専売特許ではない。 即ち、この時代は内戦もあり凄惨な事件もあった為、恐らく芳年もこうした光景を目にする機会もあったであろうし、正しく“幕末明治”に生まれるべくして生まれた作品だったのだ。 そして、芳年の美人画が何故か低評価である事についても、そもそも“美人”の基準は時代に依って変化する事を考えるべきであり、それを無視して「歌麿こそが美人画の最高峰」という後世の価値観を基準にすれば公正な評価は出来ない事は明らかであろう。 確かに、時代が移り代わろうとも不変の芸術もあるかもしれない…然しながら、浮世絵は世相と共に変遷する芸術であり、また時代を敏感に反映してこその浮世絵でもあるのだ。 上記に挙げたのは本書の中のほんの僅かな部分だけではあるが、全章に亘って常に彼の作品と時代とを対比させながら丁寧に分析する姿勢は真摯でもあり、これまで語られて来た“月岡芳年の虚像”を覆してくれると言っても過言ではないと思う。 芳年の作品に溢れる迫力には前知識や言葉はいらないと思うかもしれないが、やはり彼の作品の魅力の全てを知るには、冷静に時代背景を分析する必要がある。 本書を読めば、成程、月岡芳年が人気絵師として時代を一世風靡した理由も良く解るし、何よりも誤った解釈を正す事が出来ると同時に、新たな魅力を再発見出来るので、幕末明治の時代を駆け抜けた一絵師の生きた証としても本書を推薦したいと思う。
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浮世絵の素人でも一読の価値あり
ともすれば「血みどろ絵」で片づけられてしまう月岡芳年の人生を、膨大な資料収集と緻密な論理展開で解き明かした意欲作。芳年の画風が幕末から明治という動乱の時代背景の影響をどのように受けていたかが良く分かる。浮世絵の素人でも一読の価値がある名著。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作品。
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基礎的な研究
芸術選奨新人賞受賞作。著者の単著としては二冊目で、年齢は正確には分からないが50歳を超えているだろう。私は芳年の武者絵が好きなので精密に読んで面白かった。ただ死因を精神病としているが、精神病は死因にならないので、そこは正確には不明とすべきだったろう。あと最初のほうで、近年まで生きた人物について「平成六年没」などと元号だけで書いているが西暦で書いて欲しかった。また学術論文らしく客観的な記述を心がけているようだが、250pで久隅守景の「納涼図屏風」の芳年による模倣に触れたところで「一日の労働を終えて、夕涼みをしながらほっと一息入れて飲む酒は、今も昔も変らぬ楽しみだが」とあるのは、酒を飲まない人のことを閑却した主観的描写になっている(だいたいこの絵は飲酒していない)。また271pに、芳年の画題が「江戸」に生きる市井の人びとのほぼすべてが、テキストを読まずとも分かる、としているのは、近世庶民のリテラシーを高く見積もりすぎではないか。また275p「偐紫田舎源氏」を「幕末」のベストセラーとしているが、あれは「幕末」ではない。実際299pで「安政以降の幕末期」と自分で書いている。また317p、芥川龍之介が芳年の絵を見て眠れなくなったというエピソードを「出典不明」として書いているが、出典不明なら著者はどこで見たのか、見た場所を書いておかないと探索もできない(これは『太陽』1970年1月号の高橋誠一郎と吉田漱の対談に出てくる。338pに、それまで三十余の国(藩)に別れて暮してきた人々を、とあるが、旧国は三十余だが藩は三百あるので正確に記すべきだったろう。 しかし、芳年に関するブームが起きたのが三島由紀夫の1968年の文章以来で、それがマニエリスムや幻想美術のブームと重なるという指摘は、江戸幻想の始まりに重なるので面白かった。