GA文庫大賞 じーえーぶんこたいしょう
第3回(2011年)
受賞者
10名望公太の『Happy Death Day 自殺屋ヨミジと殺人鬼ドリアン』は、望みどおりの死を用意する「自殺屋」と殺人鬼をめぐる、黒いユーモアを帯びたライトノベル。死を扱う重い題材を、会話の勢いと奇妙な人物造形で読ませる。
理想の死を売るという異様な設定が、軽妙な会話の奥に黒い切実さをのぞかせる。
中谷栄太の受賞作「トランスポーターA+」は、刊行時に『おとーさんといっしょ! 少女とメガネとハイペリオン』へ改題されたSF色のあるライトノベル。少女、メガネ、ハイペリオンといった要素を組み合わせ、押しかけヒロインと主人公のやりとりを中心に展開する。
受賞作は改題され、少女とメガネとハイペリオンが交差するにぎやかな物語として刊行された。
夏希のたねの「妖怪恋戦」は、刊行時に『あやかしマニアックス!』として展開された妖怪ラブコメ。恋の魔法で人外の美少女たちに迫られる少年が、本命の少女との距離を縮められないまま騒動に巻き込まれていく。
モテる相手は人外ばかり。本命へ届かない恋が妖怪騒動を呼び込む。
火海坂猫の『彼と人喰いの日常』は、人喰いの妖と契約してしまった高校生の板挟みの日々を描くライトノベル。助かる代償として月ごとの犠牲を求められる不穏さと、自称婚約者として学校生活へ入り込む妖の振る舞いが同居する。
人喰いの妖との契約は、少年の日常を恋と恐怖の板挟みに変えてしまう。
笠原曠野の「パンピー・ナ・ブラカマン」は、刊行時に『ブラパン!』として展開された異能バトルコメディ。普通の女子高生を目指す天海亜弓が、拳で発動する特殊能力と残念な言動のせいで、望まないバトルへ巻き込まれていく。
普通になりたいのに、拳と能力が彼女をまた騒動の中心へ押し戻す。
初美陽一の「フリョーメシア!」は、不良を目指しているのに真面目さがにじみ出てしまう高校生・荒鞍悠馬を主人公にした勘違い系青春ラブコメ。舎妹を名乗る少女や委員長ら、ずれたヒロインたちが集まり、理想の不良生活は別方向へ転がっていく。
不良になりたい優等生のまわりに、なぜか奇妙な女子ばかりが集まってくる。
森田陽一の『双子と幼なじみの四人殺し』は、美しい双子と幼なじみの少年が、飛び降り自殺をきっかけに不穏な事件へ踏み込む学園ノワール。愛憎、依存、殺人の影が、日常の近さの中でじわじわと濃くなる。
双子と幼なじみに囲まれた日常は、飛び降りの瞬間から歪みはじめる。
花花まろんの「アテレコ」は、第3回GA文庫大賞前期の期待賞作。選考結果では期待賞として確認でき、後に著者の刊行作『声優のたまごが、俺の彼女だったようです。』との関連が示されるが、受賞作そのものの単独書籍化は確認できない。
声を当てる行為をめぐる題名から、演じることと恋愛の距離がうかがえる期待賞作。
九守紳次の「異郷のおまえら」は、第3回GA文庫大賞前期の期待賞作。選考記録では三次選考通過から期待賞に至った作品として確認できるが、単行本・文庫としての刊行は確認できない。
異郷に置かれた者たちを想起させる題名だけが、未刊行作の輪郭を残している。
『恋のなんたるかを教えてやろうじゃないの』は、刊行時に『俺はまだ恋に落ちていない』へ改題された学園ラブコメディ。高校生の赤井公が、性格も立場も異なる姉妹の恵衣美と詠羅に出会い、板挟みの関係のなかで恋と距離感を探っていく。
恋に落ちていないと言い張る少年が、姉妹との出会いを通じて自分の心を測り直していく。