パロール・ジュレと紙屑の都
『裏閻魔』は、中村ふみによる歴史幻想小説。人物の選択、関係の揺れ、場面ごとの緊張を通じて、読者を作品世界へ導く。
作品情報
『裏閻魔』は、歴史幻想小説としての輪郭と受賞作らしい焦点を備えた一作。
『裏閻魔』は、中村ふみによる歴史幻想小説。受賞対象となった中心的な題材を軸に、登場人物の行動や状況の変化を追う構成で読ませる。
レビュー要約
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設定や人物配置の印象を評価する声があり、題材の強さと読み味の個性が注目されている。
書籍情報
- 出版社
- 角川書店
- 発売日
- 2010-03-27
- ページ数
- 396ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784048740432
- ISBN-10
- 4048740431
- 価格
- 815 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
キノフという町では、言葉が凍りついてパロール・ジュレと呼ばれる結晶になるという…。その神秘を古書の紙魚となって追究する諜報員、謎を追う刑事、言葉の解凍士。言葉を巡る壮大なマジカルファンタジー。
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作と装丁の仕事を続けてきた。著書に『つむじ風食堂の夜』『フィンガーボウルの話のつづき』『小さな男*静かな声』『圏外へ』など。
レビュー
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なぜ言葉が凍るのか?
パロール・ジュレと呼ばれる凍った言葉を巡る物語。 言葉が凍りついて結晶になるという北の街、キノフ。何故この街では言葉が凍るのか? その謎に魅せられて次々と現われる登場人物達。 書物を渡り歩くフィッシュと呼ばれる諜報員、彼を追いかける刑事、水晶の目を持つ謎の女性。 凍った言葉を解く4人の『解凍士』。 彼らの過去や思惑が複雑に絡み合い、繋がり合って、最後に1枚の美しい織物が出来上がるようなストーリーに わくわくしながら読み進めました。 吉田篤弘さんの描く世界は、ファンタジーとリアルの狭間にある、どこかにあるようでない街。 すぐそばにあるようで、遠いどこかのようで、懐かしい過去のような、未来のような不思議な世界です。 そしてこの作品には、凛とした透明さと、生きていく上で生じる生臭さ、とのどちらをも感じます。 この2つは一見相反するようで、でも光と影のように切り離せないモノなのだろうと思います。 是非、パロール・ジュレの謎を追いかけてみて下さい。
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ミステリー色もあり
キノフという街では、言葉が凍りついて結晶になるという その不思議な現象をめぐって交錯する、さまざまな者たちの思惑 紙魚となって時空を超え書物を渡り歩く諜報員・フィッシュ 彼を追う刑事・ロイド 凍った言葉を解く4人の解凍士 秘密を握っていると思しき水晶の眼の女・レン 分厚いです 吉田さんには珍しいミステリー仕立てですが流れるような筆致に引っ張られるようにするすると読めました その昔、テロ行為が頻発し、それまでの安定した暮らしが奪われた街・キエフ 東欧がイメージされます 誰かが何気なく口にした独り言が凍りつく 時を超えて解凍士の手により再生された独り言には様々な背景や意味があるようです 解凍士はある特殊な技術を使って凍りついた結晶を解かすわけですが、再生された言葉を推理し読み解く詩人でもあるのです フィッシュに近づいてきたココノツの正体 刑事・ロイドの過去 レンは生きているのか? パロール・ジュレという現象についての偽の報告書をまとめるフィッシュ ミステリーに関しては色々注文をつけたいところはありますが吉田さんは本来そちらのプロではありませんのでオマケ感覚で(^_^) 最後の最後に示されるパロール・ジュレの真実 自分の本音を改めて自覚したとき、人は自らの人生に向き合うことが出来るのかもしれません 読後は どこか遠くの国を旅してきたような気分
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言葉を巡る冒険の先に有るものは…
〈離別〉という災厄を経て小国家が分立する世界(EU崩壊後の欧州なのか?)にある街キノフ。 そこでは独り言が凍ってしまう(タイトルは「凍った言葉」の意を持つ仏語)不思議な現象が。 それを探る為に諜報員として送り込まれた主人公。 彼は本の中に入り込むことで、本の中に居る人と同期し、己を変えることが出来るという能力を 持っている… 「言葉が凍る」(寒いダジャレではありません(笑))、欧州っぽい街を舞台したストーリー 登場人物の機微や世界観を伝える筆力等が見事に昇華して、独特の世界観を構築することに成功 しています。久々に小説を読んでいて、次のページが気になりましたし、先述したように世界観を しっかり構築できているので、(これは読者それぞれのイメージになるでしょうが)絵や音 更には登場人物の声が次々と脳内で再生されます。 冒険&謎解き物の体裁を取っているので、ネタばれ防止のため仔細は省きますが、個人的には 言葉を巡る冒険心の揺れ、そして言えぬ○○を描いた一作かと。 パロール・ジュレの秘密、そしてその先に有るものを御確認下さい。 附:出来るならば紅茶とケーキやクッキーなどをお供にして読み進めると、より世界に入り込める かもしれません。それこそ主人公のように…
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うーん
題名と、紙魚となって本伝いに移動する諜報員…という言葉に惹かれて手に取りました。 本が登場する本が好きなので。でも期待はずれ。 が、ストーリーはあってないようなもので面白くなかったです。 文章を楽しむ本かな?独特の言葉遣い等はちょっと面白いかも。
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これは、誰の物語なのか
言葉が凍る国キノフ。 <離別>によって分断された国々の間で、ゲームのごとく繰り返される諜報活動。 冒頭クールに語るのは、凍る言葉「パロール・ジュレ」の秘密を探る諜報員、11番目のフィッシュ(紙魚) と呼ばれる男。 フィッシュとは、本の中へ「潜航」し、字間を彷徨い、登場人物とコンタクトし、姿を借りて(奪って)本の外へ「再登場」(この仕組みが既によく分からない)。 キノフで暗躍する人々の怪しさ、複雑さ。 パロールジュレを解き放つ「解凍士」たちの孤独と誠実さ。 彼らが語る短いセンテンスは、お芝居のよう。 そんなファンタジックなディティールの繰り返しかと思いきや。 辣腕刑事が語るとき。 諜報員が語るとき。 散漫なこの世界が、ひとつの歴史を持った現実だった、と気がつく。 人々には思惑があり、目的があり、あれやこれやは手段だった。 それまでも不穏な歴史は語られていた。 翻弄されてきた人々の歴史は共通していた。 個々の登場人物の過去や述懐は、キノフの史実に沿っていた。 さぁ、これからどうなる? ストーリーも後半に入って、そんな高揚感に包まれました。 面白く、セツナイお話です。
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その手触りは押井守の映像世界を思わせる
旧ソ連邦、というより東西冷戦時の東欧の雰囲気を漂わせた、 架空の土地キノフを舞台としたマジック・リアリズム的世界。 しかし、ただモノトーンで冷たいという印象だけではなく、 どことなく血が通って暖かいのは、クラフトエヴィング商会= 吉田篤弘の作品ならではというところ。 本作は他の作品には見られないミステリー的構成と、 言語と実存を巡る謎追いが前面に出ているため その手触りが押井守の映像世界を思わせる。 ただ作者がミステリー的構成に慣れていないせいか、 謎解きが作品を引っ張る力はやや弱く感じる。 とはいえ暗い裏通りやトンネルの中のビヤホールの情景、 パロール・ジュレをはじめとした鉱物的小道具の描写は まことスタイリッシュで美しい。(もちろんそれを スタイリッシュと取るか、フェティッシュと取るかにより この作者と本作の評価は二分されるのであるが。)