書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 1997-08-08
- ページ数
- 290ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.8 x 1.1 x 14.8 cm
- ISBN-13
- 9784061975781
- ISBN-10
- 4061975781
- 価格
- 1650 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
《わたしはFをどのように愛しているのか?》との脅えを、透明な日常風景の中に乾いた感覚的な文体で描いて、太宰治賞次席となった19歳時の初の小説「愛の生活」。幻想的な究極の愛というべき「森のメリュジーヌ」。書くことの自意識を書く「プラトン的恋愛」(泉鏡花文学賞受賞作)。今日の人間存在の不安と表現することの困難を逆転させて、細やかで多彩な空間を織り成す、金井美恵子の秀作10篇。
レビュー
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世界観がすばらしいです。
文章が素晴らしく、内容も抽象画のようで世界観が素晴らしいです。
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カミソリの刃のような鋭さ
初期短編集ですが、「夢の時間」から「プラトン的恋愛」まで「不思議の国のアリス」のオマージュで読めると思います。「愛の生活」が圧倒的に鋭く、続いて良い作品・普通の作品も入っています。 「愛の生活」ですが、これは「Mrs. Dolloway」のイメージでしたね。彼女ほどセレブじゃなくて、飛んでるつもりの普通の主婦だけど。明大前から新宿にかけての怠い1日が描かれます。鋭いカミソリの刃のようなディテイルの積み重ね。心理描写を細かいディテイルに委ねる。読んでて知らない間にカミソリの刃で切れてます。温度が低い乾いた文章が続き、余りに鋭くて最初は気が付かないけど、血がじわっとしみだして。そんな雰囲気です。 「黄金の街」が、昔の香港の泥臭い生活臭を感じて良かった。The world of Suzie Wong という映画を思い出しました。金井さんは日本の街のつもりだったかも知れませんが。「夢の時間」はなぜか甲州街道を走ってたらウサギの穴に落ちてしまった、という生活。不思議でふわっとした雰囲気。良かったです。細かいけど、136Pの「チシャ」がわからなかった。レタスと違うのでしょうか。「兎」も想像の中で血だらけになって、でも静的な描写で熱さはなかったね。 時間が経っているので、ファッションリーダー的な狙いは理解できなかった。こういう、虚無的な、冷静、冷血な雰囲気って1969年頃は恰好良かったんでしょうね。金井さんの本をしばらく読んでみます。
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抗い難い魅力
金井美恵子の描く世界は残酷で美しい。この短編集に収められている作品はどれも素晴ら しいが、中でも特に「兎」が私のお気に入りだ。 庭で飼っている兎を殺して食べる父と娘。娘はやがて捕食者側の立場から、食べられる兎 へと同化してゆくのだが、その狂気とも呼べる世界が何故か異常に魅力的に見えるのは、 稀代の才能を生まれ持った作者の筆の妙か。 ストーリーや筋書きを超えた凄みがこの作家の作品には潜んでおり、それが今読んでもま ったく古臭さを感じさせない所以なのだろう。歴史に篩いをかけられても、なお後世に残 る秀作ばかりが集められており、小説好きには是非とも手に取ってもらいたい。 村上春樹と同じ匂いの「寂しさ」が全体に漂っていることから、同氏の作品が好きな方に もお勧め。
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初めての金井美恵子
金井美恵子という人の小説を読んでみたくて、タイトルに惹かれて2、3年前に購入し、半分くらいまで読み進め放置、また最近読み始め、ようやく読破しました。読書が快調でなかった理由は、1〜7作品目までは何となく文学少女の自意識溢れる世界観を感じて、やや退屈だったからです。しかし最後の2作品が大変面白く、夢中で読み進めました。小説を書く、という行為自体が小説の中に組み込まれており、書き手の自意識の扱い方が大変明晰で、かつそれが物語としてとても面白かったです。他の収録作品のいくつかにもそのテーマのものがありますが、何となく物語の主人公の自意識過剰に感じられました。(その中では「愛の生活」が、友人からの手紙の文面が紙幅を取ることで劇中劇的な効果を上げているなど、出色だと思いました。また、現代詩のような強いイメージの世界によって構築された分類の小説の中では「森のメリュジーヌ」が、この分類の小説のこの作者の特長が端的に表れた良作だと思いました。) ともあれ、「アカシア騎士団」と「プラトン的恋愛」。この2作を読んで、もっと金井美恵子を読んでみたいと思いました。
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美恵子さんとの幻のデート
人生には謎がある。私が早大第二文学部一年の時クラスメートジャズ研究会のピアニストのNが金井美恵子という新人作家を紹介してやるからデートしろと愛の生活を貸してくれた。彼の話ではチンチクリンな顔してセーラー服着てやんの。本の著者紹介見たら私より一歳年上である。デートは遠慮した。金井さんにはよろしく言い訳してよ。Nは私が東大闘争で逮捕起訴され半年間の拘置所暮らしから保釈で大学のバリケードに戻った時は姿が消えていた。面会にも来ないから私も忘れた。二度と会ったことない。謎はNが何故金井美恵子を知っていたのかだ。殿山たいじのエッセイに当時金山がセーラー服を着ていたという記述がある。 Nの話は嘘ではない。篠山紀信撮影の写真でも丸顔である。最近金井美恵子全エッセイを読んでいたら当時目白駅前のアパートに住んでいたので早稲田の古本屋によく行ったという記述がある。私は近所の南池袋に下宿して定期は目白から高田馬場である。お会いした可能性が大きい。寺山修司によれば実現しなかったことも歴史だそうだ。金井さんはジャズ好きではない。殿山たいじはジャズファン。太宰治賞で金井美恵子を強く推したのは石川淳である。人生は解けない謎がある。
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セーラー服に毒饅頭
私は早大第二文学部英文科1年のとき(1968年)から金井美恵子の名前を知っている。クラスメイトで親友のNがおもろい(彼は関西で育ち東京在住)女がいるで、お前に紹介してやるよ。と言って「愛の生活」を貸してくれた。関西育ちのNが何で群馬県高崎市の金井と知り合いなのか?忘れてしまった。「ちんちくりんな女でよ、セーラー服きてやがんの」女子高生なのか?本の経歴を見たら1947年生まれで私より1歳年長である。Nはお公家さんみたいな男でピアノを弾きブラスバンドでトロンボーンを吹いていた私を誘ってジャズ研に入った。私は入部書類を貰ってきたが結局はいらなかった。自信がなかったから。金井のセーラー服は名脇役でジャズ好きの殿山泰司の「証言」もある。役者の殿山がなんで金井と知り合いなのかもわからない。27年くらい前「ロッキンオン」で出した新進作家のインタビュー集(村上春樹と竜、高橋源一郎もいたかな。)に金井美恵子も入っていたので読んだら「性格の悪そうな女」だという印象をもった。あん時会っていなくて良かった。Nは私が東大闘争で逮捕され1969年7月に保釈で出たときには大学から姿が消えていた。彼の消息は誰も知らない。金井美恵子は健在である。
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そうやってただ読むだけで幸せ。
金井美恵子が書きつけた言葉を味到するには、軽く声に出して読んでみるのがよい。そうすると、何よりもまず言葉の連鎖がただただ心地よいということを実感するのだが、その心地よさを感じながら、私はじっと流れに身を浸す。連なる語を追ってゆく、その時間の流れにじっと身を浸す。流れには逆らうことはしない。一つ前の文章を読み返したりするのは、どうしても間の抜けたような感じがする。ただ目の前に広がる情景を、それが文章から立ち現れてくるままに、味わい尽くしたいと強く思う。私はそれが楽しくて、金井美恵子の小説を何度も何度も読み返すのだ。 ーー この本は、私にとって最初の、そんな金井美恵子体験だった。おなじ講談社学術文庫には『 ピクニック、その他の短篇 』も入っていたのだが、いまは(2015年2月6日現在)絶版状態になっているようで残念だ。何より「桃の園」が好きだったし、堀江敏幸の解説もすごく良かったのに。(これで堀江ファンにもなってしまった。)
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残酷で美しい少女小説
舌を巻く、とはこのことだろうか。金井美恵子の処女作「愛の生活」のこの新鮮さは何だろう。これは太宰治賞の佳作となった彼女の文壇的なデビュー作だが、このとき氏はまだ十九歳だったという。 何より新鮮なのは、その何気ない日常の細部に目配せされた視線の緻密さで、台所、食材、煙草、コーヒー、ノート、ペン、手紙、特に食べ物に関しての執拗な描写が出てくるが、普通なら、これら小説の小道具でしか有り得ない多くのさりげない日常のディテールが、まるで壮大な作品の主題のように思えてくるから、不思議である。 ここには、金井美恵子がデビューしてから十三年ほどの、一九七〇年代までに書かれた主要な作品が収められているが、作品が紡がれるごとに、その批評的精神が突き詰められていく経緯が、何より凄い。 〝書くということは私の運命なのかもしれない〟という極めて美しい冒頭からはじまる「兎」は彼女の初期の代表作であり、さらに、その小説は実は私が描いたのだ、と作者が告発される「プラトン的恋愛」も、やはり彼女の重要な作品だ。 他にも、金井美恵子という人は短篇の名手であり、魅惑的な作品が数多いのだけれど、これらだけでも十分彼女の豊かな才能を窺うには申し分ない。この作品で興味を持った人は、その後のやはり彼女の代表的短篇を集めた『ピクニック、その他の短篇』をお勧めしたいし、また、〝目白四部作〟なる通俗小説も楽しいし、画期的な長篇『岸辺のない海』というのもある。
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