作品情報
黒い裾の揺れに、暮らしの重さと女たちの心の陰影がにじむ。
『黒い裾』は、幸田文の小説作品で、第6回読売文学賞の受賞作として記録されている。講談社文芸文庫版では一冊の小説として刊行され、ISBN 9784061984974 が確認できる。衣服や身体の感覚を通じて、戦後を生きる女性たちの暮らし、家族との距離、言葉になりにくい感情を端正に描き出す作品である。
レビュー要約
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幸田文らしい生活の細部への観察と、女性の心理を過度に説明しない文体が評価されている。戦後小説としての時代感よりも、身近な暮らしの中にある緊張を読む作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2007-12-10
- ページ数
- 224ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.8 x 0.8 x 14.8 cm
- ISBN-13
- 9784061984974
- ISBN-10
- 4061984977
- 価格
- 1430 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
千代は喪服を著(き)るごとに美しさが冴えた。……「葬式の時だけ男と女が出会う、これも日本の女の一時代を語るものと云うのだろうか」――16歳から中年に到る主人公・千代の半生を、喪服に託し哀感を込めて綴る「黒い裾」。向嶋蝸牛庵と周りに住む人々を、明るく生き生きと弾みのある筆致で描き出し、端然とした人間の営みを伝える「糞土の墻」ほか、「勲章」「姦声」「雛」など、人生の機微を清新な文体で描く、幸田文学の味わい深い佳品8篇を収録した第一創作集。 ◎出久根達郎ーー自分をダシにして、巧みな虚構の世界を築く。エッセイ風小説、とでも称したら適切だろうか。描写が小説のそれでなく、エッセイの筆致なのである。大体、幸田作品の書き出しが、エッセイ風の文章である。身近な事柄の説明から、始まる。いつの間にか、仮構の世界に、読者は誘いこまれている。そして、結びの文章は、これは完全に小説のそれである。――<「解説」より>
レビュー
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Great book
Good quality of the paper, easily readable.
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小説家幸田文の主人公「幸田文」
解説で出久根達郎氏が「ういういしい幸田ファン」と題して書かれているが、私自身も全く同じ錯覚をしていたのかも知れません。 幸田文と言えば、小説家と言うよりはエッセーイストの印象の方が遙かに強いものがありました。「流れる」を初めとする長編の何編かを除けば、すべてエッセーであり、露伴の周辺、死後は自分の身の回り、そして自然への観察力の鋭さを感じていました。 ところが、この「黒い裾」では、一編目の「勲章」はその流れで読んだのですが、二編目の「姦声」で驚いてしまいました。何と「幸田文」が強姦未遂に会うのです。 それでも、「雛」「髪」「段」あたりまでは、不可解な気持を持ちながらも、今まで通りの読み方をしていました。 しかし、終盤に入って、「糞土の墻」「鳩」「黒い裾」に至っては、主人公の名前も違い、これは「小説」なのだと思わざるを得ませんでした。 と言うことは、この「黒い裾」全体が、「小説」であり、ひょっとすると、今まで読んできた幸田文の作品の多くも、「幸田文」を主人公にした「小説」ではないかという気がしてきたわけです。そこへ、この解説文に出会い、納得です。 それにしても、ここまで文庫化されているほとんどの作品を読んできて、それに気づかなかったとはです。 タイトルが「黒い裾」という事もあってか、幸田文の作品の中でもちょっと異色な作品群で、ブラックな感じのする作品が多いような気がします。 それでも、幸田文の語り口や言葉遣いは全く変わりませんし、観察眼の鋭さは圧倒されるものがあります。 オードリー・ヘプバーンについて、非常に古典的な日本人によく似ているというところでは、確かにそうかも知れないと思いましたし、だから、日本人に人気があるのかなとも思いました。
関連する文学賞
- 読売文学賞 第7回(1955年) ・受賞