日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
破線のマリス

江戸川乱歩賞

破線のマリス

野沢尚

テレビ報道の現場を背景に、映像と真実のずれを追うサスペンス。内部告発のビデオをきっかけに、主人公が自らの罠へ入り込んでいく。

報道真相サスペンス

作品情報

映像が真実を映すとは限らない。

講談社の文芸単行本として刊行された江戸川乱歩賞受賞作。報道の倫理と視覚表現の危うさを、緊張感のある物語に落とし込んでいる。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
1997-09-01
ページ数
315ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784062088633
ISBN-10
4062088630
価格
2090 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第43回江戸川乱歩賞受賞作。 テレビ報道の内幕を抉るサスペンス最高傑作! 首都テレビ報道局のニュース映像編集ウーマン、遠藤瑶子。彼女は、客観的な真実などこの世に存在しない、映像を操る者の主観的真実こそが視聴者を動かすのだと言う信念を持つ。報道被害すれすれの巧みな映像モンタージュを繰り返す瑶子のことを報道局の上司は苦々しく思っていたが、その映像編集が番組の視聴率を上げているのも事実だった。 ある日、瑶子は春名と名乗る郵政官僚から内部告発のビデオテープを受け取る。先日の弁護士転落事故は、実は郵政省内の汚職に絡んだ殺人だという内容だった。瑶子はこのテープをいつものように編集し、上司のチェックをかいくぐって放送したが、その中で「犯人扱いされた」として麻生という郵政官僚が首都テレビに抗議にやってきた。 彼は何者かに弁護士殺しの罪を着せられたのだと主張する。調べれば、春名は郵政省に存在しない人間だった。真実はどこに存在するのか?瑶子は少しずつ自らの罠にはまっていく。

1960年、愛知県生まれ。日本大学芸術学部卒。1985年、テレビドラマ「殺して、あなた」、映画「Vマドンナ大戦争」で脚本家デビュー。その後、映画「その男、凶暴につき」、ドラマ「恋人よ」など、多くのヒット作を手がける。

レビュー

  • あっと驚く結末

    読み出しの初め頃はあまり面白くない感じだったが、後半に入り予期せぬ展開に魅かれていった。 思わぬ展開にどんどん引き込まれていく納得の1冊である。

  • ぞっとする

    不快感が伴う作品です。何がそうさせるのかわかりませんが。 マスコミの過熱に伴う被害は今やみなが知っています。 その「種あかし」でしょうか。 作り出された映像に「事実」を見てしまう、見ようとしてしまうことの恐ろしさ。 クライアントである私達視聴者はきっとだまされたがっているのでしょう。 ラストにもう少し救いがあってもよいのではないかと思ってしまいました。 最初に読んだのは、かなり前で「この展開には無理があるのでは?」 と思った箇所も、今こうして読み返してみると「あり」に思えるのがぞっとします。 野沢氏は先を先を見てらしたのでしょうか。 早すぎる死を改めて惜しまずにはいれません

  • 切実にKindle化を願う

    私にとって、最高の本 ほんとにほんとに切実にKindle化していただきたい

  • スッキリ感はいまいち

    謎がすべて解けていくスッキリ感や納得感はいまいちでした。 しかし、続きが気になるような構成にはなっていたように思います。 ミステリと報道がどうあるべきかという二点が軸になった作品であり、 報道にかかわる人はより楽しめる内容だったのかもしれません。 またいい意味でも悪い意味でも、すべてが明らかになるわけではないので、 その部分を自分で考えるのもおもしろいのかもしれません。 もし、ドラマ化するなら、主人公は綾瀬はるかに演じていただきたいです。

  • ニュースを鵜呑みにしてはいけない。

    主人公・遠藤瑶子は首都テレビの看板ニュース番組「ナイン・トゥ・テン」の映像編集者。 映像を切り貼りし、視聴者に先入観を与えるような、虚実曖昧だけど刺激的なニュースを作っている。 郵政省の官民癒着の内部告発とされる持込みのテープを、編集して番組で流した所から始まる、 一人の郵政官僚の転落と、同時に遠藤自身にも降りかかる災厄。 絶望的なラストに凹まされます。 結末を知ってて読んでも、ボタンが掛け違うようにずれていくストーリーに背筋が寒くなる感じ。 映像ひとつで世論を動かしたり、人を破滅させたりが簡単に出来ると思うと、すごく怖いし、 マスメディアの言う事を鵜呑みにして、踊らされるのは本当にバカみたいだし格好悪いなって思う。 でも世論ってそういうものなんだよなー。 メディアに流されずにいろんな情報を吟味して、きちんと自分で考えることの出来る大人が増えるといいなという思いを込めて、たくさんの人に読んでほしい作品です。

  • メディア論の入門書としても

    第43回江戸川乱歩賞受賞作。 実は先に映画を見てしまった。 そこそこの出来だったのだがいくつか納得できないところがあって おそらくそれを原作は解決してくれるだろうと。 あたり。 監督官庁にけんかを売れるような骨のあるテレビ局はないよね。 だから被害者には一介の市井の人を当てるとより報道による人権の侵害を効果的に描けるのではと思ったのだけど。 考えてみたらそれじゃこの作品が成立しないや。 テレビの裏側 報道の裏側 そして監督官庁との力関係。 (だってテレビが免許事業で郵政の許認可が必要だってことも知らない人結構いるもんね) こうしたことってやっぱりこの作品の加害者と被害者の組み合わせじゃないとでてこない。 放送法や免許の更新についてもやさしくかつ流れをそこなわないように説明してくれていてそれもマル。 5W1H FOR WHOM FOR WHAT の くだりなんかは そのままぼくらの日常のどんな事柄の分析にも使えそうだし。 今はやりの『負け犬の遠吠え』を思わせるような主人公の描写もいい。 留守電のランプに孤独からの救いを求めるところなんかね。 被害者と加害者がめまぐるしく(はちょっとオーバーかな)入れ替わって そこではじめて知る感覚に愕然とするあたりもいいし。 何よりテンポのある文体だから読みやすい。 さりげなくはじめの方の局内の情景描写なんかもさすがに内情を知っている人だなあと。 純粋なミステリーとしてはどうかな というところもあるけれど。 メディア論って避けて通れないし、だったら最高の入門書のひとつとしてこいつをお勧めしたいな。

  • 内部告発によって、追いつめられていく

    報道番組ほどむつかしいものはない。編集者の主観がどうしてもはいるからだ。 遠藤瑤子という女性が、主人公。 タフで、視聴率のとれる編集者。「想像力と勇気」と励まされる。 麻生公彦 郵政官僚。バランスを崩している生活。器物を破損する。 やらせとは、どこまでやらせなのか? ひとつの罠としての、内部告発。

  • サスペンスの衣を着せた自らの毒

    中盤から読むのを止めることができなくなり一気に読んだ、というか読まされた。この話しの主題は、テレビとかメディアに対する批判であり視聴者への警告ということになるのだろう。確かに読後のニュース番組に対する見方はちょっと変わった。私は、主人公の心理描写に驚いた。現実と幻想が入り混じった感覚というのは、それを文字にするのは難しいし、普通しようと思わない。それを見事にやっている作者の感覚の鋭さはすごい。それだけの感受性を持っているがゆえに自らの命を絶つということになったのだろうと想像する。自分が温めてきた毒をサスペンスの衣を着せて吐き出した感じさえする。

関連する文学賞