作品情報
伝記の空白を、作品の行間と時代の声から鮮やかに埋めていく西鶴論。
講談社刊、のち講談社文芸文庫。富岡多恵子が、伝記の少ない西鶴を作品の行間と同時代の言説から読み解き、作家が生きた時代と場所を臨場感をもって描く評論。
レビュー要約
-
西鶴の実像を作品と時代資料から探る手つきが評価されている。研究書でありながら、人物の気配を読み物として浮かび上がらせるところに魅力がある。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2004-10-01
- ページ数
- 221ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062126175
- ISBN-10
- 4062126176
- 価格
- 2830 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/古典/日本の古典/近世文学/井原西鶴
野間文芸賞作家が小説家西鶴を描く傑作評論商都・大坂に生き俳諧師から浮世草子「作者」となった井原西鶴が描いた、世間と粋と色の有様。鋭い批評意識と深い共感を込めて描かれたかつてない井原西鶴論。
レビュー
-
醒めた不思議なトーンと視角
著者にはこの作品の前に「好色一代女」と「好色五人女」の現代語訳を取り上げた作品があります。 富岡多恵子の好色五人女 (わたしの古典16) その作品から20年後に出た作品ですが、その後の著者の成熟を反映するかのように、タイトルが示唆するように不思議なでも何とも言えない雰囲気を醸し出した作品に仕上がっています。まず最初に当時の(?)大坂の地図が出てきてのっけから驚かされるのですが(そもそも私はこの文庫版ではなく、ハードカバーで読んだのですが、ハードカバー版は表紙が碁盤の目のような江戸期の大坂の町が出ている地図なのです)、その狙いは非大坂人にはわかりにくく、中身は必ずしもこの地図を縦横無尽に駆使した作品ではありません。 作品は多角的な側面から西鶴という人物そしてその時代が政治、経済、風俗を含めて取り上げられていきます。「世界の偽かたまって美遊」の章にいたっては近松の存在と役割にまで筆はすすみ「とんでも本」への世界までも言及されるほどです。でもやはり中心となるのは、時代の象徴としてt路偉あげられる「芝居」と「遊郭」そしてそれに関わる金ということになるのでしょうか。著者は淡々とこれらの悪所の存在と構造を、大上段に現代のイデオロギーから暴き立てるというよりはあるがままに解き明かしていきます。西鶴の作品をもう一度味わった後で再読したほうがいい作品なのかもしれません。
関連する文学賞
- 大佛次郎賞 第32回(2005年) ・受賞