渇いた季節 (講談社文庫) (講談社文庫 ろ 10-2)
『渇いた季節』は、ピーター・ロビンスンによる作品。マルティン・ベック賞の2001年回で受賞に選ばれ、同時代の文学・出版の中で評価された。
作品情報
マルティン・ベック賞で受賞となった、ピーター・ロビンスンの『渇いた季節』。
『渇いた季節』は、ピーター・ロビンスンによる作品。マルティン・ベック賞の対象作として、作品の構想や語り口が評価された。読者は、ミステリ, 犯罪, 謎を軸に、受賞当時の文学的関心をたどることができる。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2004-07-15
- ページ数
- 730ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784062748056
- ISBN-10
- 4062748053
- 価格
- 340 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学
スティーヴン・キング絶賛! アンソニー賞・バリー賞W受賞の英国抒情派傑作推理 猛暑に焼かれる夏の盛り、干上がった貯水池から、半世紀前に沈められた村があらわれる。村で見つかった白骨死体には惨殺の痕跡があった。このニュースに、人気ミステリ作家のエルムズリーは震え上がり、デビュー前に書いて封印していた原稿を取り出す——。抒情あふれるアンソニー賞、バリー賞同時受賞作。
レビュー
-
翻訳に興醒め
アンソニー賞、バリー賞を同時受賞、スティーブン・キングが絶賛と来れば読まずにはいられないと勇んで買った本作品。しかし、出だしから理解を苦しむ表現につまずき、堪能しきれなかったというのが本音です。例えば、153頁の、主人公バンクスが警察の制服デザインに対する感想をもらすシーンでは「なんだこりゃ、のあだっぽさ。」。頭脳はあるが教養にかけると自覚アリ、マッチョとフェミニズムに板ばさみにされたいまどき40-50歳代イギリス人男性とのセリフにしては、フェミニンすぎやしないか。さらに、191頁の主人公とその妻がどんなにお金がなかったかを示すくだりでは、「出産給付金もなかったころだ。サンドラのやっていた歯医者の受付係には、とにかくなかった」とあり、そもそも何を言いたいのか意味不明!と頭を抱えることもしばしば。日本語の文書の背後にある、英語の文章も全く想像がつかなかった。まあ、唯一の収穫は、原作を読んでみたいと切に思ったことでしょうか。
-
癖のある文章で
面白く読むが癖が有り好き嫌いが分かれるでしょう、私は面白かった
-
叙情性とリアリティとの見事な共存
理不尽で身勝手な動機からではなく、自分の愛する人を傷つけたくない、不幸にしたくないという思いから犯した過去の罪…。それが結果的に、現在まで続く罪の連鎖の入り口になるという筋には、皮肉なリアリティがあります。「あの時、もし自分がああしていたら」あるいは「ああしていなかったら」今頃は…事件から半世紀近くが経ち、関係者もほとんど残っていない。自分自身も年老い、人生残りわずかだと思われる小説家の、決して逃れることのできない後悔と苦悩が、切ない余韻と哀愁を残します。 誰にでも過去はある。しかしそれは、自分にとって一体何なのか?それを真剣に問いかけてくれる作品です。「過去とは、異国。作法が違う。」という、本の最初に載せられた詩も、物語の中身とは直接関係はないものの、本を読んでいる間中、重く心に響いてきました。 過去の登場人物も現在の登場人物も実に魅力的で、彼らが抱える個々の苦悩を、よくここまでうまくリンクさせたと思います。日本語訳もナイスで、特に警察のことを「刑事」ではなく、「おまわり」などと呼ぶところも心憎いです。 物語は現在と過去を交互に進行させ、霧に覆われたような、かと思えば渇いた暑い日差しに照りつけられているかのような、形容しがたい叙情性を帯び、罪という深い海の上に浮かんで、さざなみに揺られているかのようにゆっくり進行していきます。そのためミステリー小説によくある、迫力たっぷりの急展開、スリルたっぷりの緊張感は、この小説にはそれほど感じません。欲を言うと(個人的には)その点が少々物足りなかったのですが、叙情性と現実味が見事に調和した、味わい深い傑作です。一読をお勧めします。
-
ミステリーの枠を超えた傑作
作者の本領がいかんなく発揮され、W受賞もS・キング絶賛も納得の傑作。丹念な人物造形と情景描写はもとより、過去と現在を同時進行させながらクライマックスへと導く構成が見事。 特に、手記の形で語られる水没した村の過去(戦時中)の描写は、ミステリーの枠を超えた奥深さに哀しみさえたたえて、叙情派とも評される作者の面目躍如たるものがある。それでいてミステリーの醍醐味である犯人探しも最後まで読者を引き付け楽しませてくれる。 訳者はそうした原作の妙味を、吟味された言葉と表現で余すところなく伝え、読者をぐいぐいと物語に引き込んでゆく。 千円ちょっとでこの楽しみを手に入れられる読者は幸せである。
-
郷愁を感じるミステリの秀作!
同じ作者の『誰もが戻れない』がおもしろかったので、最新作『渇いた季節』も求めました。主要人物のグロリアという女性がそれはそれは魅力的です。物語の「時代」がイキイキと目の前に甦る感じ。読後、なんともいえない切ないリリシズムを感じる作品でした。「渇いた季節」というタイトルが秀逸だと思いました。(「乾いた」ではダメなんです!)この作者のほかのシリーズ作品も全部読んでみたくなったのですが、残念ながら在庫切れとのこと。ぜひ刊行してください!!
-
嫌な女に振り回されたくない!
イギリスの夏は短い。そんな短い夏の異常な猛暑が、貯水池に沈んでいた村を地上に出現させ、また、過去の殺人を浮かび上がらせる。村の暮らし、現在と戦争中の村の人々の様子が生き生きと描かれて引き込まれる。自分に無いような自由奔放さを持つグロリアに魅力を感じる人々もいる一方、もし私のそばにグロリアがいたら、こんな女には振り回されたくない!と思ってしまうのでは。まあ、人物描写がそれくらい生き生きしているということでしょう。ミステリ、そして心理劇の両方を楽しむことができる満足度の高い1冊。
-
バンクス・シリーズのNo1
訳者(野の水生氏)の丁寧な翻訳に魅せられて、1冊1冊読み進むうちにファンになってしまったバンクス・シリーズですが、本書は私にとって文句ナシのNo1です。40年も前に起きた殺人事件にいどむ首席警部のバンクスは、私生活でも奥さんに去られるなど苦境にさらされます。今までのシリーズではいわば人生の夏を謳歌していたバンクスですが、今回は秋を通り越して厳しい冬に直面してしまったよう...。全編を通して、晩秋から冬にかけて感じる寂しさやはかなさのような印象を受けましたが、それは決して不快なものではなく、私にはもうすぐ来る幸せのための準備期間のように感じられました。どんな厳しい冬もやがて春の訪れを迎えるように。ミステリ-としてのおもしろさも言うまでもなく、人間ドラマとしても深い味わいがあるこの一冊、ぜひおすすめです。
-
内省する主人公と卑怯な大人
40代の首席警部アラン・バンクスは、この本で、いままでになく十代のころをさかんに振り返っている。同年代の息子ブライアンより、回想のなかの若いバンクスに、僕は自分を重ねて共感した。手記で語られる戦時中の話も寂しくてじんとくるけど、僕にはバンクスの内省のほうが面白かった。続きが読みたい!