作品情報
明治の根津遊郭に、時代からこぼれた人びとの声が響く。
舞台は明治十年の根津遊郭。新しい時代が進む一方で、古い価値観や身分の記憶を抱えた人びとは、それぞれの場所で生きるしかない。木内昇は町の細部と人物の陰影を丁寧に積み重ね、時代小説としての骨格に、近代化の陰に沈む人間の声を響かせる。
レビュー要約
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近代化の華やかな面ではなく、取り残された者たちの息づかいを掬う筆致が評価されている。人物の会話や町の空気から、時代の変化が静かに伝わる。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2010-09-24
- ページ数
- 304ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087713732
- ISBN-10
- 4087713733
- 価格
- 1544 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/歴史・時代小説
明治10年。根津遊廓に生きた人々を描く長編 ご一新から十年。御家人の次男坊だった定九郎は、出自を隠し根津遊郭で働いている。花魁、遣手、男衆たち…変わりゆく時代に翻弄されながら、谷底で生きる男と女を描く長編小説。
レビュー
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夢中にさせる一冊
激変する時代の中での主人公の生き様に引き込まれてゆきます。歴史を織り交ぜながらの展開。おもわず夢中になる一冊。
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時代に取り残された男と街=根津の遊郭の物語
日本が激変した明治維新、その時代の大きな変化に取り残されたひとりの男、定九郎の物語。 というよりも、正確にはその定九郎を中心に展開して行く物語。 それにしても定九郎はダメな奴だ。時代の荒波に乗り損ね、ずるずると日々を生きている。 そして完全にイジケている。 小説の前半はそんな定九郎を中心に淡々と進んでいく。ドラマチックな展開は少ない。 中盤からいよいよ定九郎本人が動き始める。といって、大活躍とはほど遠い。 しかし、小説は急速に展開して行く。 ダメダメな定九郎を尻目に、実はこの小説の本当の主人公ではないかと思う人物が ふたりいる。 遊郭という浮き世の谷底にいながら、凛として力強い花魁・小野菊と、 飄々としたというよりも、まったくとらえどころなく、定九郎だけでなく、 読んでいるものをも、いちいちイライラさせるような噺家の卵・ポン太。 小説は最後にドンデン返しを迎えるが、読み終わったあと、この小説と平行して、 このふたりの大きなドラマが流れていたような感覚を持った。 そして定九郎は打ちのめされる。 同情はできないが、かといってさげすむこともできなかった。 読了感は意外とすがすがしかった。
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木内昇
主人公がいささか頼りない。もう少しカッコいい所を見せてほしい。同じ作者の読売新聞連載中の小説に登場している女性は皆んな魅力的。
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大きく時代が変わっていく中で、変わらないもの・大切なものが
漂砂(ひょうさ)は、波、または海に発生する様々な流れによって生じる土砂の移動、もしくは移動する土砂のこと。 初めて知った言葉でした。 江戸が終わり明治になったばかりの吉原よりは落ちる遊郭の中での日常。 大きく時代が変わっていく中で、変わらないもの・大切なものが 確かにあるのだなと。 どんなに世の中が変わっていっても人間は死という宿命からは逃れられず。 その死の瞬間まで何を大切に生きていくのか・・・ あっさりしているようなのに結構重い本でした。 この方の小説は初めてだったんだけど、とりあえず他のも読みたくなりました。
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躍動する人物群
細密画のような描写、登場人物のデフォルメがいちいち納得がいき、その躍動振りがすばらしい。
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新しいタイプの時代小説です
私は諸田玲子さん、杉本章子さん、平岩弓枝さん等の女性作家が書く少しエンタメ性のある時代小説が大好き。共通しているのは登場する武士は誰もみな「かっこいい」こと。剣客で、弱気を助け強きを挫き、信念があり、人に優しく、人情の機微を介し、武士としての矜持を持って生きている。ですので、時代小説には最初からそのようなヒーロー像を期待してしまうところがありました。 ところが本書の主人公の定九郎は、そんなヒーロー的な武士像とは凡そかけ離れた人物。 周囲に御愛想を振りまき、仕事には適当に手を抜き、喧嘩には弱く、女にはだらし無く、周囲には認められず、元御家人次男坊としての矜持のかけらも感じられず。 あまりに魅力を感じない主人公設定と、小説の最初の方はあまりテンポがよくないこともあり、一度読むのをやめてしまいました。でも本書は他のレビュアーの評価が非常に高く、本好きの方々がこれほどまでに評価するのなら、と思い直して、もう一度読み始めたところ、気が付いたら面白さに引き込まれて最期まで一気に読んでしまいました。 「武士の子」として厳しく育てられるも、時代の巡り合わせの悪さで成人になったら武士は必要とされない明治の時代に。時代の変化に機敏に対応して成功した元武士もいたでしょうが、誰もがそんなに器用に生きられるわけではない。自分で自分を持て余し方向性を見いだせない。全然魅力的ではないのに、気がつくと定九郎に深く寄り添っている自分がいました。 明治の世になり「自由」が声高に叫ばれるも、一体「自由」とは何なのかと定九郎は考えます。 現代でも通じるテーマも併せ持った作品であり、新しいタイプの時代小説だと思います。 おすすめできる一冊です。
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力作であるのは理解するが面白みには欠ける
御家人の息子が維新を迎え、行くあてもなく遊郭の立ち番として働く 時代の変化を受け入れられずに、悶々と変わりゆくさまを見つめる主人公の悲哀・・・・ それらは大変によく描かれている作品だとは思うが・・・ なんせ面白みに欠ける ページをめくるのが退屈だった・・・ 新時代の花魁と新時代の御家人の息子・・・ それらがもっと絡まれば面白みがましたような気もするけれど・・・
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前半の読み手を引き込んでゆく文章力はなかなか見事
明治初期の遊郭を舞台にした時代小説。 とかくと、陳腐な話になりそうだが、 今の時代と非常に似ているところもあり、 描写も面白い箇所が多くあった。 “うたう”と題名にあるので察しはつくが、 ちょいと、状況描写についてゆけない部分がいくつか見て取れた。 だが、直木賞をとるだけあって、 前半の読み手を引き込んでゆく文章力はなかなか見事なものである。