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月とライカと吸血姫: 月面着陸編・下 (7) (ガガガ文庫 ま 5-11)

星雲賞

月とライカと吸血姫: 月面着陸編・下 (7) (ガガガ文庫 ま 5-11)

牧野圭祐

冷戦期を思わせる宇宙開発競争のなか、吸血種族の少女イリナと青年レフが月を目指すライトノベルシリーズ。差別や国家の思惑を越え、夢を共有する二人と仲間たちの軌跡を描く。

宇宙開発冷戦差別と和解友情恋愛青春シリーズ

作品情報

月へ焦がれる青年と吸血鬼の少女の物語。

小学館ガガガ文庫で2016年から2021年にかけて刊行された全7巻のシリーズ。第53回星雲賞日本長編部門受賞作で、2021年10月刊の第7巻『月面着陸編・下』をもって完結した。

レビュー要約

  • 終盤に向けた感情の積み上げと着地のカタルシスが支持され、シリーズ完結編としての満足感が高い。

書籍情報

出版社
小学館
発売日
2021-10-19
ページ数
382ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784094530377
ISBN-10
4094530371
価格
759 JPY
カテゴリ
本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル

イリナとレフ、ふたりの夢はついに月面へ! 月面着陸への共和国と連合王国による共同計画「サユース計画」が着々と進む。 最終ミッションへ向けて、共和国宇宙飛行士レフはイリナへの想いを告げることを決心、イリナとともに彼女の故郷の村へと赴く。 一方、連合王国のコンピュータ技術者バートとカイエは、共和国製宇宙船を連合王国製コンピュータで制御するという難題解決に成功。 そして「サユース計画」はついに最終ミッション=月着陸船搭載ロケットの打ち上げの日を迎えた。 レフと月着陸船に乗り込む連合王国パイロットのネイサン、バートの兄である連合王国宇宙飛行士・英雄アーロン、今も長い眠りの中にいる「東の妖術師」コローヴィン、共和国の老獪な最高指導者ゲルギエフ、「サユース計画」に「平和」の夢を見る若き連合王国女王サンダンシア、もう会えないイリナとレフの親友アーニャ、極東の島国「星町」に住む、星を愛する少女ミサ、そして、たくさんの「地球人」たち。皆の夢を乗せたロケットのエンジンに火が入る! 世界が東西に二分され、月を目指し争った時代。その光と陰、表と裏の歴史に、宙に焦がれた人と吸血鬼がいた。 宙と青春のコスモノーツグラフィティ、「月着陸編・下」完成!

レビュー

  • ラストが…

    少し悲しいお話かな? ?が付くというのは話の流れでそう思っただけのことですが。果たして『夢』は達成したのだろうか? 読んだあとに色々と考えさせられる本でした

  • これは人類全体にとっては小さな一歩だが、一組の男女にとっては偉大な一歩である。

    ニール・アームストロングが月面に降り立った1969年に"That's one small step for (a) man, one giant leap for mankind. ”(=これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である。)と言い残したらしいが、それから半世紀以上が経過した現代人の目から見れば「どこがだよ?」と愚痴の一つも言いたくなる。 当時のアメリカの競争相手だったソ連はとうの昔に無くなったけど、それで人類社会から分断や差別が無くなったかと言えばキング牧師の公民権運動の頃から黒人の扱いは大差ないし、むしろネットやなんかを見る限りはいよいよ憎悪を隠さん人間ばかりが増えてきたな、とすら感じる。大きな一歩を踏み出した人類なんてどこにいるんだろうか? 前置きが長くて申し訳ないが5年の長きにわたって続いた牧野圭祐の人気シリーズもいよいよ最終巻。米ソを模した二大国の宇宙開発競争時代を背景に吸血鬼と人類という二つの種族の間に横たわる埋めがたい溝の問題を描いてきた物語に結論が出る時がやって来た。物語は史実を大きく離れて二大国による共同開発宇宙ロケットによる月面到達を目指す流れになったけど、この巻はいよいよ月面到着を目指すプロジェクトを追う事に。 予め申し上げておくと、この巻における月面着陸プロジェクトに関しては計画が二大国によるものとなった点を除けばほとんど史実そのままと言って良い。特に終盤のクライマックスシーンである主人公・レフが操縦する月面着陸機(史実で言う所の「イーグル」)が月面に向かって降下、着陸へと至る場面なんて目標地点を数秒早く通過している事に気付く場面やメインコンピューターがエラーメッセージを繰り返し吐き出す描写、なかなか見つからない着陸可能地点まで含めて少しでもアポロ計画関係について知っている方ならば「なんか史実のアポロ11号そのままだなあ」と正直な感想をこぼしてしまうかもしれない。 それじゃ史実をなぞるばかりの作品なんじゃないのか、と意地悪な見方をされる向きもあるかもしれないがそれは明確に否定させて頂く。本作はあくまでもフィクションであり、フィクションとしての矜持を貫いた作品だと申し上げたい。 冷戦の終結とともに資本主義・共産主義という対立はなくなったものの、その代わりとばかりに世界中で噴出したのが民族・宗教・人種における分断と対立であったわけでその傾向は深刻化の色は見せても解決の糸口はまったく見えてこないと言っても良いかと。特に人種間の対立に関して言えば月面に人類を到達させたアメリカ国内が「BLM運動」やコロナ禍に乗じて起きた「アジア人差別」などを通じて世界でももっとも深刻な問題として抱えている国だと言えるかもしれない。 かように人間を数名ばかり月面に到達させた程度で人類や社会の矛盾なんか無くなりはしないし、アームストロングが口にした大いなる一歩がいくらか真実を含んでいたとしても、そのあと人類は何歩後退したんだよと言いたくなるぐらいに進歩の色が見えない。 むしろ作者がこの物語を通じて訴えたかったテーマも、そこにあるんじゃないかという気が読み終えた今ますます強くなっている。人類を月に送り込んだってシリーズの第一巻でモロに描かれていた「相手を同じ人間として認める難しさ」は無くなりはしない。そこはシリーズの最終巻である本作においても何度となく繰り返し描かれる。 不躾な新聞記者は月面に着陸する事は無いが司令船を任されるイリナに対して露骨に偏見の意思を滲ませた質問をぶつけてくるし、地上職員であるカイエにおいてもプロジェクト内に居場所を認められるのはその替えの利かない計算能力があればこそ、という見方も出来る。だからはっきり言ってしまうが、この作品における宇宙開発は何も社会を変えないし、共和国の陰険な体質なんか1ミリたりとも変わらない……明確に変わったと描かれるのはあくまで個人間の関係なのである。 最初に宇宙に打ち上げられる「訓練生」の正体が伝説の吸血鬼だと聞かされて大いにビビっていたレフと「実験動物」としてしか自分を認めていない人類に対しては絶対に馴れ合わないという態度を崩さなかったイリナの間に10年近い付き合いの中で生じた変化、これこそが作者の描きたかった物であろう。二人の間に生じたロマンス、この部分に関して徹底的に掘り下げてあるのがこの最終巻の最大の特徴。 序盤での月到達プロジェクト開始を前に与えられた休暇でレフがイリナの故郷を訪れる場面からもう明確にイリナにおけるレフを受け入れたいという想いは明確であり、シリーズ序盤の二人の険悪な関係を思えばよくここまでこれたもんだと感動も一入である。だが、そのラブラブな部分を描くからこそイリナの躊躇、レフと人生を共に歩みたくてもそこに間違いなく注がれる偏見のこもった視線を思えば結婚という明確な形を取らない方が良いのでは、子供は諦めなくてはいけないのでは、という恐れと不安が際立つ。 その一線を置くべきでないかというイリナの姿勢がレフと共に月を目指す最終プロジェクトを経てどう変化したのかは最後まで読んで頂く以外に無いが、まさに乗り越えたくても乗り越えられなかった線を踏み越えた大きな一歩=Giant leapだったのだなと気付かされた事だけは申し上げたい。人類が月面に到着した程度の事で社会がガラリと変わり「地球人」としての同胞意識が芽生えるなんて事はあり得ないのだが、その溝を超える難しさを徹底的に描いたからこそレフとイリナの二人が手を取り合って「地球人」になった事が偉業として映えるのだ、とも。 全体的な出来を申せばかなり詰め込んだ感は否定できないし、終盤の月面降下を目指す場面以降は速い展開が続いた後イリナの一人語りであっさり終わってしまった点に拍子抜けの感じを受けなかったとは言い切れない(というかシリーズ第一巻の自分のレビューを見返したらほぼ同じ感想だったので、これはもう牧野圭祐の特徴としか言いようが無いのだが)。 だが、イリナの自分とレフの二人で歩み続ける未来への無邪気なほどの信頼を突き付けられてしまうと何も文句は言えなくなる。この二人が種族の間に横たわる溝を乗り越えて手を握り合う関係を築けたことを素直に祝福したい気分にさせられるのである。人類全体はどうあれ、10年近い日々をともに過ごした事で少なくとも一組のカップルが未来へ向けて一歩を踏み出した、その事を実感できただけでこのシリーズを読み通して良かったと素直に思わされるのである。 社会の分断が進み続ける時代にあって、社会全体は変えられなくとも個人が変わる事は可能なのだと訴える素敵な物語を楽しませてくれた作者・牧野圭祐には大いに感謝したいし、このシリーズを世に送り出し続けたガガガ文庫編集部に対しても同様である。まことに素晴らしいシリーズであった。

  • 特別な者だけの物語ではなく

    ※以下の内容には【ネタバレ】が含まれる可能性があります 主人公らや周りの様子に,さらに彼らに,そして宙の向こうに思いを重ねる人々に, 特別な者だけの物語でないことを強く感じ,序盤からたびたび感情が揺さぶられます. ただ,訓練や発射まで,また月面着陸のパートなどは,どうしても説明が増えがちで, 人の側に気持ちが持って行かれたため,そこまでのめり込めなかったのが正直なところ. 一方,もう少し先まで…の感はあったものの,あの最後で余韻が深まったのも確かで, 真っ暗闇の宇宙で,灰色の大地に立ち,青い星を眺める彼の姿が実に印象的に映ります. 何より,大偉業の先に希望を見出しながら,決して楽観視はできないと知る彼女と, それでも,不幸と決め付けず,楽しい未来を考え,幸せになることを諦めない姿には, 架空の世界と時代の物語とはいえ,現在でも叶っていないことばかりなのは残念ですが, 始まりのころの刺々しさや対立を思い出すと,感慨深く,温かいものが湧き上がりました.

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