日本の文学賞

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華岡青洲の妻 (新潮文庫)

女流文学賞

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

有吉佐和子

華岡青洲の業績の陰で、妻と母が競うように人体実験へ身を差し出す姿を描く歴史小説。医学史上の美談を、家制度と女性の情念がぶつかる濃密な葛藤として読み替える。

女性家族歴史

作品情報

名医を支えた献身は、二人の女の激しい競争でもあった。

紀州の医師華岡青洲をめぐり、妻加恵と母於継の関係を軸に据えた有吉佐和子の代表作。新潮文庫版は文庫と電子書籍で流通している。

レビュー要約

  • 作品の緊張感と人物の陰影を評価する声がある一方、時代背景や文体の重さをじっくり受け止める読み方が求められる。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
1970-02-03
ページ数
256ページ
言語
日本語
サイズ
14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-13
9784101132068
ISBN-10
4101132062
価格
649 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

江戸後期、世界で初めて全身麻酔による手術に挑んだ紀州の名医青洲。 一人の天才外科医を巡る嫁姑の凄まじい愛の争奪。 テレビドラマ化、舞台化の定番、人気不動の一冊。 世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には、麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった―― 美談の裏にくりひろげられる、青洲の愛を争う嫁と姑、二人の女の激越な葛藤を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮彫りにした 女流文学賞受賞 の力作。詳細な注解を付す。 本文冒頭より 加恵(かえ、注・のちの青洲の妻)は八歳のとき初めて於継(おつぎ、注・青洲の母)を見た。話をきかせてくれた乳母の民に早速ねだって隣村の平山へ出かけたのは夏で、めざす家の前庭には雑草が生い繁り、気違い茄子(なすび)の白い花々が暑苦しい緑の中で、妙に冴え冴えと浮んで見えた。それは古ぼけた家の軒からふと外へ出て来た於継の色白な横顔と、あまりにもよく似ていた。 「ほれ、ほれ、嬢(とう)さん」 枳殻(からたち)の牆(かき)の前で、民は振返って得意そうに小鼻をひらいてみせたが、加恵は頷くことも忘れて、庭に打水している於継の美しさに見惚れていた。 本書「解説」より 眼をおおいたくもなるような凄絶なヤマ場を中心に、この作品は、有吉文学の中でも、とりわけ引締って、息をつかせる隙をもたない。女の心情描写の達者さは、その道では随一の作家のものとして当然だが、特殊な家での、異常な事態を通して語るので殊更ひきつけるのである。(中略) かようにこの作品の迫力は、時と所とを超えても強いものがあるけれども、これが江戸時代後期の、封建制解体過程における紀州の話であるということが、ひときわ私の注意をひく。 ――和歌森太郎(歴史学者) 有吉佐和子 (1931-1984) 和歌山生れ。東京女子大短大卒。1956(昭和31)年「地唄」が芥川賞候補となり文壇に登場。代表作に、紀州を舞台にした年代記『紀ノ川』『有田川』『日高川』の三部作、一外科医のために献身する嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老年問題の先鞭をつけた『恍惚の人』、公害問題を取り上げて世評を博した『複合汚染』など。理知的な視点と旺盛な好奇心で多彩な小説世界を開花させた。

レビュー

  • 単なる嫁姑の確執物語ではない

    昔、この小説のドラマを見ていい作品だなあと思っていましたが、急に原作が読みたくなったので読んでみました。 有吉佐和子を読むのも、時代小説を読むのも初めてだったのですが、印象的な導入部から始まり、引き込まれて一気に読破しました。時代小説ですが、特有のわかりにくさもなく、注釈もあるし、江戸時代がほとんどわからない私でも世界観に入り込むことが出来ました。 で、物語は有名すぎるくらい有名なのでサクッと行きますが、外科医の華岡青洲の麻酔薬の研究のために妻と母が張り合いながら?!自ら実験台に志願する話です。この妻と母の関係がなかなか微妙でね。単純に仲が悪いとか、そんなんじゃないんですね。そういう微妙な心のひだの描写が的確で、身に覚えのある人も多いんじゃないかと(笑) 発端は、そもそもこの母が望んで息子の嫁にと妻の実家に頼みに来たのですね。しかも妻が子供のころ、この母を見たことがあったので、妻と母の方が先に縁が出来ていたのです。ここが非常に意味深いところだと思っています。 小姑は、この二人の張り合いに気が付いていて、臨終間際に「姉さんが勝った」と言っていたのだけど、これは果たして、そういえるのかどうか疑問だ。「華岡青洲の妻」を見出し、育てたのはやはり、「母」であったと、私は思う。妻は「身を犠牲にした賢妻」と、人々からほめそやされてもなぜか、「うしろめたさ」が心に残っていたことをうかがわせるところを見ると、彼女はそれに気が付いていたと思う。 誰にでも薦められる良作です。有吉佐和子の作品は初めて読みましたが、読者を引っ張っていく文章力がすごいです。

  • 麻酔薬が母親と嫁に試された

    麻酔薬の実験で加恵が盲目になったのはショックでした。名作でした。

  • 女々しい男

    有吉佐和子作品は4〜5冊しか読んでませんが、今の所私の中では最高傑作。 女の美しさ、強さ、怖さ、男の頼りなさを描くのがまぁ上手。時代的には男が圧倒的に偉そうにしているものの、まあなんと男は情けなく、女々しい存在かがありありと描かれています。

  • 素晴らしい

    やはり素晴らしい なっども読み返す。本棚入り決定

  • 世界初の試み

    嫁と姑の赤裸々なやりとりが、怖かったです。医学の進歩を実感しました。

  • 嫁姑。

    華岡青洲、恥ずかしながら有吉佐和子の本に、はまっていなければ知らないままでした。 外科医である青洲が発明した麻酔剤を実母と妻で試し、全身麻酔による乳がん手術、医学の発展に大きく貢献したというショッキングな概要を知った上で読み進めましたが、青洲の功績より、現代の嫁姑問題とおよそ変わらない内容も衝撃だった。 小姑の言葉(悔やむどころか私は嫁に行かなかった事が何よりの幸福と思って逝く、嫁と姑はなんという怖ろしい間柄だと思った、あんな泥沼にぬめりこむのになぜ婚礼で着飾ってハレをするのか、翌日には振袖に黒い火が燃えつくようになるのに)が妙に胸に刺さった。

  • 名作!

    流石に昔からタイトルだけは子供時代から知っていた作品、あっという間に読み終えてしまった。間違いなく名作だ。

  • 男の読者にはつらいかもね。

    作者の出身地でもある和歌山が舞台。江戸時代後期に 朝鮮朝顔などを成分とした麻酔薬を作るお話。 全身麻酔を経験した方はご存じと思いますが現在は一瞬にして意識がなくなる麻酔薬ですが 当時は長い時間苦しい思いをして薬を飲みやっとのことで麻酔の効果を得たことを知りました。 主題の嫁姑の確執は結婚した男性の一番の問題なので身につまされて読んでいて辛いものがありました。 華岡青洲は歴史に残る医学者だけどもう少し妻に気を使わなくていいのかと思いました。 鬼気迫る嫁姑の心理戦ですが、実験動物として犬や猫が集められて麻酔薬を試されて結果として死んでいく話もつらかったです。 恍惚の人、青い壺、悪女について、本作品と読み進めてきましたがどれも心に残る名作だと思います。

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