日本の文学賞

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メリーゴーランド (新潮文庫)

エキナカ書店大賞

メリーゴーランド (新潮文庫)

荻原浩

過労続きの職場を離れ、地方都市の市役所で平穏に暮らす啓一が、さびれたテーマパーク再建計画に巻き込まれていくユーモア小説。お役所仕事、家族、地域振興の思惑が絡み合い、滑稽さの奥に働く人の切実さがにじむ。

地方行政テーマパーク再建家族組織風刺

作品情報

平穏な役所生活のはずが、回り続ける再建計画にのみ込まれていく。

新潮文庫版。地方都市の市役所職員を主人公に、老朽化したテーマパークをめぐる再建計画、住民感情、職場の力学をコミカルに描く。軽妙な会話と騒動のなかに、仕事と生活の折り合いを探る視点がある。

レビュー要約

  • 役所組織のぎこちなさや地方再生の無理筋を笑いに変える筆致が好まれている。騒動の連続を軽快に読ませる一方で、人物の行動がやや誇張されていると受け止める読者もいる。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2006-12-01
ページ数
445ページ
言語
日本語
サイズ
14.8 x 10.5 x 2 cm
ISBN-13
9784101230337
ISBN-10
4101230331
価格
737 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

過労死続出の職場を辞め、Uターンしたのが9年前。啓一は田園都市の市役所勤務。愛する妻に子供たち、あぁ毎日は平穏無事。……って、再建ですか、この俺が? あの超赤字テーマパークをどうやって?! でも、もう一人の自分が囁いたのだ。〈やろうぜ。いっちまえ〉。平凡なパパの孤軍奮闘は、ついに大成功を迎えるが――。笑って怒って、時々しんみり。ニッポン中の勤め人の皆さん、必読。

レビュー

  • お役所組織は不条理な「アリス」の世界・そこに生きるひとびとの素顔

    自治体がかかえこんだテーマパークと、それの再建にかりだされた公務員の奮闘記です。 駒谷アテネ村というギリシアふうテーマパークは市が予算をつぎこんだ事業でしたが、赤字続き。これを立て直すよう命じられた主人公、啓一はお役所組織の壁にはばまれ、あちこちで老害やら利権の垣根に右往左往しながら、ゴールデンウィーク中の売り上げを昨年一年間の4分の1まで達成します。 つぶれた隣のファミリーパークから動物や遊具をもらってきたり、昔いた前衛的な劇団の座長に声をかけてきてもらったり、と、普通の公務員である啓一のせいいっぱいの働きがみのった成果です。とくにこの劇団「ふたこぶらくだ」の面々の破壊的パワーによって、ペガサス企画の若手プランナーのたてた「不思議の国のアリス」の世界が、見事に立ち上がります。彼も、そして、啓一の下のこの出向部署に配属された部下も、謎の無口な女性公務員もいきいきと自分を発揮してゆきます。 しかし・・・政治と組織の壁は厚かった。市長が、女性評論家に選挙で敗れたとたん、アテネ村は廃止が決まり、新しい風が吹くかと思った啓一一家も、やっぱりいつも頭上には広々とした空ではなく「低い天井がある」ことをかみしめます。 最初は、テーマパークというものにほれ込んだ市役所の公務員が、夢を実現しようとする話(境港市のように)かなと思っていましたが、主人公は特にテーマパークに思い入れが強いわけではなく、ただ新しい企画を軌道にのせようという熱意で動いている感じでした。 それはそれでまた痛快でしたし、「前例がない」「慣例だ」「改変したら、これまでの自分たちがまちがっていたのを認めることになる」など、お歴々からの発言にいちいち憤ったりがっくりしたりしているうち、これこそまさに「アリス」のナンセンス世界だ、と感得するところも読みどころでした。 そして、あたかも進歩的で平等を標榜する世界を約束してくれるかに見えた新政権も、公約遵守、そして画一的なフェミニズム政策の実現など、やっぱり組織になったとたんに硬直してゆき、「どこか違う」。新たな「アリス」のコーカスレースが始まっただけ、と啓一は悟るのですが、家族のきずなはこの一連の事件で強まり、最後に、廃止されるメリーゴーランドに夜、みんなで乗りにゆくシーンはあたたかいものを胸にともしてくれます。 お役所とはこういうもの、なのですが、あきらめて心から切り捨てるのではなく、アリスの世界とわりきった主人公の心境が気持ちよく、久々に、リアルなのに失望でおわらずにすむ角度をもった、ユーモアの効いた社会小説を読んだ気がします。

  • さわやかな気持ちになりました

    この本を読んで、とてもさわやかな感動をおぼえました。 大人になって仕事や子育てしてて、昔の何かに夢中だったころの大切な思い出を思い出す事があります。 そんな自分の感覚とふと重なってしまうところがあります。 引っ越しでなくしてしまったので、再購入。 時々読みたくなるし、人にすすめることもできます。

  • いらないものが多い作品

    自分自身の読解力の無さを棚上げにしての感想なので星ひとつ上乗せで。 残念ながら、この作者が何を伝えたいのか分からないまま読み終わった。 印象に残るのはユーモア描写の多用。 それが強すぎて内容が頭に残らない。 登場人物が多いのによく似たキャラが多い。 げきだんの座長とねねこと咲太郎はまとめて同一人物にしていい。 かえでもいらない。 林田も理事長もいらないし、挙げ句の果てには室田もいらないと思った。 アテネ村無くす話書く前に、もう少しなくすものがあるだろう。 ダラダラと長く、高評価されているのに疑問を感じる。 本当に読むのが苦行だった

  • 読後の爽快感と少しの苦み

    最初はあまり期待していなかった。冒頭に出てきた男は、主人公なのかどうかわからないけれど、あまり頭はよくなさそうだし、これでテーマパークの再建?結構な長編小説だけど途中で飽きてしまうのでは、と少々心配しながら読み始めた。 主人公がバリバリ仕事ができる有能なキャリア官僚なんかだったら、先が読めてしまってつまらなかったかもしれない。どこにでもいる平凡な善き家庭人、むしろ無駄な争いごとは避けたいタイプだと思うが、そういう人間だからこそ感情移入しやすかったのかもしれない。 天下り先で自分の利益しか考えない爺さん達に腹をたてている自分がいた。 ただ現実はそう甘くない。アテネ村リニューアルは思わぬ方向に進んでいく。こういうとき、社会の仕組みに嫌気がさして、自分を殺してただただ長いものに巻かれる人生を選ぶか、現実を受け入れながらもその中で自分の本当の幸せを探す手段を考えるか。 啓一は後者を選んだのではないかと思う。所々に出てくる啓一の子ども達も無邪気でかわいらしくて、啓一奮闘の機動力となっている。読後がなんとも爽やかな小説だった。

  • サラリーマンの同僚に読んでいただきたいな

    サラリーマンの自分が元気になる本です。 現実と理想、会社と家族・・・ 大好きな本で、昔読みましたがもう一度買ってしまいました。

  • メリーゴーランド

    地方都市に取り残されたテーマ―パークの再建。 いや再生いやいや推進と自治体の体面丸出しのプロジェクトを任された市職員。 これといったアイデアが無くゴールデンウィークスペシャルが近づく。 しかしかれの前に立ちはだかるのは天下りの仕事もろくにできないテーマパークのトップたち。 あれこれ画策し何とか成功裏に終わらせたが、新市長の公約通り赤字経営のため閉館してしまう。 主人公遠野敬一の振る舞いがどうも釈然としない。 間違ったことでも上司へは一切反抗しないどころか、長いものには巻かれろ式の人生が読者に共感を与えない。 一般文学通算912作品目の感想。2013/01/13 17:10

  • 残念

    非常に良い、との情報で購入したが帯こそあるものの、本のかどは白くかすれており中身も折れ目が入っていて、残念に思った。

  • さぁ。行きましょう。椅子は立ち上がるためにあるのです。

    荻原浩は 主人公の素直なつぶやきの 挿入が実にうまい。 物語のナレーション役となっている。 息子の哲平が お父さんは どんな仕事をしているの? と言う質問に対して、市役所の仕事を説明できない。 あたらしく 出向した アテネ村リニューアル推進室の仕事は さらにいうことができない。 公務員って 一体なにか? を突き詰めていく。不思議な国アリスのような心境に陥る。 主人公の啓一はいう 『さぁ。行きましょう。椅子は立ち上がるためにあるのです』 変化が起こる。 妻の路子はいう『なかなかいいヤツだと思うよ。ちょっとガツンって言う感じの迫力が足りない。』 娘にも『しょうしんもも』といわれてしまう。 なかなか決めることができない 小心者である 啓一は、 いつのまにか 儲からない アテネ村の再建に 熱心に働くのである。 平凡な中に潜む 英雄になろうとする心をくすぐる。平凡のなかに 非凡さがある。 とりまきが 沢村 ふたこぶらくだの来宮 シンジ 柳井 徳永。 それぞれ、個性が生きる。 公務員って 余りがんばらなくてもいいんだよね。それは、営利を目的としていない。 しかし、どうも 営利的な事業をやろうとするから 失敗するのだけど。

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