日本の文学賞

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博士の愛した数式

読売文学賞

博士の愛した数式

小川洋子

『博士の愛した数式』は、記憶が短い時間しか続かない老数学者と家政婦、その息子ルートの交流を描く小説。数式の美しさが、人と人の間に言葉とは別の信頼を生む。

記憶数学家族喪失やさしさ

作品情報

数の秩序が、壊れやすい記憶と人の優しさを静かにつなぐ。

2003年8月に新潮社から刊行された小説。読売文学賞小説賞、本屋大賞などを受賞し、文庫版・電子版・英訳版も刊行された。

レビュー要約

  • 数学用語が物語の冷たさではなく温かさを生み、登場人物の孤独を結びつける点が高く読まれている。切なさと知的な楽しさの均衡が作品の魅力になっている。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2003-08-28
ページ数
256ページ
言語
日本語
サイズ
14 x 2.1 x 19.7 cm
ISBN-13
9784104013036
ISBN-10
410401303X
価格
1870 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

記憶が80分しか持続しない天才数学者は、通いの家政婦の「私」と阪神タイガースファンの10歳の息子に、世界が驚きと喜びに満ちていることをたった1つの数式で示した…。頻出する高度な数学的事実の引用が、情緒あふれる物語のトーンを静かに引き締め整える。著者最高傑作の呼び声高い1冊。

レビュー

  • 博士と「私」12年間の交流の記録が感動的

    素晴らしかった。 登場人物たちが皆、純粋で、ひたむきで、優しい。劇的な演出や表現はなくても、じんわりとした感動の積み重ねを体感できる一冊。 家政婦の「私」と息子の「ルート」が、事故で重い障害を負った元数学者の「博士」と出会うのは、1992年。「博士」64歳、「私」28歳、「ルート」10歳の時。 それから12年間に及ぶ心の交流を実に優しく暖かく、淡々と見つめながら物語は進む。 「博士」の8歳年上の義姉の存在も、物語に奥行きを持たせてくれている。中盤まで、「私」の視点では非常に冷淡で何を考えているかわからなかった彼女が、あるできごと(「私」が、「博士」の部屋で見つけた一枚の写真)をきっかけに、その裏にある悲しみ、葛藤、そして愛情を読者にも知らしめることになる。このあたりもとてもうまいと思った。 「博士」と、「ルート」の関係性もこの物語では重要な鍵となっている。 「ルート」の11歳の誕生日祝いで、2人が交換したプレゼント、「博士」からプレゼントされた野球グローブ、「ルート」からプレゼントされた、江夏豊のベースボールカード…このふたつが物語の最終盤で感動のスパイスになる。 ラスト、大学を卒業する「ルート」からのある報告に歓喜する「博士」、抱き合う2人。そして、そこで揺れる、10年以上肌身離さずクリアケースに大切に収めて首からぶら下げていた江夏豊のベースボールカード…情景が目に浮かんで、涙が止まらなかった。 博士は、記憶が80分しか持たない障害を負っている。障害を負ってからは、義姉を除く人間全て、毎回初対面。でも、12年間の軌跡は、記憶として頭に残っていなくても、心には刻まれていたんだ、そう信じたくなった。 ちょうど身体を壊している時に読んだので、心への染み渡りが深く大きく、忘れられない一冊になった。

  • 素数を通じた愛の本質

    素数という日常には縁のない対象を通して、「愛すること」の本質を描く。本書の博士にとって素数は、向き合い続けた末にたどり着いた、かけがえのない存在である。 人それぞれに素数のような大切なものがあり、それは探すものではなく、真剣に向き合う中で浮かび上がる。そうした視点は、大切にすること自体の尊さに気づかせてくれる。

  • 何度も読みたい作品

    友人にすすめられて購入しました。 殆ど本を読まない、買っても積読になる私が最後まで読めました。 泣いたり笑ったり、ドキドキしたり、ハラハラしたり、情景がイメージしやすい言葉選びや美しい表現に感動したり、色んな感情が湧き上がり読んでいてとても楽しい本でした。 幸せな気持ちになれる本なので、今後も繰り返し読みたいと思います。

  • ​「i(虚数)」を「愛」と読み解く、静かで美しい物語

    ​この小説を読み終えた今、私の数字や数式に対する景色は確かに変わりました。劇的に何かを理解できるようになったというよりも、これまで見過ごしていたものに、ふと目が留まるようになった、そんな静かな変化です。 ​普段何気なく目にしている数字の中にも、誰にも割り切れない孤独な「素数」があり、220と284のように互いの約数の和が相手と一致し、支え合う「友愛数」がある。これまで単なる記号にしか見えなかった数字が、まるでそれぞれに性格や関係性を持っているかのように感じられ、数学とはこれほどまでに奥深く、人の心に似た世界だったのかと気づかされました。 ​■ 80分という限られた時間の中で紡がれる絆 物語は、交通事故の後遺症で記憶がわずか80分しか保てない数学博士のもとへ、一人の家政婦が派遣されるところから始まります。博士と家政婦、そしてその息子「ルート」。限られた時間の中で、彼らは何度も出会い直し、数学という共通の言葉を通して少しずつ心を通わせていきます。血の繋がりはなくとも、そこには確かにお互いを思いやることで形作られた、静かであたたかな家族の姿がありました。 ​■ 「i(虚数)」と「愛」の重なり 特に心に残ったのは、博士が「オイラーの等式」を書き記す場面です。この式に含まれる「i(虚数)」を、私は「愛(アイ)」そのもののように感じました。 以前観た映画『インターステラー』の中で、「愛も数値化出来るはず」という言葉がありました。本来は存在しないはずの数である「i」が、性質の異なる数字たちを結びつけ、最後には0や1といった現実の世界へと導いていく。その姿は、目には見えず直接触れることもできないけれど、確かに何かを繋ぐ力を持っている「愛」と重なって見えました。それは言葉では説明しきれない、博士なりの静かな愛情表現だったのではないでしょうか。 ​■ 読み終えた後に広がる景色 読後、ふと部屋の時計の数字に目がいくようになりました。「12」や「3」といった数字にも、それぞれに意味や関係があるのではないかと考えると、日常が少しだけ面白くなった気がします。 ​記憶がこぼれ落ちていく切なさと、それでもなお人と人が繋がろうとする温かさ。数学という一見無機質なものを通して、人が誰かを思うことの尊さを描いた名作です。これから先、目の前にある数字を見るたびに、その奥にある小さな物語に思いを馳せてしまいそうです。

  • けっこう無理がある

    80分だけ記憶が維持できるという設定が、便利な感動エンジンに使いたい意図が見えすぎて、ご都合主義 すぎでは 阪神タイガースの下りは、ファンでない人にはひたすら退屈。並列して語る方法なら他の話題にするべきだった 息子を無条件で可愛がる理由が 、当初は異様に子供好きだから、という理由付けなのに、成人したあとでも変わらない 理由が全然整合してない 細かい点でつっこみどころいっぱい

  • いつ読んでも名作

    暖かい気持ちになり、誰かに優しくしたくなる本です。 誰にでもおすすめできる名作です。

  • 優しさに満ちていた

    この物語は優しさに満ちている。ただ、その優しさの源流がなんなのか?、どこからか?といったことももう少し、描いて欲しかったと感じた。

  • 心温まる愛情

    博士と主人公と息子ルートとの関係性にとても心が温かくなりました。ずっと終わらないで欲しい、読み続けたいと思った本。 たとえ記憶が80分しかもたなくても変わり者でも、大切なことを分かっている人は尊い。

  • It was a gift and it was a hit!

    Turned out to be a story the birthday person knew & was eager to read in her own language.

  • Loved it!

    I really loved how small it was and that it was in Japanese!

  • Well-rounded novel, definitely suggest it.

    博士の愛した数式 (or rather, "The Professor's Beloved Equation" .. or, as it is listed here "The Housekeeper and the Professor") is a heart-warming novel that focuses on a housekeeper who tends a former university mathematics professor. His (the Professor's) memory lasts only for 80 minutes before he begins to forget everything that had transpired. As a mathematician myself, I thought that the mathematics aspects of the novel were charming (even cute!). As a reader, the story brought me to tears of both sadness and of joy. It's well-written and the character building is phenomenal.

  • Amazing novel, worth a read

    Amazing novel, worth a read, especially if you know anyone or if you are impacted by someone who struggles with sue sort of communication difficulty or other neurological/developmental barriers that create social challenges.

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