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謎ときサリンジャー――「自殺」したのは誰なのか (新潮選書)

小林秀雄賞

謎ときサリンジャー――「自殺」したのは誰なのか (新潮選書)

竹内康浩

J・D・サリンジャーの短編「バナナフィッシュにうってつけの日」を出発点に、通説化してきた結末の読みを問い直す文学評論。シーモア・グラスをめぐる謎を手がかりに、グラス家の物語から『ライ麦畑でつかまえて』まで、作品世界に張り巡らされた仕掛けを文学探偵のように読み解いていく。

J・D・サリンジャー文学批評テクスト読解グラス家

作品情報

サリンジャー作品に隠された謎を、テクストの細部から読み解く一冊。

サリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」に置かれた一つの死を、著者たちは自明な結論として扱わない。作品内の言葉、人物、場面のつながりを丹念にたどり、禅やミステリの発想も交えながら、サリンジャーの物語を新しい角度から読み直す。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2021-08-26
ページ数
269ページ
言語
日本語
サイズ
19.1 x 12.8 x 1.9 cm
ISBN-13
9784106038709
ISBN-10
4106038706
価格
1870 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学

第21回小林秀雄賞受賞! あの名短編のラストが実は「事件」だった? 驚天動地、圧巻の評論登場。 「バナナフィッシュにうってつけの日」のラストは主人公の自殺ではなかった!? 前代未聞の問いは天才作家の作品世界全体に及び、やがては『ライ麦畑』までが……。世界最高峰のミステリ賞〈エドガー賞〉の評論・評伝部門で日本人初の最終候補となった「文学探偵」が弟子と読み解く新たなサリンジャーの世界。

レビュー

  • 文学批評の大事件

    ええ、そんなバカなと口をあんぐりさせながら作者の緻密なロジックに引きずられ、読み終わったあとは「もうこれ以外の解釈は考えられない」という境地に。 文芸批評の本を読んでこんなにスリリングで圧倒される快感に見舞われたのは初めて!

  • 謎を解こうとする熱意に!

    予想したほどの(帯の文句が凄すぎ)いわゆる驚きはありませんが、ここまで迫る熱意と意味は大いにあります。サリンジャー全作品読了したい思いです‼︎

  • 素晴らしい

    面白くて一気に読んでしまいました。これまでの自力がサリンジャーを本当には読めてなかったことに気づかされました。真のテーマは残されたものと死者がいかに出会い共存するかだったんですね。本当に勉強になりました。

  • 面白いし、本質的。

    シーモアの死について作中の時系列とサリンジャーの創作活動の時系列でどのように扱われてきたかについて鋭い指摘があり圧倒されました。

  • そこまでサリンジャーが好きではないと気づけた

    なるほど、と思うところもあった。 サリンジャーについては「ライ麦」と「フラニーとゾーイー」は好きだが、それ以外の作品はあまり好きではない。若い頃はグラース家のミステリアスな雰囲気に魅了されたが、大人になると関心が薄れていく。ただの変人家族にしか思えないのだ。グラース家シリーズは思わせぶりな描写が多くて読んでいて眠たくなったのを覚えている。 ナインストーリーズを読んだのは20歳前後の頃だが、いま再読できる自信はない。 そんな私だからだと思うが、本書も最後まで読める自信がない。 サリンジャー作品が大好き!という人にはおすすめできるが、「とりあえず『ライ麦』は読んだぜ」という人にはおすすめしない。

  • 買いです。

    何度読み返しても「ナイン・ストーリーズ」は、結局は終わり方の解せない「バナナフィッシュ」に飲み下せない感じが残って、それでもしばらく経つと、「今度こそ」であったり、「柴田元幸さんの訳であればもしかして」であったりと、懲りずに長年手にしてきました。 本書については、謎解きを冠した書名が大学時代に衝撃を受けた江川卓さんの著書に直結していたことと、上記の積年の不完全燃焼を解消してくれるかもしれないと期待させてくれたことが入手のきっかけでしたが、読み続けているうちにふと既視感を覚えて巻末のプロフィールを見ると、著者の写真には見覚えがないものの、20年近く前に読んだ「もう語りたくない」と同じ方なのでした。 したがってその著書を読まれた人であれば、あるいは本書を読まれた人であれば、その2作は姉妹編的な繋がりがありますので、読まれていない方に強くお勧めします。

  • エキサイティング!

    最近、サリンジャー作品を3冊ほど集中的に読んだので、記憶の新しいうちにと以前に買ったまま放置していた本書を読みました(私のは2021年8月発行の初版).人気作家サリンジャーに関する本はいっぱい出ているので、今更新たな読み解きなどあるのだろうかと心配だったのですが、これはエキサイティング!あまりに面白くて一気に読んでしまいました.映画において何がどのように撮影されているかに絞って細かく分析する評論が時折ありますが、それにも似て、サリンジャーがどのようなワードを慎重に選び抜いて小説を創り上げていったかについて、テクストに全面の信頼をおいて分析し、なるほど!と思える新鮮な読み解きが提示されています.シーモアとバディのペアの片方が死に片方が生きる、という解釈は、まるで量子力学における<シュレーディンガーの猫>みたいですね(二人が半分の確率で生きている).またテディやシーモアが、一般人が生きている1次元的な時間の流れにではなく、2次元的な時間平面に生きていた、という解釈も、エピグラフの禅の公案や芭蕉の俳句の引用と整合していて納得できます.本書には記述されてませんが、グラス家のウォルトとウェイカーの双子について考えると、ウォルトは事故死し、ウェイカーはカトリックの神父さんになっている、という話なので本書の解釈が当て嵌まりますね.また、ホールデンについては、私はキリスト教的な死と復活の流れで解釈していたのですが(私的には『ライ麦畑の捕まえ役』は、聖書での羊飼い(=キリスト)が野原の99匹よりもいなくなった1匹を探す、のイメージでした)、本書によればホールデンも死んでいながら生きている存在のようです(死(=フォール)はあるが復活(=ライズ)では無くキャッチされる).私はサリンジャーの見えるものの描写から見えないものを読者に感じ取らせる作風が好きで、またその数学的な対称美(『”ナイン”ストーリーズ』やグラス家の"7"人兄弟(二人X3組+一人)など)も好きなのですが、本書によってさらに現代物理の理論にも沿っているのではないかと妄想し(昔読んだ『文明は<見えない世界>がつくる』(@松井孝典さん)に、超弦理論によれば世界は9次元なので現実世界の3次元との差の6次元分がコンパクト化されている、とありました)、久しぶりに知的興奮を味わいました.本書の著者、竹内康博さんと朴舜起さんにお礼を言いたい気持ちです.

  • 緻密な論理

    「ナイン•ストーリーズ」は、冒頭に記載された禅の公案(“隻手音声”の片手の鳴る音)のように、読み解くのが難しい。著者は、緻密な論理で、「バナナフィッシュ」の主人公の自殺を読み解く。まるで、推理小説の謎解きを読んでいるように時空間を超えていくが、サリンジャーは、どの読み解きが正解とも言えないように構成しており、類を見ない文学スタイルであることがわかってくる(逆に読み手の好みのように読めと言っているようである)。著者の謎解きはあたかも公案を解いているように進むが、サリンジャーも最後の「テディ」で、この禅の公案を解いていると思う。片手の鳴る音は、心には鳴るが、現実には聴こえない。言葉の虚構•二元からの脱却である。禅でいう分節以前の全てありのままでよく、世界の全ては一如と言いたかったのだと思えてくる。文学の深さ、醍醐味が味わえるお勧めの一冊。

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