世界を変える日に (ハヤカワ文庫 SF ロ)
生物テロにより、妊娠した女性が死に至る「母体死症候群」が世界を覆い、人類の将来が脅かされる。16歳のジェシー・ラムは、父たちが取り組むワクチン研究と、その解決策が若い女性に求める犠牲を知り、自分の人生を何のために使うのかを決めようとする。
作品情報
世界を救う選択は、少女自身の未来と、親が娘に何を許せるかを問いかける。
『世界を変える日に』は、ジェイン・ロジャーズの『The Testament of Jessie Lamb』の日本語訳である。妊娠が死につながる感染症によって社会が崩れていく近未来を舞台に、少女ジェシーが人類を救うための研究に自らを差し出そうとする姿を、父との関係を軸に描く。科学的な解決策が個人の身体と選択をどこまで求めてよいのかを問う長編で、2012年アーサー・C・クラーク賞を受賞した。
レビュー要約
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ジェシーの揺れる声を通じ、娘の明快な決意と両親の複雑な葛藤を対置する語りが評価されている。科学、性、存続をめぐる困難な問題を正面から扱う力作と評される。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2013-07-10
- ページ数
- 430ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784150119096
- ISBN-10
- 4150119090
- 価格
- 350 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
アーサー・C・クラーク賞受賞 人類は滅亡する。 でも、わたしの決断で、運命を変えられる。 『たったひとつの冴えたやりかた』の純粋さで、 『わたしを離さないで』の衝撃を描きだした近未来フィクション
レビュー
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近未来版「アンネの日記」
環境破壊や戦争などの大罪を犯してきた人類が,原因不明の病気で滅亡の危機を迎える・・・・近未来SFにはよくあるテーマですが,パニックものやホラーものではなく,ひとりの少女の1人称で語られた内省的な小説です。 最初は,他人事のように感じていた人類の危機。しかし,親族や知人にふりかかる災厄を通して,少女は「何か」に目覚め,自分に何ができるか,自分が進むべき道を真剣に考え,葛藤を続け,1つの悲壮な結論に至ります。 MDSという原因不明,不治の病が蔓延し,世界中で暴動やカルト的な宗教が台頭するとか,病原はテロリストにまかれたらしいといったストーリーの展開は,「12モンキーズ」を思わせます。普通なら「ワールド・ウォーZ」のようなパニック映画の展開になるところですが,何故か,少女の目を通して語られる世界の騒動は,とても淡々と進行しているように感じます。 その一方で,身を切り刻むような心の葛藤の描写が凄いです。著者も語っているようですが,執筆にあたっては「アンネの日記」に大きな影響を受けたようであり,近未来SF版「アンネの日記」というところでしょうか。 SFにつきものの派手なアクションやスピード感のある展開はありません。それだけに間延びした印象を持つかもしれませんが,SFではなく,重大な岐路に立った時,人は何を選ぶのか。その葛藤を描いた内省的な小説と考えれば,重く響く1冊です。
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生と死の狭間で少女が選んだ決断
近未来、あるウィルスによって人類の存亡が脅かされる世界。主人公の少女は、世界が混沌とする中、周囲の人々との関わりの中で成長し、変化していく。この絶望的な状況の中で、彼女は自身の役割を見つめ直し、重要な決断を迫られるのだ。 私は本書を読んでいる間、何度も考えさせられる瞬間があった。もし、こんな未来が来たら、私はどうするだろう? 答えなど簡単に見つかるはずもなく、ただただ悩み続けていた。特に印象に残ったのは、少女の心の揺れ動だ。彼女は、科学者である両親の影響を受け、理性的で冷静な一面を持ち合わせている。 また、この作品は、SFでありながら、どこか普遍的なテーマを扱っていると感じた。それは、生と死、愛と憎しみ、希望と絶望といった問題である。SF作品は、しばしば未来を描くが、この作品が描く未来は、決して遠い未来の話ではない。むしろ、それは、今、直面している問題の延長線上にあるのかもしれない。生と死、愛と憎しみ、希望と絶望といった問題は、私たちが生きる上で避けて通れないものだ。この小説は、多くのことを考えさせ、生きる上で大切なことを教えてくれる。
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作者の考えが受け付けなかった
なんと言うか、嫌な青臭さが鼻についてちょっと受け付けませんでした。 主人公の女の子が、世界を覆い尽くす病原菌と自分なりの対決をするという話なんですが、ちょっと彼女の考えていることが理解できませんでしたね。年子ごろの女の子の様に見えたかと思えば、筆者の手先としてプロパガンダを振りまく。中盤はもう読むのも辛くて、速く終えたい一心で流し読みしてしまいました。 読み終えるのがもったいない・読み終えたくない。って作品は今までいくつかありましたが、はよ終われって思った本はこれが初めてでしたね。 「ライ麦畑でつかまえて」みたいな青臭さなら歓迎なんですが。まああれはかなり絶妙な塩梅な名著なんで、引き合いに出すのは悪いと思うんですが。
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突きつけられる選択肢は読者を絶望させる
はっきりしないがごく近い未来。世界に存在する全ての人間(女性)はあるウィルスに感染したことが明らかとなった。それは、妊娠した場合、まもなくクロイツフェルト・ヤコブ病(脳がスポンジになる狂牛病で有名となったあの病気)が発症し、やがて死に至る。つまり、妊娠したら死ぬので、種の保存、という意味で人間は完全に詰み、滅亡を迎えるだけとなった。そんな時代に、ある少女は、世界を救うために、周囲の反対を押し切り、一つの選択を行った・・・ 中編くらいで読みたかった。長編になることにより、時代の文化的背景、少女の心理状態の変遷、家族の苦しみ、そして世界全体の絶望状態をリアリティをもって突きつけられるため、押し潰されそうな読書体験となります。 一人の少女の世界を救うための決断、というとティプトリーの名作がすぐに出てきますが、「たった一つの〜」の主人公はその勇気を称えられる形で話が終わりました。しかし、本作の場合、そんなキレイ事ではすまされない絶望的状況があります。主人公一人の決断では、世界は変わらないのです。でも、誰かが決断しない限り、世界は滅亡を待つだけ。 全人類の希望のための少女の選択であり、その選択は正しいもののはずなのに、本作は希望に満ちた終幕を読者に与えてくれません。むしろ、残酷なまでに少女の決断が正しいかどうかの判断を我々読者に強いるのです。 世界の滅亡という背景がなくても、実は我々が日常的に突きつけられる選択でもあります。たまにあるでしょう、誰かがやらないといけないけど、やったとしてもどこまで効果があるか分からない、それをやるかやらないかは自分の意思にゆだねられる、やるという選択肢によって確実に自分に不利益が生じる、そんな状況。 少女の決断を、厨二病的自己欺瞞に基づくものと批判するのは楽です。でもそこで、世界が滅亡するというのにあなたはどうするの?という問いかけが読者を苛みます。 名作となりうる作品なのでしょう。でも、とてもつらい。
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冗長の一言に尽きる
妊娠に伴う致死的なウイルス性疾患、という人類の存亡に関わる重大な問題。この設定と発想はとても興味深いものがあります。しかし、SFというジャンルに楽しみを期待してこの作品を読むと、裏切られるだろうと思います。 SF作品でも、主人公やその家族・友人の心理描写、そして社会に起きる現象を描くことは必要です。そうでないとリアリティが失われます。ところが、この作品の場合はそればかりがダラダラと描かれています。しかも、チマチマした家族内の葛藤とか、訳のわからない社会運動ばかり。後半に入ると飛ばし読みをする状態になります。しかも、驚くような結末も心理描写そのものに感動する要素もなく、「いったい何が言いたいの?」という状態で終わりました。 最近のSF作品は冗長なのが多すぎるように感じます。
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短編だったら傑作でしょうが・・・
原題"The testament of Jessie Lamb" 「ジェシー・ラムの遺言」が文字どおりに本書の内容です。妊娠すると潜伏していたウイルスによるスポンジ脳症が発症して必ず死亡するMDS(母体死亡症候群)が蔓延して、人類が滅亡の危機にさらされるというシチュエーションには興味が惹かれましたが、その対策がウイルスに汚染されていない冷凍受精卵にワクチンを打ったうえで、自分の命と引き換えに赤ん坊を産もうとする少女ボランティアというのはいささか陳腐ですし、Lamb=犠牲の子羊という名前からも、途中で気が付いて、後半は退屈してしまいました。
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冗長に過ぎる
無論、結末の意外性だけをSFに求めるわけではないが、全体の1/3ほどで結末が予想でき、残りは単調に(よく言えば淡々と)さしたる盛り上がりも無く予想された結末へと続くという苦痛。 短編かせめて中編なら、「佳作」たりえたかも知れないのだが。 少なくとも、「たったひとつの冴えたやりかた」と比べるのもおこがましい。 この作品を読んでしまっても、「たったひとつの冴えたやりかた」を食わず嫌いされないよう、切に願います。
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盲信?英断?勇気?暴挙?若気の至り?
なぜ自分がやらなければと感じるのか 人生の意味は 自分の命を使いたい。 盲信?英断?勇気?暴挙?若気の至り? 世界に対して影響を与えたいという、主人公の女の子の強い感情をみて、自分が世界を救うんだという強い気持ちを見て、大人?おじさん?の自分は今何をかんじているのかすぐに答えられない。それ自体が、答えかもしれないが。