作品情報
虐殺を生む器官とは何か。近未来の戦場から、人間の倫理と言語の暗部へ迫る。
後進国で頻発する虐殺の背後に、謎の人物ジョン・ポールの影が浮かび上がる。任務を帯びたクラヴィスは彼を追うが、その過程で、暴力を生む仕組みが個人の狂気だけではなく、言語や国家システムと結びついていることを知っていく。文庫版は早川書房から刊行され、2007年刊単行本の文庫化として確認できる。
レビュー要約
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緻密な設定と硬質な文体、思考実験としての射程を評価する声が多い。暴力描写の重さや冷徹な語り口は読む人を選ぶが、SFとしての構想力と問題意識の鋭さが強く支持されている。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2010-02-10
- ページ数
- 432ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784150309848
- ISBN-10
- 4150309841
- 価格
- 595 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/SF・ホラー・ファンタジー
9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは? ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。
1974年10月東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。 2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。同書は「ベストSF2007」「ゼロ年代ベストSF」第1位に輝いた。 2008年、人気ゲームのノベライズ『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』に続き、オリジナル長篇第2作となる『ハーモニー』を刊行。第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞。 2009年3月没。享年34。 2011年、英訳版『ハーモニー』でフィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞した。 2015年、『虐殺器官』『ハーモニー』の両作が、ノイタミナムービーで映画化されることが発表された。
レビュー
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何回も読み返しているが面白い。
本作の肝は、やはりテーマの移り変わりとその終着点だ。 ジョンポールというアメリカ人を暗殺するという目的が、次々に変わって最後には一つの終着点を得るという展開は本当に美しくて、よく出来ている。
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激重
話が激重なのにすらすら読める… 今読んでも程よく近未来感があっていいと思います。
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ミイラ取りがミイラになる
近未来ミリタリーアクションだと思って購入しましたが、だいぶ違いました。情報管理社会における個人という存在をテーマにした哲学的ミステリー作品……でしょうか。 本文は一人称ですが、冒険譚のそれではなく血なまぐさいシーンでも淡々と述懐しているかのようなどこか冷めた文体であり、その理由も終盤に判明します。 哲学的といっても難しくなりすぎず、ほかにも言語学や社会・経済・倫理・医学などの話題を広く浅く取り入れたバラエティに富んだ一冊です。
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現代を予言した書?
もうこれは予言の書ですよ、ちょっと大袈裟に言えば。 本書の描くラストシーンのアメリカは、現在のアメリカを描写しているとしか思えない。 そしてトランプが使う言葉は、正に虐殺文法をなぞっているようだ。
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母親以外に他者のいない作品かな
20万部超売れている作品で、評論家ウケも良いということで読んでみた。ナイーブでペダンティックな一人称語りで、近未来を舞台にしたSFというか、ミステリー的な作品。殺戮シーンなどはグロテスクではあるが、意図しているのか映像的で少し距離感がある。思想小説というか、作者の主張や「世界はこうだ」という語りを楽しむタイプの小説だと思う。そういうのが好きな人であればおすすめ。 筋立て自体は、「地獄の黙示録」に似てると指摘している人がいるが、アメリカ軍の暗殺部隊の主人公が交通事故にあった母親の延命装置を外したことに悩みつつ、民族虐殺などの首謀者とされる男を追っていく、その謎を探っていく、といったシンプルな構成になっている。 まあ、アメリカは世界の警察をやめようとしているし、ロシアのクリミア編入や中国の台頭など、大国が国際政治の主要なプレーヤーに戻りつつあるような感じもしつつ、中東の不安定な状態は変わらないわけだが、ブッシュ政権下のアメリカの先には、こういう未来もあったのかなという感じはある。 言語学なり、文学(カフカとか)なり、脳科学なりのトリビアを含んだ会話の先に、「虐殺の文法」という本書の核となるアイディア(トリック)があるのだが、イマイチ自分はピンとこなかったのが残念。「万人の闘争」ホッブスを援用してみるなら、強大な力を持った国家が上にいるから人は暴力を控えるわけだが、逆に強力な国家がいない場合だと民兵なりテロなりが頻発する、そこまではいい。だが、それは何らかの利益のためだ。 まあ、世界観にイチイチ突っ込むのも無粋か。あと、ジャンルは違うが中村文則になんとなく似ていると思った。ダイアローグの形式を借りた自問自答というか、主要キャラの主人公とポールとその情婦で会話がスムーズに成り立ちすぎているというか、人物としては同じような感じだ。そのあたりが、他者がいない感じがあり、かつ、「生死」なり「罪」や「罰」なりに対する問答など、案外、読者がかぶるんじゃないかとも感じた。
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世代を選ぶかも
評判の良さは知っていたものの内容については把握せずに購入。タイトルから幻想小説のようなものかと想像していたら、バリバリのスパイ小説で驚きました。登場する様々なツールが近未来的かつ資本主義的なシステムと結びついているなど、スケールの大きさが魅力だと感じました。 ただ、モンティ・パイソンや昔の映画などの話題が頻繁に出てくるので、そのような古のサブカルチャーの基礎知識があるとすんなり楽しめますが、そうではない方はいちいち「?」となるのではないかと思います。私は楽しめました!
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主題はなにか
スペシャルフォースのミリタリーアクションもの。それがこの小説がまとっている衣服だと思います。ただ中身は、人にとって根源的な問いかけ、それが主題なのでしょう。読了後、未だ言葉には出来ていませんので、レビューにはかけませんが…
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なぜかとっつきやすい
難解なのにとっつきやすいのはなぜだろう。ことば、という最も身近なものが題材になっているからなのか。 ポールがどこまで予見していたのか。それとも、ラストもポールの思惑通りだったのか。 さすがの名作だった
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- 大学読書人大賞 第4回(2011年) ・2位