エレベーター
兄を殺された少年が復讐の掟に従い、銃を持ってエレベーターに乗る。地上へ着くまでの短い時間に出会う人々を通じて、暴力の連鎖と選択の重みを詩的な形式で描く。
作品情報
地上までの一分間が、復讐の物語を問い直す時間になる。
Jason Reynolds の Long Way Down の日本語版。早川書房から『エレベーター』として刊行され、公式ページでISBNとページ数を確認できる。
レビュー要約
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詩とタイポグラフィを使った形式が、緊迫した時間感覚と深い余韻を生む点で評価されている。重い題材ながら、少年の迷いと悲しみが強く伝わる。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2019-08-20
- ページ数
- 320ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.1 x 2.1 x 18.8 cm
- ISBN-13
- 9784152098788
- ISBN-10
- 4152098783
- 価格
- 1410 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
エドガー賞YA部門、ロサンジェルスタイムズ文学賞YA部門受賞、ニューベリー賞・プリンツ賞オナー、カーネギーメダルショートリストほか多数受賞! ウィルの兄ショーンが何者かに射殺された。ウィルは「掟」に従うため、兄の銃を手に、マンションのエレベーターに乗り込む。 自宅のある7階から1階まで降りる、そのわずかな時間にウィルが出会うのは…… 兄の敵討ちを実行するのか、それとも思いとどまるのか。 「ポエトリー」という斬新な手法で描き出される、ウィルの復讐の行方に注目!
ジェイソン・レナルズ Jason Raynolds 1983年ワシントン生まれの作家、詩人。9歳から詩を書きはじめ、ヒップホップカルチャーに影響を受ける。2014年にWhen I was the Greatestでデビューして以来多数の小説を発表、書評誌の☆付きレビューやニューヨークタイムズベストセラーを連発。最注目の若手YA作家である。
レビュー
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"掟"と煙草と拳銃と、15発の弾丸と
主人公は15歳の少年ウィル。大好きだった兄ショーンをおととい何者かの銃撃によって失った彼は、泣き寝入っている母親を起こさないよう早朝そっと部屋を抜け出す。兄が箪笥に隠し持っていた拳銃と、そこに込められた彼自身の年齢と同じ15発の弾丸を携えて。その胸にあるのは「兄のために何かしたい」「一緒に行きたかった」という行き場のない思いと、「泣き叫ぶ声」と「サイレン」と「立ち入り禁止の黄色いテープ」が日常のこの街を支配する”掟”だけ。 #1 涙 泣くな。 何があろうと、 決して泣いてはならない。 #2 密告 密告はするな。 何があろうと、 けっして密告してはならない。 #3 復讐 愛する誰かが 殺されたなら、 殺したやつを 見つけ出し、 かならずそいつを 殺さなければならない。 これは彼が部屋のある7階からエレベーターに乗り込み、玄関ロビーのある1階に到達するまでのわずか1分少々の Long Way Down を描く物語だ。エレベーターはなぜか各階ごとに必ず止まり、その度に二度と会えないはずの人々が乗り込んでくる。引き返し不能地点の1階に至った時、ウィルの選んだ選択は? ストーリーもさることながら、本作の最大の特徴は全体がポエトリー、詩の形で構成されていることだ。 ところどころにアナグラムやタイポグラフィがちりばめられ、時には1ページに文章が1行だけ、という箇所さえある。 少年の千々に乱れる心理がストレートに伝わるすばらしい手法だと思う。 本の作り自体も凝っている。各ページは薄汚れたエレベーターの壁を思わせる透かし模様が入っており、各章の扉は階の操作盤、本の最初と最後には洋画でおなじみのケージエレベーターの扉の絵になっている。 一般的な小説本のフォーマットに収まらない技巧の凝らされた構成は好みの分かれるところかもしれないが、普段読書を楽しむ機会の多い方ほど新鮮で面白いと思う。 「おまえも、来るか?」
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各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。
おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。 アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、5階からは亡マーク伯父さんが……。 各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。 *******ここからはネタバレ******* 横書きで、詩の形で綴られるこの物語は、情報が断片的でパズルを解くように真実が明かされていきます。 ショーンの兄貴分のパックは強盗で、ショーンに16発入った銃を渡した。 幼馴染のダニは、8歳の時ウィルとキスした日、撃たれて死んだ。 マーク伯父は、「結晶」の売人になって撃たれ、 父さんは、マーク伯父さんを殺した(と思った)やつを殺したせいで殺され、 フリックはパックを脅すつもりで殺してしまい、 ショーンは、パックの銃でフリックを撃った(これが減っていた1発分)。 いやもうここまで来ると、誰がどう読んでも、その虚しさに呆れることだと思います。 やっと1階に到着して皆が降りていく中、沈黙を通していたショーンの一言が効いていますね。 「おまえも 来るか?」 刺激的だけれども、復讐の愚かさや銃や短絡的思考の危険性を気づかせるには充分な内容です。 私としては、詩の形となっているところが読みにくく感じましたが、だからこその風情もあるので否定はしません。 生死を扱うので、しっかりした中学生以上におすすめします。
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エレベーターを降りている時間のファンタジー
ウィルの兄であるショーンが殺された。アトピーで苦しむ母親のために特別な石鹸を買いに行ったためだ。店はショーンらが住む場所と異なるギャングが仕切っている地域。そこにショーンが足を踏み入れたので殺害された。ウィルが住む地域には掟がある。泣くな、密告するな、復讐せよ、だ。ウィルは兄が隠し持っていた銃を持ってエレベーターを降りる。Lobby階に降りるまでに、ウィルが経験する不思議な出来事が、詩という形態で緩やかに幻想的に描かれる。読み進めながら、怖くなったり笑えたり微笑ましくなったり背筋が凍ったりと意外と忙しい。不思議な体験をした。
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