時ありて
古書ディーラーのエメット・リーは、閉店する書店の在庫から古びた詩集『時ありて』を見つけ、そこに挟まれた手紙を手がかりに第二次大戦下の二人の男、トムとベンの足跡を追い始める。時代を越えて残る断片をたどるうち、彼は時間と戦争に引き裂かれた愛の迷宮へ入り込んでいく。
作品情報
古書に残された一通の手紙から、戦争と時間を越える恋が浮かび上がる。
『時ありて』は、イアン・マクドナルドの Time Was の邦訳で、古書、手紙、第二次大戦、時間移動を重ねた中篇SFである。早川書房版は下楠昌哉訳で刊行され、戦記ノンフィクションを扱う古書ディーラーが、詩集に挟まれた一通の手紙から二人の男の人生を追う。謎解きの形式をとりながら、歴史の断片と恋愛の切実さを静かに結び合わせる作品。
レビュー要約
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古書探索の手触りと、戦時下の秘められた恋を時間SFへ接続する構成が評価されている。静かな余韻を好む読者には響きやすく、派手な時間移動の仕掛けを期待する読者には抑制された作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2022-11-16
- ページ数
- 168ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.7 x 1.7 x 19.4 cm
- ISBN-13
- 9784152101846
- ISBN-10
- 4152101849
- 価格
- 2200 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学
時を超えて彷徨う二人の男の物語。 英国SF協会賞受賞作 古書ディーラーのエメット・リーが、閉店する書店の在庫の山から偶然手にした詩集『時ありて』。凝った造本の古ぼけた詩集には、一枚の手紙が挟まれ、エジプトで書かれたと思われるその手紙には、第二次大戦下を生きた二人の男、トムとベンの人生の破片(かけら)が刻まれていた。エメットはその手紙に隠された謎を追ううちに、二人の男の人生の迷宮を彷徨うことになる。 英国SF界きっての技巧派として知られるマクドナルドが、歴史の襞(ひだ)に取り込まれた男たちの人生を綴った傑作。
レビュー
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英国SFの巨匠による円熟作
話の大きなSFネタ自体はオーソドックスなものでした。 ただそれを、古書から始まるミステリー、過去の戦争、二人の男のロマンス、現代イングランドの主人公が徐々に巻き込まれながら関わっていく個性的な人々、と様々なピースを見せながらゆったりと明かしていく展開はさすがでした。 英国SF作家協会賞受賞作というのも頷けます(ショート・フィクション部門で、長編としては短め。同じ2018年の長編賞を調べたら、こちらも邦訳のある『ウォーシップ・ガール』でした。さらに翌年の同部門が、この作品と似たテーマをもっと捻くってみせたような『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』なのもちょっとおもしろい) 『黎明の王 白昼の女王』からずっと好きな作者なので、『サイバラバード・デイズ』のような多文化SF系作品では、おそらくマクドナルドの最高傑作だと訳者もあとがきで述べている『River of Gods』も翻訳を出してもらえませんかね?
関連する文学賞
- 英国SF協会賞 第50回(2018年) ・受賞