緋色の記憶 (文春文庫 ク 6-7)
過去の記憶が現在の事件に影を落とす心理ミステリー。喪失と罪の感覚を静かな緊張で描く。
作品情報
『2000』は、受賞作として読み継がれる作品です。
過去の記憶が現在の事件に影を落とす心理ミステリー。喪失と罪の感覚を静かな緊張で描く。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 1998-03-10
- ページ数
- 398ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784167218409
- ISBN-10
- 4167218402
- 価格
- 350 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学
ニューイングランドの静かな田舎の学校に、ある日美しき女教師が赴任してきた。そしてそこからあの悲劇は始まってしまった。アメリカにおけるミステリーの最高峰、エドガー賞受賞作。
レビュー
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人間の原罪に対する償いと心の闇を描いた傑作
ネタバレをしないように 文中に気になった文章を 抜書きしてみたい。 まず、P299から 人間ははかなく、人は欲深く、 熱に浮かれやすいというのに、 われわれはすべてをかなぐり捨てて、 自分の幸福だけをわき目もふらず 追求するようなことはしない。 人間のせめてもの美徳、 誇りといえるのは、 自分以外のものにささげる この不可解な真心だと、 それだけはわかっているのかもしれない。 続いてP366から 父はこちらにやってくると、 わたしの肩に手をおいた。 「ミス・チャニングは 優しい心の持ち主だったんだ。ヘンリー」 そして、これが人生の確信だとでもいいたげに、 誤記を強めてつけたした。 「忘れるな。大切なのは心だ」 最後まで読み通せば、上の二つの文章の意味と この本のテーマである、原罪に対する償いと 人間の心の闇が悪を為したという事が 理解できると思う。 やはり名作中の名作だと思う。 1997年度MWA(アメリカ探偵作家クラブ賞) 最優秀長編賞を取っただけの内容であると 理解できるとおもう。
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期待が大きすぎました
原題の「チャタム校事件」が、どんな大事件かと思いきや・・・。とにかく話が進みません。じわり、じわりと少年時の記憶を老人が一人語りするのですが、私にはストーリーも訳文も、もったいをつけすぎていて、好みに合いませんでした。たとえば、タイトルの「緋色」ですが、文中では「深緋」となっていて「こきひ」とルビを振っています。この類の単語使いが頻出して、それを格調高いと捉えるか、眼がつまづくと捉えるかは読者によるでしょうが、私は後者でした。泉鏡花じゃあるまいし。同じ作者の本をまとめ買いしてしまったけど、次を読む気がなかなかしません。
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よくわからない
文章はとても上手。ただ解説ではおさえた筆致というが、冗長なところが目に付く。似たような心象風景の繰り返しだからだ。こういう内容ならミステリにする必要もジャンルわけする必要もないのでは。
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ミステリに仮託した極上のストーリー
ストーリーを追う本ではない。 過去の陰惨な事件の中に埋め込まれた、少年の日の美しくも苦い回想。 一瞬きらめく女性の美しさの前にはすべてが意味を失ってしまう、それがすべての始まりだった。 その美しさは少年だけでなく、その父親である謹厳な校長も、そして妻子ある男性教師も魅了してしまう。 一方、母親や教師の妻からみればその女性への讃嘆は軽蔑の対象でしかない。「男というものは、まったく、、」というセリフに集約されてしまう。 ともに、女性に対し積極的な行動に出ない少年と父親との心の交流は、息子にその真意が伝わりがたいが故にかえって胸を打つものがある。 私が60年の人生の末に苦くも悟った人生の真実がいたるところにちりばめられて、苦い感傷に浸ることしきりだった。 私の読書歴の中でも最高ランクの作品。一気読みだった。
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「チャタム校事件」の恐るべき真相
原題は、The Chatham School Affair(チャタム校事件)。 主人公のわたし(ヘンリー・グリズウォルド)は、 ニューイングランドのチャタムの村で 「チャタム校」の校長である父を持ち、 自身もその学校の生徒である、15歳の少年。 年老いた弁護士となった彼が、 1927年の当時発生した「チャタム校事件」を 回想するという物語構成です。 このストーリーのユニークな点は、 「チャタム校事件」とは、どんな事件だったのか、 その全貌がなかなか見えてこないところです。 物語の冒頭、1926年8月、チャタム校に、美しい美術教師、 エリザベス・ロックブリッジ・チャニングが赴任してきます。 彼女は、やがて妻子ある英語教師、 レランド・リードと親密になっていくのですが・・・。 ヘンリーの紡ぐ物語は、 現在と過去を行きつ戻りつしながら進行していきます。 そこには、1927年に起きた事件に関する公判の記録もあり、 ヘンリーが証言台に立っているようなのですが、 では、どんな事件に関するものなのかは、なかなか明かされません。 この作品は、作品解説にもあるとおり、 「だれがだれになにを為したのか」、 その謎を巡るミステリと言えます。 その真相は、ラストで明かされますが、 それは、ヘンリーのその後の人生を変えてしまうほどの、 恐ろしい内容のものとなっています。 ところで、本書を読んでいて特に印象に残ったのは、 文章が美しいということでした。 抑え込まれた人物描写に思わず引き込まれてしまいます。 原文ももちろん素晴らしい文章なのだと思いますが、 訳文としても優れているのではないでしょうか。 それほど日本語的に美しい小説に仕上がっています。 この作者の文章は、 「雪崩を精緻なスローモーションで再現するような」 と評されているそうです。 文学的な香りのするミステリに、 一度酔いしれてみてはいかがでしょうか。
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深い余韻を放つ回想ストーリー
物語は一老人、ヘンリーの学生時代の回想という形で進む。ヘンリー学ぶ田舎校に赴任してきた美人教師チャニング。妻子もちの同僚教師リードとただならぬ恋に陥る2人だが… 次第に事件の真相が明らかになってくるが、ストーリー上、事件自体はさほど重要ではなく、特別な趣向もない。深い余韻を放つ回想と、フラッシュバックのような強烈なシーンの回顧、ストーリーの流れ自体を楽しむ本。心の奥底にしまい込んだ真実に人はどう対峙するのか。なかなか読み応えが、ある。
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良い作品なんだろうけど…
最初から何となく結末が予測できるような始まりなので、余計に 「結末はどうなの?」 と思って、しっかり最後まで読み終えたのですが、 序盤から中盤までのストーリーの起伏が小さくて、 「やっと読んだか…」という気持ち。 だけど、情景とともに物悲しい感覚が、後からジーンときます。 『このミス』の上位にランクされてましたが、ちょっと物足りないかも。 優等生向けの御本って感じです。
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訳もところどころ変な語句が
自分の信条としてよほどのことがない限り読み止しはしないと 常々思っているが時々これが難儀となる本と出くわすことがある。 難解であり読みこなすのに時間がかかるかまたは退屈極まりない本。 本作は後者に属するが勿論放り出す程のものではない。評価が高い ようなのでこれは意外であった。最後の一点に向かって物語が進行 するが、とにかくそれまでが飽きてしまう。サスペンスではあるの だろうけれど文学ではない。中途半端。 この手のジャンルは詳しくないので本作がどのような位置に属す るかよくわからないのだけれどたとえばメアリー・H・クラークの 作品など読むと面白くて止められなくなる。色々な意味で「楽しむ 為の読み物」の範疇に入るのであれば本作のテーマは別として、とて も読むのに難儀だった理由はさもありなんと思った。