日本の文学賞

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ボーダー&レス

文藝賞

ボーダー&レス

藤代泉

書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
2009-11-07
ページ数
156ページ
言語
日本語
サイズ
13.3 x 1.8 x 19.5 cm
ISBN-13
9784309019475
ISBN-10
4309019471
価格
1320 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

この世界はどこにだって、見えない溝がある。僕ら二人の間にも……新入社員の僕が出会った独特な魅力の在日コリアンのソンウ。二人の友情を通して“世界の今”を描く第46回文藝賞受賞作。

1982年、栃木県生まれ。広告代理店勤務を経て、現在、主婦。2009年、『ボーダー&レス』で第46回文藝賞を受賞する。

レビュー

  • 中田統助

    日本人と在日の青年の微妙な亀裂を描いた秀作です。それでもちゃんと向かい合って付き合っていこうとする二人の姿に感銘を受けます。あまり知られていない作品ですが、こういう時代だからこそ多くの方に読んで欲しい気がします。

  • 無理でした

    主人公(りーりん)とソンウの友情を描く、と帯にあったので「お!」と手に取り読了しましたが、うん、浅いです。とにかく。提示された問題に真摯に向き合おうする主人公の心の葛藤が大きく評価に繋がったと思うのですが。まずなんにせよサブキャラが好きになれない。寺内、まっつんといった人々の、過剰な被害者意識からなる愚痴を聞かされるのが堪らなく苦痛でした。お前ら人を小馬鹿にしておいて自分は被害者面か、なんなんだおい、と。ソンウの冗談(?)も、まあ主人公との間に必要とするスパイスのような役割を持ちますが、いかんせん女性にキツい。主人公が問題なければと思い読み進めるのですが、肝心の一人称で綴られる文にはあらゆる矛盾と過剰なまでの「腹探り」。いい年した大人が、気持ち悪いわ、って思うシーンもちらほら。 肝心の境界線についても、頭の悪そうな主人公によっていくつか最もらしい例が出て終わり。表題の意味をそれと決めたら、戦わせてあげてください。意味のない考察ありすぎて言いたいことをなかなか伝えようとしてこない。 描写も酒とタバコしか頭に残らない、ネタにできない平坦なものでしかない。私がこの登場人物くらいの歳になっても、こんな味気ない青春絶対嫌だ。 そして、一番感情移入できたのは主人公の先輩でしたとさ。 芥川賞とって叩かれればよかったのに。

  • つくづく惜しい!

    差別発言に対して 「あれは在日というくくりに対して言われただけであって、俺個人が言われたわけじゃないから」 と冷静に対応できるソンウが 「お前にはどうでもよくても俺にはどうでもよくないんだよ。国も民族も」と言う。 あれ、ソンウにとって国とか民族とかのくくりは、どうでもいいんじゃないの? 「俺はお前と同類と思ったことはない。俺とお前は違う」 と、ソンウは在日の問題に直面しようとしない日本人の江口に言うけど、それって、江口を日本人というくくりの中で、自分を在日というくくりの中で考えてるってことなんじゃない。結局、ソンウにとって、国とか民族とか在日とかいうくくりは、どうでもいいの? よくないの? それとも、どうでもいいと思いたいけど、やっぱりどうでもよくないの? つまり、ソンウって、今までの在日のように悩む人物? などなど、読みながらもどかしく感じた。 この作品に登場する日本人が持っている在日のイメージは、旧態依然。在日が抱える悩みもそう。両者の関係はこれまでと何も変わっていない。言葉づかいやライフスタイルに新しさがあるので、かえって、嘘っぽく、しらじらしく感じる。どの登場人物も、こんな人、ほんとにいるの? と思ってしまう。 「日本とかコリアとか在日とか、そういうくくり自体を否定する気はないけど、俺はそのどれにも属したくない」 という澄んだ視点を持っている人物のソンウが描き切れていない。惜しい!この人物の延長線上にあるのが差別なき社会だろう。そのような人物は、自分が在日だからって、ああまで悩みません。あの悩み方は醜悪。くくりの中で苦しんでいるこれまでの在日と何も変わらない。文体や小道具で在日のイメージを変えようとしたのかもしれないけど、悩む在日、平気で差別する日本人、無関心な日本人と、今まで通りのキャラが登場して、新たな負のイメージを描き出している。今までの負のイメージをなぞって、新たな差別意識を生んでいる気がする。差別とはイメージ。だから、イメージにくくられないことが大事なんだけど、ボーダーをなくそうとしてボーダーにくくられてしまったこの作品は、つくづく惜しい!

  • 非常に旨い

    私たちの多くが、ここに描かれるちょっと賢くて、悪気はない江口くんではないのかな、と思います。 江口は在日三世のソンウに出逢いソンウについて知ることや、大学を卒業しサラリーマンとして 仕事をしていく中で、「好感の持てる、悪気のない軽さを持った斜に構えた青年」から大人へと 成長していこうとしています。 重くなりがちなテーマですが、粋でスタイリッシュ、尚且つ嫌な上滑りのない確実な文体に 好感が持てます。 ソンウを初め登場人物がみんな魅力的であり、そのそれぞれの感情の襞に心をくすぐられます。 10年後、20年後の江口とソンウを知りたい、と思わせる生き生きとした作品。 今は小学生の息子が、10代後半となったとき、私のブックシェルフからこの本を見つけ出して 欲しいと思える数少ない作品です。

  • よくある若手女性作家のデビュー作

    若い女性作家の書いた、昔からよくある、全く性欲を感じさせない若い男の一人称小説。普通、この手の小説は少女漫画風の恋愛小説になるのが常だが、そこを在日コリアンを絡めた友情小説にしたところが新しい。が、それだけ、という印象も拭えない。次が続くのか、少々疑問に思う。

  • 芥川賞でもいいと思うけど

    下ネタ話がちと過激だけど、芥川賞になってもいい作品だと思う。とても面白く読めました。内容的には、語り手の僕こと「りーりん」と会社の同僚である「ソンウ」と友情物語が中心なんだろうけど、自分的には、僕の軽さや、僕といろいろな女性との恋愛の方が面白かった。特に、フットサルメンバーの女性との肉体関係や人妻との旅行先での事件は刺激的で印象に残った。男性の心情がよく書けてるから、著者は絶対男なんだろうと思ったけど、意外にも女性だった。しかも、20代みたいなので、さらにびっくり。

  • 今まで幸せじゃなかったことはない。なんてステキ!

    いい加減で浅く広くな生き方をしてきた僕と、飄々とした在日三世のソンウの青春物語。 日本人や在日など、そんな風に分けてソンウを見たことはない、自分とソンウの間に線を引いてない、そう思っていた僕に、ソンウは『俺は引いてるよ』と告げる。 この世にはありとあらゆる溝があり、決して埋まることはない。それでも何とか見えないふりをしたり、蓋をしたりして過ごしている。そう気付いた僕。 解決や正解のない事に、正面から向き合い成長して行く様に難しいテーマだと改めて感じました。 あぁ、若い男性の感性だなぁと思うようなエピソードも多々あり、作者の上手さを感じます。

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