日本の文学賞

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ベランダのあの子

長編児童文学新人賞

ベランダのあの子

四月猫あらし

小学6年の颯が、暴力をふるう父と見て見ぬふりの母に囲まれた暮らしのなかで、向かいのベランダに見えた少女をきっかけに、恐怖と怒りの居場所を探していく児童文学。

児童文学家庭内暴力孤独再生小学生

作品情報

だれもいないはずのベランダに、泣いている女の子が見えた。

日本児童文学者協会第20回長編児童文学新人賞入選作。受賞時タイトルは『ベランダ』で、のちに『ベランダのあの子』として小峰書店から刊行された。小学6年生の颯が、暴力のある家庭で押し殺してきた感情と、向かいの部屋に見えた少女の存在を通して、自分の世界を少しずつ見直していく。

書籍情報

出版社
小峰書店
発売日
2022-10-25
ページ数
196ページ
言語
日本語
サイズ
13.5 x 1.8 x 19.4 cm
ISBN-13
9784338287265
ISBN-10
4338287268
価格
1738 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

中学受験を控える小学6年の颯(はやて)には、親友にも話せない秘密があった。たびたび暴力をふるう父。父親の顔色をうかがい、見て見ぬふりの母。そして怒りや恐怖を栄養に体内を蝕んでいく自分自身のどす黒い感情。そんな時、颯は見てしまう。向かいのアパートの部屋。だれもいないはずの真っ暗なベランダに、じっとひざを抱えて泣いている女の子のすがたを……。

レビュー

  • 今だから(今も)語らなきゃいけないこと「暴力」について

    背景はあるにせよ、大国がいきなり戦争(特別軍事行動と呼んでも)を始めた今年以前から既に「子供」の世界にも「大人」の世界にも「暴力」はエンタメで溢れかえり実生活はマネーの一方的な支配で(それを新自由主義と呼んでもいいけど)優劣と勝負がついていた。 現代には暴力があふれかえってる、それに一石を投じた感がある。 普段、児童文学には馴染みがなく偏った見方かもしれないが「大人」には最初、この商社マン父の弱さや狂気、母の逡巡の方が気になるかもしれないけど、そこは児童文学、徹底して小学生目線。 クライマックス、主人公が熱くゆらゆら揺れる夏の「交差点」で携帯が繋がらなかった親友に偶然会い、逡巡を抜けて180度反転してゆくリズミカルな様は「え?古井由吉の杳子?」並みに気持ちが良い。良い方向に。 人物がそれぞれキャラクターが豊かで良く創りこまれていて、え?児童文学?って思った。小学生が主人公なだけじゃん。 読後は気持ちが良いし、とてもお勧めです。 夏の課題図書とかにならないかなぁ!

  • 型破り、だけど目が離せない

    フィクションでよかった! 最初にそう思いました。 児童書にはある程度「型」がありますが、 この作品はまったくの異質。 けれども、目が離せず一気に読み通しました。 描かれるのは父親の暴力に支配される家庭です。 誰の助けもない中で、小6の主人公は 「殴られるのはぼくが悪いから」と 自分を責め続けます。 そんな彼が何をきっかけに変わるかに要注目ですね。 創作とはいえ、これはどこかで起きている現実。 それに触れることは、 多様性を知ることにもつながりますね。 大人にも学びのある一冊でしたよ。 (対象年齢は11歳半以上かな?)

  • 児童虐待と正面から向き合った一冊

    虐待というむごすぎる現実が、冒頭から容赦なく描写されていて、正直なところ読み進めるのがしんどいと感じた。 しかし、このテーマを児童文学で書くのならば、それ相応の「光」が用意されているはずだと、ページをめくり続けた。 ふたりの子どもの恐ろしく悲惨な現実を描きながらも、文章のところどころにユーモアさがある点、物語が進んでいくにつれて颯の心に変化が生まれていく点は、読みごたえがあった。 ここまで悲惨な現実を描いているのに、この本が深く心に残るのは、颯が「ベランダのあの子」への感情を大きく変化させ、行動に移すところと、クライマックスで、颯が担任教諭と友人の理からもらう、とてもあたたかな言葉(行動)があるからだと思う。 颯の感情の変化が、丁寧に書かれていたことも大きい。 最初は読むのがしんどいとさえ思っていたのに、結局のところ最後まで一気に読んでしまった。 豊かな描写力や、いきいきとした台詞、そしてなによりも、作者が颯と「ベランダのあの子」を救いたいと願う強い気持ちが、熱量となって溢れていたのではないかと感じた。 読むことができて、本当によかった。

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