作品情報
翻訳出版の舞台裏から、昭和の出版と著作権の変化を読み解く。
創元社刊。書店データでISBN、ページ数、出版年月、日本推理作家協会賞評論・研究部門受賞が確認できる。
レビュー要約
-
出版実務の現場から歴史を掘り起こす具体性が評価されている。法律や制度の話にとどまらず、当事者の判断と時代の制約が見える点が強みである。
書籍情報
- 出版社
- 創元社
- 発売日
- 2017-08-03
- ページ数
- 255ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784422930763
- ISBN-10
- 4422930761
- 価格
- 2300 JPY
- カテゴリ
- 本/社会・政治/マスメディア
第71回日本推理作家協会賞〈評論・研究部門〉受賞 昭和、平成を本物の出版人として生き抜いてきた著者が、 翻訳出版界を揺るがしてきた数々の事件の正体を解き明かす 出版の中でも翻訳出版の世界はとりわけ奥が深く、また多様で複雑である。 編集者として、児童文学作家として、翻訳者として、 そして翻訳権エージェントの第一人者として……。 戦争の余塵がまだくすぶる占領下から現在に至るまで、 本の世界を縦横無尽に闊歩してきた著者が、 翻訳出版史上の事件を自己の体験と綿密な調査からとらえ直すとともに、 著者の周辺で活躍した個性豊かな出版人、 翻訳者の素顔までを存分に描き出す貴重なエッセイ。 登場する人物約370名、取り上げられた書籍約220冊、 雑誌名20余、出版社名100余。 読者の助けとなるよう巻末には、 本書で語られる主たる翻訳出版に関わる事件(国内、国外)と関連書籍、 法律の関係を示した年表を掲載。 また、本書に登場する人物の名を読み仮名つき人名索引として一覧にしたほか、 出版社名、書籍名、雑誌名、シリーズ名、条約名、法律名、団体・機関名、 その他を含んだ事項索引も付した。 [目次] 第一章 プラーゲ旋風と小山久二郎の失敗 1 無断翻訳伝説 2 ドイツ語教師プラーゲと『ひとつの時代』 3 岩波茂雄と『ユリシーズ』翻訳合戦 4 『青年の心理』と昭和初期の翻訳 5 菊池寛の小学生全集と『青い鳥』 第二章 占領下の超法規の時代 1 『チボー家の人々』と白水社の無念 2 『凱旋門』と『僧正殺人事件』 3 「無断翻訳」の覚書と五十年フィクション 4 岩崎徹太と回状十二号 5 占領下の競争入札と『ペスト』 6 『翻訳騒動記』と『滞日十年』 第三章 平和条約のペナルティと混乱 1 戻ってきた『風と共に散りぬ0 0 0 』 2 『陽のあたる場所』と『ジェニーの肖像』 3 『オリエント急行の殺人』と戦時期間加算 4 「弁護士ペリー・メイスン」の主張 5 「大久保康雄訳」と同時公刊 6 『人を動かす』と『怒りの葡萄』 第四章 十年留保と著作権法改正 1 『ロリータ』とアメリカの旧著作権法 2 『内なる私』の私の経験 3 紆余曲折な『クマのプーさん』 4 「ドリトル先生物語全集」と『大草原の小さな家』 5 『シートン動物記』と二度の差し止め請求
宮田 昇(みやた のぼる) 一九二八年東京に生まれる。元、早川書房編集者。 同社を退職後、チャールズ・E・タトル商会で勤務する傍ら、 数多くの児童書の執筆・翻訳を手がける。 一九六七年に矢野著作権事務所(のちの日本ユニ・エージェンシー)を創業、 一九九一年、日本ユニ著作権センターを設立。 戦前戦後のわが国の翻訳権、出版権の変遷の歴史を熟知する数少ない一人であり、 翻訳著作権に関する著作も多く、斯界の第一人者として知られている。 一九九九年、『翻訳権の戦後史』で第二一回出版学会賞、 二〇〇二年には、第二三回著作権功労賞を受賞。 著書に 『東は東、西は西――戦後翻訳出版の変遷』(早川書房、一九六八)、 『翻訳出版の実務』(日本エディタースクール出版部、一九八九)、 『翻訳権の戦後史』(みすず書房、一九九九)、 『新編戦後翻訳風雲録』(みすず書房、二〇〇七)、 『図書館に通う――当世「公立無料貸本屋」事情』(みすず書房、二〇一三)、 『小尾俊人の戦後――みすず書房出発の頃』(みすず書房、二〇一六)、 『出版の境界に生きる』(太田出版、二〇一七) ほか多数。
レビュー
-
昭和の翻訳出版を知るための好書
翻訳出版界の最前線で活躍した筆者による好書である。実例に即して、翻訳出版に関するさまざまな出来事が綴られており、昭和の時代を振り返るためには欠かせない書となっている。
-
旧著作権法下での翻訳権消滅
こういう本を探していました。 旧著作権法で定められていた10年留保条項(発表後10年 正規翻訳がなかった海外作品は自由に翻訳出版できるという規定)のことがよく分かります。 10年以内に翻訳されていても原作者と契約しない無断翻訳であれば関係なかったとか、 ベルヌ条約未加盟だったアメリカの小説はある時期まで自由に翻訳できたが、その後に英加で同時出版されているという理由で通用しなくなったとか、 有名な児童文学で、物語自体は著作権が切れていたが挿絵画家の権利が存続していて独自の挿し絵に差し替えを余儀なくされたとか、 「なるほど!」というエピソードが満載です。
-
翻訳出版史の諸相を伝えてくれる貴重な書
第71回日本推理作家協会賞は4月26日、「長編および連作短編集部門」が古処誠二さんの「いくさの底」(KADOKAWA)に、「短編部門」が降田天さんの「偽りの春」(「野性時代」2017年8月号)に決まった。「評論・研究部門」は宮田昇さんの「昭和の翻訳出版事件簿」(創元社)が選ばれた。このニュースを聞いて、早速本書を購入した。本書『昭和の翻訳出版事件簿』に登場する人物約370名、取り上げられた書籍・雑誌約250冊、出版社100余というのだからすごい。とりわけ、原著と翻訳で読んだことのある『オリエント急行の殺人』『クマのプーさん』『怒りの葡萄』にまつわる翻訳の秘話は興味を持って読めた。翻訳出版史に関心のある人にはお薦めの書。
関連する文学賞
- 日本推理作家協会賞 第71回(2018年) ・評論・研究部門