書籍情報
- 出版社
- 筑摩書房
- 発売日
- 2004-10-25
- ページ数
- 205ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784480803863
- ISBN-10
- 4480803866
- 価格
- 1826 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
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レビュー
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蕩蕩と融け込んでいきました
物語の舞台となっている多摩川から多摩上水、さらに青梅は、私も住んでいる所なので、また違った視点で、地域を観ることができたと思います。 この作品の中で、好きな場面は、青梅の和紙作りの生き生きとした製造工程の描写です。正確に工程を説明しようとすれば、おのずと退屈な堅苦しい説明文となりがちですが、この作品は違うと思いました。「工程、過程」が生き生きとクローズアップされ、所々、名言がちらほら隠されていますが、私はここから感じ取ったことは、人生の過程こそ生きている実感が持て幸せを感じることができ、そこに魂を籠めて自分という存在を滅して行った時には、後世に残るほどの大業を成し得ることができ、後世の人々の何かの役に立つことができる、ということでした。 根底に、この作家の生まれ育った相馬の気風を感じさせる作品でした。
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買いですが・・・。
太宰治賞受賞ということで読みました。轢死した聾唖の少女の残した手話によるメッセージ、「達雄」の持っていたその少女のものだと言うホルマリン漬けにされた肉片、移動式茶室のプロジェクトを立ち上げた「らいら」の右手の義指等、提示される符牒にものとして少なからず抵抗感を覚えたり、会話の不自然さが鼻についたりもしましたが、個人的にはいにしえのATGの映画のような、良い意味での青臭さが心地よかったです。ただ、内容そのものと題名、それと印象的な表紙との間にはさほどの繋がりがないような気がしたのが、それぞれが素晴らしい分残念でした。
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記憶の断片
物語を読みながら、自分の記憶が蘇ってきた。私も過ごした大学時代。 主人公が子供の時、踏み切り事故で死んだ聾唖の子供の名は私と同じミドリ。又大学生になった主人公が出会うらいなは右手の人指し指の先がない。私も子供の頃、同じ指の先を事故で削いだことがある。そして、大学時代はらいなと同じ空間デザイン専攻。物語に出てくる「明かり」という課題の作品展示も覚えているし、らいなのように茶室を作成した学生もいた。不思議な符合に驚くと同時に、日々生きる中で、たくさんの人々がそれぞれ違いはあっても同じような時を過ごし、その時間を切れ切れに心に刻み、また忘れているのだろうと思った。 日々の生活は確固とした結末という結末はないまま流れていく。一種の区切りのようなものはあっても、日々を生き、考え、時に過去を思い出し・・・。その意味でこれはとてもリアルな物語だと思う。
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曖昧な青春ドラマ
主人公の俺が実家へ戻って映像を作り上げる課題として廃線になった駅の光景を友人とともに作り上げるところから物語ははじまり、初体験の機会に遭遇しながら目的を果たせず腐れ縁が続く女友達、それに和紙で移動茶室を作るキャンペーンを成し遂げようという女学生など、多彩なキャラクターが集合して、独特の浮遊感をもって物語が進んでゆき、特別息を飲むようなスリルこそ感じないが、幼き頃想いを寄せていた少女の遺体の一部をホルマリン漬けにして持っているという友人の倒錯した想い、その要因となった主人公とその少女との関係など、色々な人間模様が存在する。しかし情熱を重ねる恋愛物語でもないし、爽やかな青春物でもない、独特な浮遊感が、最後まで読ませる吸引力になっていたみたい。よかったと思う。
関連する文学賞
- 太宰治賞 第20回(2004年) ・受賞