風味豊かな犯罪: 年刊ミステリ傑作選’76 (創元推理文庫 200-1)
「留置場」は、ジェシ・ヒル・フォードの短篇 “The Jail” の邦訳。閉ざされた制度の空間を舞台に、人種・階級・暴力の緊張が短い物語のなかに凝縮される。
作品情報
小さな留置空間に、社会の圧力と暴力が濃縮される。
東京創元社の年刊ミステリ傑作選『風味豊かな犯罪』に収録された邦訳短篇。単独書籍ではなくアンソロジー収録作だが、受賞作を含む紙書籍として確認できる。
書籍情報
- 出版社
- 東京創元社
- 発売日
- 1980-02-01
- ページ数
- 384ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784488200015
- ISBN-10
- 448820001X
- 価格
- 6470 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/英米文学
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レビュー
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傑作ぞろい
おもしろかったです。
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全体的に小粒な作品群ですが、必ずや貴方の心に触れる一編が見つかる事でしょう。
短編ミステリの達人ホックが前年発表の作品から選んだ粒よりの17編を収録した1976年度のアメリカ年刊ミステリ傑作選です。本書の日本版が刊行されたのは今から35年前の1980年ですが、当時は著者の表記をE・D・ホウクとしていて創元文庫にも栞代わりの紐がついていましたね。本書を読むと徐々に謎解きミステリの火が消えつつあるのを感じてしまい寂しいですが、それでも幾つかは選ばれていてホッとしますね。ちなみに私のお気に入りベスト3は「ミスター・バンジョー」「ストラング氏証拠のかけらを拾う」「ベッドラムの奇計」です。 『風味豊かな犯罪』ジャック・リッチイ著:浴槽一杯のゼリーの謎と殺人一件を私立探偵の「わたし」が捜査するユーモア推理。表題作ながらこの作品がエドガー賞候補5編の1つだったと言うのが少し寂しいですね。著者は本当に器用な職人で平凡なトリックでもそれなりに読ませてしまいますが、私的には不器用なE・クイーンの方が好きですね。『留置場』ジェシ・ヒル・フォード著:偶然に家畜小屋の中に古い車があるのを見つけた私は弟「保安官」の忌むべき犯罪に気づく。ベスト1選定の理由はやや不可解ですが、吉凶どちらかの結末を読者に委ねる緊張感は秀逸です。『ラッフルズと嘆きの橋』バリイ・ベロウン著:怪盗紳士ラッフルズの好評を博した贋作シリーズの一編で、作家O・ワイルドの史実を虚構と絡めて描く。本筋よりもラッフルズの妹ダイナが印象的です。『トナカイの手がかり』エラリー・クイーン著:子供動物園で起きた殺人を探偵クイーンがダイイング・メッセージを読み解いて犯人を暴く。小粒ながらも一定の満足は得られますが、死に際の人がこんなに早く頭が回転するだろうかと思いますね。『ミスター・バンジョー』チャールズ・ボークマン著:裁判の用事で久々に故郷の町を訪れた弁護士の私は若き日の盲目の乞食ミスター・バンジョーとの思い出を回想する。悪い奴らに虐げられた幸薄い人生の老人をそれでも懸命に助けた少年の優しさに涙がこぼれましたね。『ストラング氏証拠のかけらを拾う』ウィリアム・ブリテン著:老科学教師ストラング氏が宝石泥棒の疑いを掛けられた教え子の無実を証明しようと必死の思いで推理する。容疑者以外には犯行不可能と思われる状況を見事に覆す発想の転換トリックが素晴らしい切れ味です。『垣間見た死体』ポーリーン・C・スミス著:偶然近所に住む老婦人の死体を発見した主婦が犯人探しの手掛りを追う。主婦が警察より先に真相を知ったのは推理というより幸運ですが、本編の肝は不幸な家族の悲劇を描いた人間ドラマにあります。『ろうそくの炎』ローレンス・トリート著:奇矯な娘を家政婦に雇った夫婦が彼女を巡る不審な死に遭遇する。本編は理屈で割り切れるミステリというより神秘的な幻想小説の味わいですね。『蝿叩き』フランク・シスク著:イタリアの別荘に住み蝿叩きを持ち歩く金持ちのアメリカ人が彼を追って来た粗野な男と対決する。油断大敵で勝負は一瞬の内に決着し手遅れになってしまいますね。『ファーガスン嬢対JM』ジェラルド・トムリンスン著:図書館司書のファーガスン嬢が卓越した記憶力によって謎の紳士JMの犯罪を突き止めるのだが・・・・。犯罪者に心魅かれる純情な彼女の愛と親切が報われなかったのが切ないですね。『陥穽』ジェイムズ・ホウルディング著:法務大臣が誘拐され政府が身代金を要求された事件には裏の事情があったのだが・・・・。非情な悪の組織を決して信じてはならないのですね。『ラヴ・ストーリー』ヘンリー・T・パリィ著:新聞配達の少年が年上の美人女医に淡い恋心を抱くのだが、彼女は札付きの不良青年に恋をしていて・・・・。どんなに特異な状況になっても変わらずに献身的な愛を捧げる少年の純粋さが眩しいですね。『私立探偵ブルース』ビル・プロンジニ著:何時になく気分が塞ぐ名無しの探偵がドライブに出て不審な三人組と出会い妙な胸騒ぎを覚える。探偵の観察眼の鋭さと悪党に立ち向かう捨て身の姿に感動しましたが、最後の一行を読んで一瞬にして胸が詰まりましたね。『些細な事柄』アイザック・アシモフ著:同じアパートに住む主婦二人の罪のない会話が徐々に緊迫しやがて遂に・・・・。死体の発見と同時に事件が解決するというとても珍しいケースですね。『ベッドラムの奇計』リリアン・デ・ラ・トーレ著:冗談で狂気を装った老人が本当に気違い病院に入れられてしまい、しかも相続人である甥からも裏切られ絶望的になる。イギリスの実在の詩人サム・ジョンソン博士と伝記作家ジェイムズ・ボズウェルのコンビが老人を懸命に助ける姿に感動させられ救出劇の芝居がかった大胆さはユーモラス且つドラマチックでしたね。『メール・オーダー』ジョン・ラッツ著:妻のカタログ販売好きを憂えた夫が歯止めを掛けるのに成功したのだが・・・・。こんな手荒なヤクザも真っ青の販売員が本当にいたら恐ろし過ぎますよね。結末は少々解り難いですが、恐らくヤケクソで自殺する道具になるというブラックなオチでしょうね。『レオポルド警部故郷に帰る』E・D・ホウク著:レオポルド警部が轢き逃げ事件の犠牲になったおじの葬儀に出席する為に久々に帰郷するのだが、次第にある疑惑を抱く事となる。裏の裏を推理する警部の老練な頭脳には感服しますが、極めて珍しいこの態度はやはり警部も人の子だという事なのでしょうね。
関連する文学賞
- エドガー賞 第31回(1976年) ・受賞