作品情報
狂歌は、仮想通貨を軸に読者を作品世界へ導く。
福岡の編集者と広告主の過去が、仮想通貨取引所をめぐる欲望と危うさのなかで露わになる長編。古典的な復讐劇の型を、現代的な金融の舞台に移して描く。 書誌確認では、単行本・文庫として確認できる場合のみ紙書籍の識別子を採用し、雑誌号や掲載媒体の番号は使用していない。
レビュー要約
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題材の切り取り方と構成を評価する声があり、背景知識を持つ読者ほど細部の厚みを楽しめる。一方で、密度の高さを重く感じる読者もいる。
書籍情報
- 出版社
- 日本経済新聞出版
- 発売日
- 2019-02-20
- ページ数
- 284ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.6 x 2.3 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784532171520
- ISBN-10
- 4532171520
- 価格
- 1742 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
◆第10回 日経小説大賞受賞作! 第10回日経小説大賞(選考委員:辻原登・高樹のぶ子・伊集院静)を受賞したのは、古典的とも見える血をめぐる復讐劇を、仮想通貨交換会社というある意味で現在を象徴する場所を舞台に選び、人間が欲望にとりつかれ正気を失っていく様を描き出した本作。人間誰しも自制心で抑えている欲望が何かのきっかけで堰を切ってあふれだした時、必ず犯してはならない禁忌にふれる。そして、禁忌ゆえの抗いようのない魅力にとりつかれ人は墜ちていく。不正な会計操作、結ばれてはならない男女がおぼれていく恋とセックス、余計者を闇に葬る排他的なムラ社会……。 選考会で評価されたのは、作品、そして文章そのものが持つ強烈な身体感覚だった。"肉食系女子"という言葉があるが、ねっとりと濃密な文章は"肉食系"そのもの。「文学から身体感覚が失われて久しいが、その意味でも受賞者は希有な存在だ」(高樹のぶ子氏選評より)九州・福岡の土着性もうまく取り入れ、暗く陰鬱になりそうな題材であるにもかかわらず、カラフルなパッションが加味された力強い作品に仕上がっている。 物語の前半は、ある意味"よくある"女がほれた男のために身を落とす話が展開されていく。タイトルの「狂歌」は「戯れ歌、こっけいな歌、ひわいな歌」という意味。この"よくある"話にふさわしいが、それが初めから仕組まれたものだったとしたら――後半はまさに人間が欲望にとりつかれ「狂」う話に変貌する。
佐伯 琴子 作家 1976年大分県日田市生まれ。一橋大学卒業後、旅行会社に勤務。2008年、夫の転職を機に九州へ戻り、タウン誌の広告営業と制作に携わった後、フリーのライターとして活動。
レビュー
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書きたいことがある新人
この著者には、本人にもまだ理解しきれていない、どうしても書きたい「何か」があるのだろう。そういった作家は必ずしも多くない。今後、彼女が書きながら自分の中に何を発見してゆくのかが楽しみ。最初の受賞作ということで、今後への期待を込めて星4つ。
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想像していたより面白い
出だしが意味不明で読みづらかったが、読み進めていくうちに意味が理解できます。評価が低かったのであまり期待していませんでしたが、ストーリーも面白です。重厚さはありませんが普通に楽しめます。
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濃厚な作品の世界を堪能できた
仮想通貨を扱った数少ない小説として、「ニムロッド」とともに購入。取引所の話が出てくるものの経済小説的ではない(しかも、後半は仮想通貨を離れて違う話へと進む)。ただミステリーとして、なかなか面白かった。仮想通貨を描くというより、欲に狂う人々の業をメインに書かれている。性の描写も多いので官能小説に近い印象も受ける。体を使った表現が多いのはこの作者の個性だろうと思った。 最後には伏線がすべて解消され、なるほど実はそういう話だったのかと納得した。 ただ一点。解説にねっとりした文章とあったが、ねっとりというより「艶のある」という表現の方が近いように思う。
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期待ハズレ
経済小説がテーマにしては脇役に過ぎないセックス含め登場人物の背景の書き込み量が多すぎ主人公のビットが消えてしまった。性愛小説としても新鮮味に欠けてる。のに選者の高樹さんが高く評価してるんだから。その評価した内容を全て含めて全体の3分の2カットしてもこの小説はなりたつ。 最終章になんの説明もなく主題であるはずの秘密の隠匿ビットが持ち主に返還されている。エエー。 (注:後半は飛ばしとばしの流し読みだからこの読後感もあてにならない?
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予想の斜め上をいく展開
恋におぼれ憑りつかれる女性の話…と思って読み進めたら、それだけじゃなかった。 いつの間にか物語に引き込まれていました。面白かった。 感想を誰かと話したくなる作品です。
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盛り沢山
表現が違ったかもしれませんが、作者が日経小説大賞受賞の際に「もっとぶっ飛んだものを書きたい」と、今回は抑えた内容である旨語っていたのが気になり、読みました。盛沢山の伏線を、最後まで拾いきれていない気がしたのは、私の読解力不足?それでも次々「そう来たか」と飽きさせず、最後まで一息に読ませてもらいました。 もう一つ、受賞の際の言葉で「九州の土着的なものを書きたい」というのも印象的でしたが、たまたま最近福岡を旅して独特のエネルギーに刺激を受けたところだったこともあり、立ち上ってくる土地の雰囲気を感じられたのも興味深く読ませてもらった理由かもしれません。 登場人物はどの一人も、好きにはなれなかったけど。 件の切手。私も持っていました。誰に使うか、どの場面で使うか、考えるのが楽しかったのを思い出しましたが、そこまで深読み~~~???(そしてちょっとくどい笑)ってなると同時に、私の使い方大丈夫だったかしら???って少し心配になりました。それにしても、あの切手だけでここまで構想広がるんだ!という驚きもあります。
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地方の権力者と近親相姦
近親相姦を扱った、東大卒の官能小説家・佐藤亜由子の自伝的遺作「花々の墓標」を彷彿とさせる。東北のある地方出身の作者(=主人公)の父親は、地元の有力者で地位も財力もある人物だが、作者と姉を日常的に犯し続ける。(そんな父親は、千葉での実子虐待殺人で逮捕された犯人のように、社会的制裁を受ければよいのだが)父親の家庭内外での権力は絶対的で、妻も娘たちも逆らえない。姉は精神を病んで寝たきりになり、妹である作者も自殺してしまう。 山奥や離島、その他の地理条件であっても、陸の孤島のような地方には、近親相姦は結構あるようだ。交通が不便なので、閉じられた狭い村社会で完結してしまう。あからさまな近親相姦でなくても、まわりまわって、繋がってしまうことが多い。また、夜這いの風習の名残なのか、あえて曖昧な表現をさせて頂くが、男女関係に境目がない傾向もある。厳格な一夫一婦制などは、近代が持ち込んだものに過ぎない。 かつてそのような地方に住んでいたことがあるが、関東の都市部で生まれ育った自分には、初めて見るような奇形の人々を時々見かけた。だが、天才狂人紙一重と言うように、打ち捨てられたような、うらさびれた田舎から、桁外れの天才や美男美女や成功者が出ることもある。 こういう人たちの中には、地元で時にあくどい手を使って不動の権力を確立し、闇勢力と手を組んで、中央や京阪神の政財界と繋がり、隠然たる大きな影響力を持つようになる一族もいたりする。 この作品は、仮想通貨の取引というきわめて現代的な題材を借りて、重層的近親相姦から能力の高い者として生を享けた「勝ち組」たちが、それでもやはり「人外の境」を生きねばならぬ宿命を描いている。 日本社会に遍在しながら、タブーとされてきたテーマに挑んだ佐伯氏。女性作家としては画期的快挙だと思う。中上健次の描く、和歌山の路地の世界に通じるものもある。 作中で繰り返される「血が繋がった異性でないと愛せない」というニュアンスの言葉は、雑種の自分としてはよくわからないと思ったが、思い当たる節があった。 僻地の人々は排他的だが、一旦胸襟を開いてくれると、地域の人々が皆仲良し家族のような、濃密な人間関係を築くことができる。そんな田舎で暮らした歳月は、楽しいことより辛いことの方が多かったが、自分にとっては、死んであの世に帰るときも、ずっと携えていきたい、かけがえのない宝物のような時代である。辺鄙だからこそ、手つかずの美しい自然も残っており、水・土・空気・言葉、その土地独特の全てが、そこで生まれ育ったもの、そこに縁があったものを、他では決して得られない、特異な絆で結びつけるのだ。 故あって最近、九州にあるその町を再訪し、現地の書店で本書を購入し、読んだ。何かの巡り合わせだと思う。自分がその土地で暮らした意味、離れねばならなかった理由、長年の疑問やわだかまりが氷解した。心が震え、一気に読了した。一生に一度あるかないかの、素晴らしい読書体験を与えてくれた佐伯氏に、心より感謝申し上げます。
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なんというか
何というか、全体的に情緒的で、もっと冷静になれよと言いたくなる。 仮想通貨にしてももう古びたテーマだし(というか刻々と変わっていてすぐ意味が陳腐化しそうな?)また切手に込められた短歌を深読みしてああだこうだと悩んでいるのはとても不自然な感じ。そんなとこに謎、込めないでほしい。 官能的な描写というのも近親相姦に絡めたどろどろした感じで、一昔前のエロチシズムの印象。日経新聞の賞受賞作ということで期待して読んだがやや残念。
関連する文学賞
- 日経小説大賞 第10回(2018年) ・受賞