作品情報
Michael Connellyの表現世界を伝える『ラスト・コヨーテ』。
『ラスト・コヨーテ』は、Michael Connellyによる作品。dilys-awardの受賞作として知られ、作者の関心や表現の特徴を示す一作である。
書籍情報
- 出版社
- 扶桑社
- 発売日
- 1996-06-01
- ページ数
- 336ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784594020002
- ISBN-10
- 4594020003
- 価格
- 472 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/外国文学研究/英米文学
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おれは、長い間自分が任務を抱えていると思っていた。
ボッシュシリーズ4作目の本作は、ボッシュのかかえるトラウマを克服する4部作の最終作と言えるのではないでしょうか。 ボッシュのかかえるトラウマ、つまり、自分のせいで母は殺されたのではないかという心の深淵にある意識の克服を、これまでの作品をとおして、まさに本作で決着をつける、といった趣を感じます。 本作が精神分析医カーメン・イノーホスとの面談場面から幕を開けることが象徴的に示しています。 第一作「ナイトホークス(原題Black Echo)」からすでに母親のことが触れられており、前作「ブラック・ハート」では、ボッシュがハリウッド署に左遷される原因となったドールメーカー事件に絡む民事裁判の中で、ボッシュの心の深淵に、ボッシュの母親が娼婦であったことを原因とする復讐心があるのではないかと指摘されるなど、今のボッシュという人間(不寛容さ、フラストレーションを昇華できず、腹を空かせて、悲しくて、同時に脅しつけるような何かがある最後のコヨーテのような存在)が形成される根底に、ボッシュの母親が殺害されたことが大きな影響を与えていることが触れられてきました。 そして、ついに本作において、ボッシュが自身のトラウマと正面から向き合うことになります。 「おれは、長い間自分が任務を抱えていると思っていた。ただ、おれは、それが何なのか知らなかった。あるいは、つまり・・・それを認めていなかったんだ。たぶんおれは怖かったんだ。おれはそれを避けていた。長い歳月。とにかく言わんとしているのは、おれがそれをようやく受け入れたということなんだ」 母親の死は、長い間価値のある人間と見なされていなかったがため、真剣に捜査されず闇に葬られたまま放置されていることを知りながらも、これまで向き合うことができなかったボッシュ。 そんな本作、ボッシュが自身の内面に向き合うカウンセリング場面が多く描写され、ゆったりとしたスタートを見せるものの、事件が動き出す中盤以降、グイグイと読ませるスリリングな展開もあり、前作同様、最後まで飽きさせません。 特に、母親に関するトラウマにあわせて、自身の行動から引き起こすことになる新たな事件の責任を感じ、その対価を支払う必要を感じるボッシュの気持ちがヒシヒシと伝わってくる展開には驚かされます。 思うに、マイクル・コナリーは、「ナイトホークス」執筆の段階で、本作にいたるまでを、ボッシュという人間が自身のトラウマを克服する物語を4部作構成でつくりあげるということを、すでに頭の中で作り上げていたのかもしれません。 コナリーは、本作でボッシュシリーズは一段落させ、ボッシュが登場しない「ザ・ポエット」を発表した後、再び一段間ステージがあがったボッシュシリーズをスタートさせます。 Amazon Primeのテレビドラマでボッシュを初めて知り、その後原作を読み始めたのですが、ドラマと違った原作の面白さにすっかりはまっています。 マイクル・コナリー作品には、エンタメ要素をバランスよく取り込みながらも文学的クオリティーの高さを持つ筆の巧さを感じます(レイモンド・チャンドラーに近いかもしれません)。 次のボッシュシリーズスタートの「トランクミュージック」では、ドラマではすでに結婚、離婚している、もとFBI捜査官エレノア・ウィッシュが再登場するようで、ボッシュクロニクル的にとても楽しみです。
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ハリーボッシュシリーズ第4作目
第1作目から発表順に読んでいますが、このシリーズはどんどん面白くなりますね。 AmazonプライムオリジナルのTVシリーズも並行して観ていますが、小説、TVシリーズ、どちらから始めても楽しめる作品だと思います。 今回はハリーの母親の事件に関するストーリーです。TVシリーズでも少し描かれていた題材です。 相変わらず、読み始めると止まりません。この緻密なストーリー展開がたまらないです。 次は「ザ・ポエット」→「トランク・ミュージック」と読み進めていきたいと思います。 TVシリーズの方も、もうすぐシーズン5が配信されるようなので、楽しみです。
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33年前の“母親殺し”に挑むボッシュの行き着く先は・・・
“当代最高のハードボイルド”、“現代ハードボイルドの到達点”、 マイクル・コナリーの<ハリー・ボッシュ・サーガ>シリーズ第4弾。 ’96年、「このミステリーがすごい!」海外編第7位にランクインしている。 今回ボッシュは、上司とのトラブルで強制休職の処分を受け、精神分析医のカウンセリングを受けている。そんな彼は、この時間を利用して、彼自身のトラウマとも言うべき33年前の、母親殺しの未解決事件と対峙するのである。「おれは・・・母を殺した犯人を見つけるつもりなんだ」。 上巻は、このカウンセリングの場面から始まり、かつての母親の友人に会ったり、当時事件を担当した元刑事を訪ねてフロリダに出向いたり、彼の孤独な捜査が続く。 下巻にはいり、ストーリーは一気に転回する。新しい恋人との出会い、今は亡きもうひとりの元刑事の妻への訪問、上司の殺害事件、そしてついに実現した母親殺しの容疑者との対決。例によって、二転三転する真相への道。苦難の末にやっとたどり着いた哀しい真相。 そしてボッシュは、今回の件で新たな原罪を背負ってしまうことになるのだが、果たして今後の彼の行き着く先は・・・。本書は、そんな余韻を残す傑作である。
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ハリー・ボッシュの分岐点となる傑作
『ナイト・ホークス』から始まる一連のボッシュ・シリーズ作品の中でも、ボッシュのトラウマとなっている母親殺しの過去の事件を追う本作を読まずに、ハリー・ボッシュは語れない。ボッシュのキャラクター形成上においても重要な分岐点ともなっているのが本作『ラスト・コヨーテ』であり、初期の作品の中では間違いなく傑作のひとつと言える。 ボッシュが自らの過去と向き合い、それを克服しようと苦しみ、悩み、もがく姿が上手く描かれており、本作でコナリーはボッシュというキャラクターを確立させたのだと思う。 私は根っからのボッシュ・ファンなので、英語の原書と併読するほどに好きな一冊である。
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第1作から読んできてほしい作品
1995年発表の本作品は、「ハリー・ボッシュ刑事」シリーズの第4作目にあたります。 冒頭のシーンは、カウンセリング。上司とあるトラブルを起こしてしまったボッシュ刑事は、「ストレスによる強制休職(ISL)」処分となり、カーメン・イノーホス医師の定期的な面談を受けることに。 心の闇を探られるうちに、ボッシュ刑事は、トラウマとなっている事件を単独で探ることを決意します。 それは、娼婦であった母、マージョリー・ロウが1961年に11歳の彼を遺して殺された、未解決の事件だった…。 殺害された母親のことは、第1作から語られてきていることなので、いよいよその謎が取り上げられるのか、という思いを強く抱く作品です。 作品の設定の1994年より33年前の事件ですが、警察の倉庫には当時の調書や証拠が保存されていた、というのは、「殺人罪に時効なし」の国、アメリカならではの設定といえます。 日本でも、本年(2010年)、殺人罪の時効が撤廃されたことから、近い将来こうした過去の事件を洗い直す設定のミステリが書かれることになるかもしれません。 このシリーズが読者を魅了しているのは、何といっても「予想外の展開」が待ち受けていることですが、本作品でも下巻に入ってからの展開は、全く考えてもいなかったものでした。 ただし、この衝撃度は、第1作から読み続けてきた読者ではないと味わえないものなのです。その内容は、もちろんここでは触れませんが、言えるのは、第1作から読んでこその作品だということであります。 そして、「驚きの真相」もこのシリーズならではのものでした。 ここまで工夫された作品を書き続けることができる作者の力量は、並みのものではないと言えましょう。 ちなみに、題名の「ラスト・コヨーテ」にも第1作から描写されてきた事柄が活きています。 ハードボイルドらしさを感じさせる、深みのあるタイトルだと思いました。
関連する文学賞
- ディリス賞 第5回(1996年) ・受賞