ウィーン1938年 最後の日々:オーストリア併合と芸術都市の抵抗
高橋義彦(著)
1938年のオーストリア併合を、首相クルト・シュシュニクの抵抗と、芸術都市ウィーンに生きた文化人・芸術家たちの苦悩を通して描く歴史書。ナチス・ドイツの侵攻によって独立国家と豊かな文化が崩壊していく過程をたどり、政治と文化が直面した危機を考察する。
作品情報
オーストリア併合で芸術都市ウィーンの文化が崩壊していく日々を描く。
1938年2月のヒトラーとシュシュニクの会談から、ドイツ軍の侵攻、国民投票、そして併合後までを追う。フロイト、エリアス・カネッティ、ウィトゲンシュタイン家などをめぐる危機も視野に入れ、文化と政治が交差するウィーンの緊迫した時間を描き出す。第75回芸術選奨文部科学大臣新人賞の評論部門を受賞した。
レビュー要約
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ウィーンに残るオーストリア併合の傷痕を見つめ直し、政治史と文化史を結び付けて描く視点が注目されている。歴史的事件を多様な人物の経験からたどる構成は、現在を考えるための読書としても受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 慶應義塾大学出版会
- 発売日
- 2024-08-06
- ページ数
- 296ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 18.8 x 12.7 x 1.8 cm
- ISBN-13
- 9784766429725
- ISBN-10
- 4766429729
- 価格
- 2970 JPY
- カテゴリ
- 本/ノンフィクション/歴史・地理・旅行記/歴史/その他
フロイト、カネッティ、ウィトゲンシュタイン一家に迫る危機 1938年2月、ヒトラーの山荘ではオーストリア首相シュシュニクとの緊迫したやりとりが行われていた。 その後の、オーストリア独立を問う国民投票の挫折とナチスによる武力侵攻……。 独立を守ろうとする首相たちや、文化人や芸術家の抵抗や亡命を軸に、 芸術都市ウィーンの緊迫した日々を描く注目作。 【目次】 序章 一九三八年の「輪舞」 第一章 オーストリア併合への道 一 ハプスブルク帝国からシュシュニク政権まで 二 ベルヒテスガーデン会談 三 シュシュニクの抵抗 第二章 併合前夜の芸術家たち 一 ワルターとオペラ『ダリボル』 二 ヴェルフェル夫妻の愛憎 三 カネッティ夫妻の精神不安 第三章 オーストリアの一番長い日 第四章 ヒトラーのウィーン 一 挫折の街 二 勝利の街 三 暗黒の街 第五章 ヒトラー支配下の文化生活 一 フロイト一家の脱出 二 ウィトゲンシュタイン家の姉弟喧嘩 三 ヴェルフェル夫妻のピレネー越え 終章 それぞれの一九四五年 人名索引
高橋 義彦 (たかはし よしひこ) 北海学園大学法学部准教授。1983年生まれ、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(法学)。 主要著作:『カール・クラウスと危機のオーストリア――世紀末・世界大戦・ファシズム』(慶應義塾大学出版会、2016年)、『民主主義は甦るのか?――歴史から考えるポピュリズム』(共著、同上、2024年)ほか。
レビュー
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今もなお新しい課題へのいざない
この時代について書かれた本は数知れませんし読みもしました。この本に登場するその時代に生きた人々についても知っているつもりでしたが、この本の中ではこれまでと違った姿を見せてくれたように感じます。本が届いて開いて、そこから一気に読み終えました。肩ひじ張らずに読める内容でありながら様々な角度から、これからもありつづける決して過去のものではない課題へと我々を導いてくれる一冊であると思います。
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ドイツ的なもの
久しぶりの近現代史の本でした。オーストリア併合(アンシュルス)は。知識とは知っていましたが単に第二次世界大戦の導火線といった程度の認識しかありませんでした。本書を読んで認識を新たにしました。 併合の可否を決める国民投票でオーストリア人は大ドイツ的なものを求めて、99.73%の人が併合に賛成しました。 しかし、ドイツ的なものは1つではありません。そもそもワイマール後のドイツ、第三帝国は、辺境にあったプロイセンの流れをくんでいます。しかしドイツ語を話し生活している人たちの文化的背景はバラバラです。オーストリアはハプスブルグ、北ドイツはプロテスタント、ライン川流域はフランスの影響を、南ドイツはイタリアの影響を強く受けています。要はばらばらだった。ハプスブルク帝国は領邦国家であって統一国家ではなかったのである意味当然です。併合後のオーストラリアの歩みは、そのギャップを痛感する歴史でした。結局、第一次大戦の過酷な戦後処理のため目がくらんでしまった、そんな感じがします。 併合が進む中、流れにあらがう人々、特に首相だったシュシュニクは印象深い。日本ではほとんど知られていない彼の軌跡をたどるだけでもこの本を読む価値があります。それとかの哲学者ヴィトゲンシュタインがウィーンに残る姉妹たちの安全を確保するために役人と掛け合っていたとはしりませんでした。叶わぬ願いですが、著者と同じくどんな会話をしたか知りたいと私も感じました。 そもそもオーストリアの立ち位置は微妙なものがあります。併合された被害者の側面と、ユダヤ人への迫害や連合国との戦闘に加わった加害者の側面。戦後、オーストリア理念を思い出すことによって、彼らは過去を忘れる道を選び、ドイツとは違う道を進むこととなります。両国の極右政党の戦後の歩みや現状には大きな差があります。 その端緒となった、オーストリア併合と再独立のプロセス、ここまで、明確にわかりやすく説明する和書はみたことがありません。一読をお勧めします。