文字を作る仕事
ヒラギノや游書体を手がけた書体設計士が、文字を作る仕事の現場と思想を語る半自伝的エッセイ。読みやすさ、美しさ、媒体との相性をめぐり、目立たないからこそ大切な文字の働きを平明に伝える。
作品情報
読まれるために目立たない文字の、静かな設計思想をたどる。
晶文社刊。フォント制作会社「字游工房」の代表として書体を設計してきた著者が、仕事の入口から本文書体の理想、技術の継承までを語る。Amazon JP では紙書籍の ASIN として ISBN-10 と同じ値を採用できるため相互補完した。
レビュー要約
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書体の見えにくい働きに光を当て、読みやすさと記憶に残る美しさを両立させる著者の仕事を評価している。半自伝としても、媒体の変化に応じて文字を考え続ける姿勢が伝わる。
書籍情報
- 出版社
- 晶文社
- 発売日
- 2016-07-09
- ページ数
- 235ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.5 x 2.2 x 19.3 cm
- ISBN-13
- 9784794969286
- ISBN-10
- 4794969287
- 価格
- 1980 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
【祝・第58回 吉川英治文化賞 受賞】 書体設計の第一人者が考える理想の文字とは何か? 本や新聞、PCやモバイルなどで毎日、目にする文字。 当たり前のように存在しているが、じつは読みやすさや美しさを追求するデザイナーの手によって生み出されている。 フォント制作会社「字游工房」の代表にして、書体設計士の著者は、どのように文字作りの道を目指し、歩んできたのか? これまでに制作した文字。その文字に込めた思想。理想の文字。影響を受けた人たちとの交流……。 「水のような、空気のような」書体を目指して活動してきた37年間を振り返り、これからの文字作りにつなぐ思いをつづる。 第65回(平成29年)日本エッセイスト・クラブ賞受賞
◇鳥海修(とりのうみ・おさむ) 1955年山形県生まれ。多摩美術大学卒業。書体設計士。79年株式会社写研入社。89年に有限会社字游工房を鈴木勉、片田啓一の3名で設立。現在、同社代表取締役。大日本スクリーン製造株式会社のヒラギノシリーズ、こぶりなゴシックなどを委託制作。一方で自社ブランドとして游書体ライブラリーの游明朝体、游ゴシック体など、ベーシック書体を中心に100書体以上の書体開発に携わる。2002年に第一回佐藤敬之輔顕彰、ヒラギノシリーズで05年にグッドデザイン賞、 08年に東京TDC タイプデザイン賞を受賞。京都精華大学特任教授。
レビュー
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豊かな人生に乾杯
庄内の景色が目に浮かぶ。こんな幼少時代を過ごせたら幸せだったと思う。すばらしい人柄が伝わる良書!!!
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書体設計士の仕事
『明朝体の教室』の書評で書体設計士・鳥海修さんを知り、旧著の本書を入手しようと探しましたがネットには高価な古本しか出品されておらず、古書店でもみつかりませんでした。諦めようかとも思ったのですが念のためAmazonで再検索したところ定価で残り1冊があり、発送は1ヵ月後になっていましたが即クリック。 2週間後に新刊が届きました。 Mac OSに標準搭載されているヒラギノ四書体・オリジナルの游書体の制作者であり、文中ではDTP以前のモリサワや写研など写植を使用していた頃の話にふれ懐かしく読みました。
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表紙の文字を含め
文字にデザインがあることに興味を持ちました。また、この本が 日本エッセイストクラブ賞を受けられたことを知り、楽しく 拝読しました。
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あたり前の大切さ
WEB、広告、出版、建築、ファッションなど、デザイナーが関わるジャンルは様々です。 華々しいイメージの強いデザイン界の中でも、文字を扱う「フォントデザイン」は、日本の場合、従来はあまり顧みられなかった分野だと思います。 今、私たちの暮らしは、本当にたくさんの「フォント」に囲まれています。毎日意識しなくても、仕事でのパソコン作業やプライベートでのメール、SNSのやりとり、雑誌やネットでの情報蒐集や読書、何気なくスーパーで手にするパッケージなどなど、当たり前のように、私たちは毎日「フォント」に接しています。 けれど、その画面や印刷物に表示されている文字の形、つまり「フォント」がどんな風に、どんな人々につくられたものなのか、考えを巡らす機会はあまりないように思います。 そもそも、画面に表示されたり、本に印刷された文字について、あまりにも当たり前に身のまわりにあふれているため、そのフォントを「誰かがデザインしている」のを意識すること自体、皆無ではないでしょうか。 もっとも、それこそが「フォントデザイン」の本懐なのかもしれません。 現在最もポビュラーな欧文フォントのひとつである、Times New Roman の開発に携わったフォントデザイナーであり研究家でもある、スタンリー・モリスンに、こんな言葉があるそうです。 「あたらしい活字書体のデザインは その新鮮さにたれも気づかないくらいに良くできているべきである。 もし、あたらしい活字書体が控えめで 完全なまでの静寂なたたずまいを備えていて それが良く考えてつくられていることに人びとが気づかないなら その活字書体は優れた活字書体といえるのだ。」 私たちが「デザインされていることを意識しないで済む」ほど、「水のような、空気のような書体(本書より引用)」として、当たり前に受け入れられる「書体/フォント」デザインの世界には、どういった人々が携わっているのか。その人たちがどんなことを考え、どうしてその仕事につくことになったのか。そしてどのような考えで、今もなおフォントを作り続けているのか。 日本のフォントデザインのトップランナーの一人である著者自身の経験からもたらされる、素朴で率直な文章が楽しく、心地よい読書体験でした。 具体的で直截的な「フォントデザインのノウハウの裏側」のような記述は少ないため、そういった実際の開発に関する知的好奇心を満足させるには物足りないかもしれません。けれども、日常生活の中でほとんど顧みられることのない「フォントデザイン」という分野に関わる人々への興味をかきたてる「エッセイ」として、私は気に入っています。 「フォントデザインってなんだろう? 何やってるの? どんな人がやっているの?」 そんな「フォントデザインの世界」への興味の入り口としておすすめしたい良著だと私は思っています。 独特のタイポグラフィで知られる平野甲賀氏の装丁もお気に入りです。 追記 もしも具体的な書体開発の過程に興味がある方は、「一〇〇年目の書体づくり『秀英体 平成の大改刻』の記録」(大日本印刷)が面白いかもしれません。本著の著者・鳥海修氏も開発に関わっています。