時の子供たち (下) (竹書房文庫 ち 1-2)
滅びゆく人類と、別の知性へ進化していく生命を壮大な時間軸で対比するSF長編。
作品情報
『時の子供たち』は、エイドリアン・チャイコフスキーの受賞作として作品世界の核がよく伝わる一冊です。
滅びゆく人類と、別の知性へ進化していく生命を壮大な時間軸で対比するSF長編。 書籍として刊行確認できるため、識別子は紙書籍の ISBN を基準に整理しました。
レビュー要約
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設定や題材の強さだけでなく、人物の揺れや読後に残る余韻を評価する声が目立つ。一方で、扱う主題の重さや癖のある語り口は読む人を選ぶ面もある。
書籍情報
- 出版社
- 竹書房
- 発売日
- 2021-07-16
- ページ数
- 367ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.5 x 1.7 x 14.8 cm
- ISBN-13
- 9784801927407
- ISBN-10
- 4801927408
- 価格
- 990 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
蜘蛛たちは文明を紡ぎ、〈理解〉を伝達していく。 その星は進化した猿たちのものになるはずだった――。 ドクター・カーンが眠りについてから約2千年が過ぎた。 宇宙広くに拠点を持っていた人類だったが戦争により文明は崩壊し、地球は死の星になっていた。 発達した科学技術を誇った時代は古帝国と呼ばれて、なかば伝説として語られるのみ。 辛くも難を逃れ生き残った人間たちは、宇宙船で交互に人工冬眠をしながら唯一の希望を目指していた。 古帝国がおこなったと言われる、テラフォーミング計画の星を。 目的の星に近づいた宇宙船は人工衛星からの救難信号をキャッチする。 居住可能な惑星を眼前にして、人類の前に現れたのは――。 一方、蜘蛛たちは遥か頭上で起きていることを知る由もなく、蟻との全面戦争へ突入しようとしていた。 クラシックSFの面白さと、蜘蛛の文明の発展と共に冒険小説や軍事小説としての面白さも加わる傑作長篇。
レビュー
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時の子供たちの栄枯盛衰/読み応えのあるSF!(ネタバレ注意)
●人類最後の避難民の物語と緑の惑星での世代を超えて紡がれる蠅取蜘蛛の物語。本書には多くの物 語や教訓、SFガジェットが詰め込まれている。知性を獲得した蜘蛛の進化の歴史、例えば信仰心の芽 生え、産業革命、繰り返される争い、疫病の蔓延。加えて雄蜘蛛のジェンダー差別や自立への渇望な ど。 一方、避難船ギルガメシュ内での数百年にわたる反乱や混乱。人工冬眠を繰り返す主人公の目線で 描かれる人類最後の人達の変貌。時の支配から解放された人間なのではなく、時に翻弄された人間だ ったのではと弥が上にも思い知らされる。ただひたすら明日が来ることを待ち続ける女性の深い愛に 触れ、涙が止まらない。 この二つの物語が一つに収束した時、そのドラマは壮大な宇宙SFとしても一級品であるし、知性 の限界とそれを打破する知恵について考えさせる哲学でもあった。 本書を強いて一つのキーワードで言い表すとしたらやはりタイトルにある「時の子供たち」だろう と思うし、それしかないと思う。隆盛を誇る種と衰退の一途をたどる種。ともに時の子供たちなのだ が、この差は何に起因するものなのだろうかと問われている様だ。ラスト数ページの展開にもビック リ。久しぶりに読み応えのあるSFに出会いました。 アーサー・C・クラーク賞受賞作ですが、ヒューゴー賞を受賞してもおかしくない秀作です。
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博士の慢心と蜘蛛達が引き継いでしまったミーム(情報子/文化的複製子)
とりあえずやらかしちゃったなぁ、カーン博士! というのが第一印象です。 自分たちだけで思索し努力し発展していた頃は、イデオロギー戦争なんて起こるはずもなかった。しかしカーン博士が、金属材料を多用した技術体系を惜しみなく与えて、それに加えて思想的な啓蒙もやりまくったお陰なのかそのせいかのか蜘蛛たちの歴史は、人類の歴史のような性格が乗り移りはじめていきます。 これまでのように生体材料を多用する技術体系のままならば、資源枯渇の心配もなく、もちろん資源戦争だって起こらなかったでしょうにね……。
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蜘蛛側の話が魅力的だった。
宇宙船ギルガメシュ側の話を読むのに忍耐が必要だった。主任技師の女性であるレインの言葉遣いが口汚すぎて読む度に不快感が増す。状況からみて仕方ないことだとしても、繰り返されるその口癖と悪態には辟易した。 魅力的で興味深かったのは蜘蛛側の話だ。人間よりも世代交代が早くどんどん社会を築き上げていく。その描写が面白かった。 上巻で混乱して暴走していたカーンは、いるべき場所を見つけた。そして結末。人間と蜘蛛の関係は。ともかく、希望を持てる話になっていたと思う。