日本の文学賞

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冬の龍

児童文学ファンタジー大賞

冬の龍

藤江じゅん

小六のシゲルが、ケヤキの化身に告げられた雷の玉を探すため、親友たちと街の伝承へ踏み込む児童ファンタジーです。神田川の龍、土地の記憶、少年の成長が年末の期限へ向かって絡み合います。

児童ファンタジー土地の伝承少年の成長

作品情報

失われた雷の玉を探す冒険が、少年の冬を大きく変えていきます。

第10回児童文学ファンタジー大賞奨励賞を受けた後、福音館書店から刊行された作品です。早稲田周辺の土地感覚と、龍やケヤキの化身をめぐる幻想が結びつき、少年たちの探索と心の動きを描きます。

書籍情報

出版社
福音館書店
発売日
2006-10-20
ページ数
424ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784834022445
ISBN-10
4834022447
価格
584 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

主人公は小六の男の子シゲル、わけあって早稲田の下宿屋に一人暮らし。ある年の暮れ、見知らぬ若い男が現れ、自分はこの下宿の庭に生えていたケヤキの化身であると告げます。男によると「昔この地から天に昇った龍が残していった“雷の玉”を大晦日までに発見して龍に返さないと、大変な災いが起きる」とのこと。半信半疑だったシゲルも、同級生ふたりとともに玉探しに乗り出しました。古い文献を調べ、社寺をしらみつぶしにあたってゆくうちに、いろんな不思議が身にふりかかってきますが、玉はいっこうに見つかりません。刻々とタイムリミットが迫ります……。 スリリングな展開の中に、少年たちの気持ちや、下宿屋に住む人々の人生模様、そしてお話の舞台となる街の空気までを生き生きと描き、主人公のささやかな成長を印象的につづります。ボリューム満点ながら読みやすさ抜群、さし絵も豊富で、冬休みの読書に最適。

作者・藤江じゅんさんは、これが第一作となる新人。第10回絵本・児童文学ファンタジー大賞「奨励賞」受賞作に大幅に手を入れたのがこの本で、同賞から福音館で作家としてのスタートを切るのは、伊藤遊さん、朽木祥さんに続いて3人めです。落ち着いた筆致で登場人物の性格や暮らしぶりをしっかりと描き、その基礎の上に不思議でスリリングな物語を展開していく力量は相当なもので、街の雰囲気や小さな情景までをていねいに伝える作風は、ストーリーテラーとしての豊かな資質をうかがわせます。本作の舞台・早稲田に長く住み、絵本の復刻を含む“本の仕事”に長年たずさわってきた経験も、作品をつくりあげていく力の源になっているのでしょう。今後の活躍が期待される逸材と言っていいと思います。 挿絵のGEN(げん)さんは、20歳になる年に渡仏し、油彩の修行を続けてきた若いタブロー画家。三年前に帰国してからは、手堅いオーソドックスな風景画や静物画から、徐々に、物語性のある絵へもテーマの幅を広げてきています。初めての挿絵の仕事に大変な熱の入れようで、物語に出てくる場所に何度も足を運び、たくさんのスケッチとともに街の空気も持ち帰ったようです。少年たちの描き分けも文章と映りあって見事。ぜひ注目してください。

レビュー

  • ファンタジーでなければ

    作者の本に対する愛情、特に古書や背取り、 本づくりや図書館に対する愛情が随所に見られ好感が持てる。 丁寧な筆致で描かれる早稲田界隈の情景や、 下宿の人物、季節感なども素晴らしい。 が、龍や雷の玉などのファンタジー要素がそこに必要だろうか? 小槻二郎が生身の人間として現れ、現実世界だけで物語が綴られていたら、 どんなに良かったであろう。

  • ほっと心のあたたまるお話

    シゲルが下宿している九月館は、早稲田界隈にある戦災をまぬがれた古い下宿屋。幽霊がいるかいないかを確かめるために、シゲル、雄治、哲の三人は、証拠の写真をとるために、丑三つ時、南蔵院という寺の前にいくことになった。 そこで、シゲル達は、小槻二郎にあい、楠の化身だという小槻の言葉に半信半疑ながら、雷の玉をさがすことになる。 九月館に下宿している人たちや早稲田界隈がとても丁寧に緻密に描かれている。登場人物も隣に住んでいる普通の人たちで。誰もが自分の人生を大切に前向きに生きているってところが、読んでいて、心がほかほかっと温かく、ぬくまっていく気がしました。 本は分厚いですが、読んでいると、自分も九月館に下宿している一人のような気がしてきて、生きていることに、ああよかった。って気持ちになる。

  • 地味な小学生

    ファンタジー部分をさっぴいても ふつうにおもしろく読める小ネタが多いのだが (書籍姫とか背取師とか) 全体の印象が希薄で残念な気がします。 年越しそばをしみじみすすりたくなる、 下宿ドラマという感じでしょうか。

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