日本の文学賞

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海のまつりごと

芸術選奨文部科学大臣新人賞

海のまつりごと

大久保房男

海をめぐる祭礼や共同体の記憶を題材にした大久保房男の作品。生活、信仰、海辺の時間が重なり、民俗的な感触をもつ散文として読める。

儀礼記憶

作品情報

海辺の祭礼に、人びとの記憶と祈りが重なる。

紅書房から刊行された大久保房男の著作。海のまつりごとという題名が示す通り、海辺の営みと人びとの精神的なつながりを扱う。

レビュー要約

  • 海と共同体をめぐる感覚が落ち着いた筆致で描かれ、民俗的な題材を文学的な記憶として立ち上げる点が評価されている。

書籍情報

出版社
紅書房
発売日
1991-09-01
ページ数
357ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784893810588
ISBN-10
4893810588
価格
2750 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

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レビュー

  • 著者の民俗学への思いが伝わってくる

    登場人物がいわゆる「キャラ」ではなく、一人ひとりの人間として確かに存在しているリアルな感じは、やはり実体験をもとに書かれているからこそだろう。網元の暮らしが生き生きと描かれるが、小説の中でも書かれていたように「食客」をたくさん置いている網元は少数なのかもしれない。 「子ども」という概念は近代に発見されたものと言われるが、ここで描かれる漁村でも子どもが「小さな大人」として扱われているように見えた。端正な文体で描かれながら、ところどころに顔をだすユーモアや皮肉もよい。 最後に原発の問題が描かれるが、これが近代における伝統社会の破壊を象徴的に表現している気がした。そして和歌山では、実際に漁師たちが日高原発の建設を阻止した実績がある。これを実現できたのは伝統的な共同体の力があってこそだし、そこには小説に登場する網元ような「力を行使できる存在」がいて、そこに折口信夫が語った「理想の男性像」が重なっているのではないか。 著者の民俗学への思いが伝わってくる、とても読み応えのある内容。

  • 編集者として作家に注文をつけるのと、自身で小説を執筆するのとはやはり違うようです。

    著者は文芸雑誌「群像」編集長として、多くの作家に厳しく注文をつけ、多くの名作を書かせました。「鬼のおくび」と呼ばれたほどの名伯楽で、阿川弘之さんのエッセイなどを読むと、その模様はよくわかります。又、同じ紅書房からも、文壇と文藝編集に関する書物を多く出しており、それぞれに好著だと思います。誠に優れた作物で読むに値しますし、自分は愛読者の一人でした。 その著者が小説を書いたのには驚きました。はっきり申して失敗作です。テーマがはっきりせず、筋書きと展開等に関しては退屈の一語に尽きます。確かに読みやすい文章ではありますが、作家を辟易させるほどに、日本語に関してはうるさい方のにしては、妙に甘いところがあります。例えば主人公が親友に対して使う「〜なの」という口調が頻出するのに、読んでいて気色悪さを感じるのは自分だけでしょうか? 同性愛を表現しようとしたならば理解出来ますが、どうも筋書きからしてそんな関係とも思えません。誠にどうしてこんな会話文を書いたのか疑問です。 結局は名編集者にとどまっておればよかったのにと考えます。厳しい言い方ですが、中村光夫氏が何故か人生の後半に於いて、やたらと妙な小説を書きましたが、それと同じような無残な姿を見た思いです。

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