作品情報
『失くした季節』は、言葉の密度と題材の力で読者を作品世界へ導く。
『失くした季節』は、金時鐘の関心が凝縮された作品として読める。詩の言葉が、記憶や土地、身体感覚を通して内面の震えをすくい上げる一冊。
レビュー要約
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題材への向き合い方と文章の手触りを評価する声があり、作品の余韻や構成に注目されている。
書籍情報
- 出版社
- 藤原書店
- 発売日
- 2010-02-19
- ページ数
- 181ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784894347281
- ISBN-10
- 4894347288
- 価格
- 2750 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
沈黙十年のあと--今、その裡に燃える詩。 八十歳を超えてなお闘いの姿勢をくずさぬ、今最もラディカルな詩人の最新詩集。
レビュー
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何回か読んでみて
2011年の高見順賞、受賞作らしい。そもそも高見順賞が何なのか知らなかった僕ですが。。。 一度通読した直後にはピンとこなかったこの本でした。しかし、何故か?その後、何回か少しずつ 読み返す事になった。そして、言葉(日本語)をとてつもない次元で使いきる世界に圧倒されて いきました。もちろん、そこから想起されるものも読む度に深度を増す。 決して文学賞を受賞したから素晴らしい作品だとか、受賞したから素晴らしい作家というつもりは さらさらありませんが、今の僕が感じるのは、この作品、作家はノーベル文学賞を受賞しても 不思議ではありません。
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日本語を食い破る日本語の輝き
金時鐘(キム・シジョン)さんの著書は詩集『猪飼野詩集』『化石の夏』、評論『「在日」のはざまで』を読んできたくらいで、熱心な読者とは言えないが、2回ちょっと読んだ。 個人史にもとづいたリアリズムの描写、述懐には意味を辿りきれない所もある。あと何回か読むとしても、そこはきちんとした鑑賞が現れるのを待ちたいと思うが、けして難解ではない。熱心な読者ではない私が目を開かせられるのは、作者自ら、「抒情詩集」と銘打ちたかったが、日本の抒情詩の自然賛美の情感詩と向き合うために、「四時詩集」としたという意味のことを「あとがき」で述べているように、自然を語っていた言葉が言葉に食い入る、あるいは言葉を食い破ってくるような瞬間のすごさ、輝きだ。 −−もはや雨は自らが洗われたいために降り続くのである。(「雨の奥で」) −−時が流れるとは/自転にあやかっていたい者の錯覚だ/黙っているものの奥底で/本当はもっとも多くの時を時が沈めているのだ(「錆びる風景」) −−今に垂直に/ついぞ誰ひとり聞くこともなかった/沈黙の固まりが突きささって墜ちる/錆びている私の/時間のなかを(同上) −−思えば途中は過程のさ中であり/終わりはいつも終わらないうちに終わってしまう/みちなかの執着でもあるものだ。(「一枚の葉」) −−途中の過程を奪われて/物みな生存帰属を殺していっている。(同上) 日本語で書きながら、日本語の抒情、情感に回収されないための、言葉のふみ出し。その言葉にふれて、在日60年余の金さんの詩だからいい詩なのだ、という短絡から読む側も解放される。
関連する文学賞
- 萩原朔太郎賞 第18回(2010年) ・候補