肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈
『肉体のアナーキズム』は、1960年代日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈を追う黒ダライ児の美術史研究。前衛芸術、身体表現、反制度的な実践を膨大な資料から掘り起こし、戦後美術史の見えにくい流れを描き出す。
作品情報
戦後前衛の身体は、制度の外側でどのような表現を切り開いたのか。
grambooksから2010年に刊行。1960年代の日本美術におけるパフォーマンス、ハプニング、身体を用いた実践を扱い、本文と年譜・資料を大部に収める。Amazon JP、NDL OPAC、版元ドットコムで紙書籍 ISBN を確認した。
レビュー要約
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新聞書評で複数の美術関係者が取り上げたことからも、戦後美術史を考える基礎文献としての重要性がうかがえる。資料の厚みと視野の広さが評価されている。
書籍情報
- 出版社
- grambooks
- 発売日
- 2010-09-16
- ページ数
- 768ページ
- サイズ
- 14.8 x 3.9 x 21 cm
- ISBN-13
- 9784903341125
- ISBN-10
- 4903341127
- 価格
- 1980 JPY
- カテゴリ
- 本/アート・建築・デザイン
1960年代は、世界各地で、都市化や経済成長、国際化などを背景として、それまでの支配的な近代的価値観に対する異議申し立てが、政治のみならず文化においても噴出した転換期でした。日本においても、50年代後半には、公募団体展という制度からも絵画・彫刻というジャンルからも自立した様々な実験が美術で起こり、「具体美術協会」から「もの派」までの60年代美術史は、現在につながる主要な流れとしてその重要性を認知されています。 しかし、日本各地に起こった前衛美術は、決して単線的に発展したのではなく、また欧米の抽象表現主義からコンセプチュアル・アートに至る流れに追従して展開したものでもありません。特に、読売アンデパンダン展末期の「反芸術」を淵源として起こったパフォーマンス的な表現は、都市化やテクノロジーの発展など、この時代の日本に特有の文脈に対するアンチテーゼとして生まれたものでした。美術家たちは、東京オリンピックや大阪万博を契機に日常の隅々まで統制されていく状況のなかで、身体を武器として抵抗を貫いていったのです。 本書は、日本各地において様々な美術グループ・個人美術家が行なった、これまで忘れられ、あるいは孤立し相互に無関係に見えていたパフォーマンスの実践が、総体としては美術のみならず日常生活における制度化への抵抗を継承していった事実を明らかにするものです。知られざる美術家たちの軌跡を辿り、その表現活動を当時の日本における社会・文化・政治の文脈に位置づけることで、戦後日本前衛美術史の欠落を補填する内容となっています。そして「主流」に対する「もうひとつの歴史」を提起するこのような試みは、グローバリズムの名のもとに均質化と統制がすすんでいく現在の世界に対して、新たな挑戦の可能性を思考し実践する契機にもなるでしょう。 巻末の年譜は130ページにのぼり、図版も256点収録。資料としても圧巻のボリュームです。
1961年東京生まれ。戦後日本前衛美術研究家。現在、福岡在住。
レビュー
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深度のある反芸術パフォーマンス史書
比較的知名度のある「ハイレッド・センター」や「ネオ・ダダ」以外にも語られる事の少ない個人・グループまでをも対象としており、それぞれの個人・団体間における関係までも詳細に記してある。 年譜はあれど、本文においては時系列はあまり意識されておらず、各章を論じるに当たり必要な個人・グループを随時挙げるという形であり、ややまとまりが無く感じる。 私にとってはこの分野は専門外であり、本文の十分な理解には他文献の助けも必要であろうが、本書に目を通すだけでも1960年代の反芸術パフォーマンス史の実体、そのアナーキーさの目撃者となれた。