作品情報
探偵小説を支えた作家たちの闇と魅力を、評論の言葉で掘り下げる。
幻影城版を起点に、悠思社版などで再刊された評論集。日本推理作家協会賞の評論部門にふさわしく、創作ではなくジャンル史と作家像を築く仕事として重要である。
書籍情報
- 出版社
- 悠思社
- 発売日
- 1992-06-01
- ページ数
- 330ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784946424267
- ISBN-10
- 4946424261
- 価格
- 2000 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/評論・文学研究/ミステリー論
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レビュー
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往年の探偵小説の世界に浸ってみたくなる
探偵小説というと、昭和初期のノスタルジックで、倒錯、淫靡、醜怪な空気感をイメージする。江戸川乱歩や横溝正史の諸作品からの影響が大きいのだろう。 「・・・暗い時代の下に秘めやかに生み出された疎外者の夢であり、歴史の暗部に輝く蒼白き燐光のごときものではなかったか。」 これは、権田萬治さんの『日本探偵作家論』序説にある戦前の探偵小説を評した一文だ。 第29回日本推理作家協会賞 評論その他部門賞を受賞した本書は、戦前から大戦をまたいだ終戦直後ぐらいまでに活躍した探偵作家の評論である。作家別に章立てがなされており、作家の特色や、探偵小説の歴史における位置づけを、作品に論評を加えながら展望していく。 蔵書家のコレクションを参照しながらとはいえ、膨大な作品を読み込まなければ著すことのできない評論であり、大変な労作なのだ。現存する資料の希少性からも、探偵小説を概観できる本書は、偉業といってもよいだろう。取り上げられているのは、江戸川乱歩、横溝正史という誰でも知っている作家から、夢野久作、小栗虫太郎らツウ(?)好みの作家、大下宇陀児、木々高太郎ら(おそらく)マニアしか知らない作家と幅広い。しかし、大半は長い年月の間に、風化し忘れ去れ、書籍として作品を手に取ることのできない作家たちだ。著者の評論を読むにつけ、失ったものの大きさに哀惜の念を覚える。 権田萬治さんは、通俗性に対する批判的な態度が顕著だ(例えば、江戸川乱歩の声明を高めた長編)。探偵小説という文学を俯瞰した上でのことだろうが、個人的な嗜好が見えなくもない。しかし、作家の本質を射抜くような着眼点と、読者をそこに引き込んでいく美文には、学ぶべきところが大きい。例えば、小栗虫太郎論はこういう書き出しから始まる。 「小栗虫太郎の悪夢の錬金術は、中世的な暗黒のレトルトの中で初めて純粋に結晶する。」 本書を読むと往年の探偵小説の世界に浸ってみたくなる。名著!
関連する文学賞
- 日本推理作家協会賞 第29回(1976年) ・受賞