タイガー理髪店心中
A novella in which the quiet daily life of an elderly barber and his wife turns unsettling through past death and guilt. The debut volume pairs the title work with Zansho no Yukue.
Work Information
Behind an elderly couple's quiet life in a rural town, a pain thought forgotten wakes again.
Published by Asahi Shimbun Publications, this volume includes the title story, winner of the Hayashi Fumiko Literary Award, and Zansho no Yukue. With humor in its portrayal of an elderly couple running a barbershop, it reveals family loss, postwar memory, and violence beneath ordinary life.
Review Summaries
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The work is valued for letting violence and dark memory rise from what first appears to be a story of aging and care. Its bold yet careful point of view creates a quiet sense of dread.
Book Information
- Publisher
- 朝日新聞出版
- Published
- 2020-01-07
- Pages
- 216 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 18.8 x 12.8 x 1.9 cm
- ISBN-13
- 9784022516619
- ISBN-10
- 4022516615
- Price
- 1600 JPY
- Category
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
穏やかだった妻の目に殺意が兆し、夫はつかの間、妻の死を思う。 のどかな田舎町で変転する老夫婦の過去と行く末。 「これでお互いの老老介護が終わるのだな。楽になる。そうだ、楽になるのだ」 伸びやかでスリリングな視線、独自の土着性とユーモア。老いた妻の発作的な豹変に戸惑う夫の緊張感を描き、 井上荒野氏、角田光代氏、川上未映子氏の選考委員諸氏に絶賛された第4回林芙美子文学賞受賞の表題作。 幼少時に亡くした母親の記憶を繰り返し反芻する老女の感慨を描く「残暑のゆくえ」を収録。 「わたしの血は、最近よもや青くなってはないだろうな」 (「タイガー理髪店心中」より) 選考委員・評論家諸氏絶賛! ! 井上荒野 氏「息子が落ちた『穴』を通じて封印してもしきれない悲しみや恐怖や後悔を浮き上がらせていく」 角田光代 氏「寅雄という八十過ぎの老人ののどかな悪意、善意にも見える無関心、肯定という鈍感、それらをとにかく静かな筆致で描いている」 川上未映子 氏「舞台設定、人物造形、小道具や、風景描写のひとつひとつ――この小説を構成する複数の要素が的確に配置され、機能し、物語に資している」 (以上、選評より) 磯崎憲一郎 氏「単にユーモラスなだけでは済まない、独特の緊張感すら漂う夫婦の関係が巧みに描き出されている」(朝日新聞平成30年3月30日 文芸時評)、 石原千秋 氏「一言で、この作品の全編に殺意がみなぎっていたのだと『錯覚』させる。これが文学というものだ」(産経新聞平成30年3月25日 時評文芸)、 倉本さおり 氏「閉じた関係性から滲み出すのは鈍感さという名の暴力だ」(文學界平成30年6月号)
Reviews
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うーん。。。
確かに結末は、終わりであって終わりでない。 現在進行形です。 単純に「うーん…」という感想です。
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とんでもない新人作家が出て来た
表題作ともう一作「残暑のゆくえ」が収録されている。 「タイガー・・・」は、芥川賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」を超えていると思った。 「おら・・」は新人作家として大健闘の小説と思うが、結末が孫との関係での云々に終わったという点で疑問が残る。「文学は誰を救うのか?」という、ちょっとばかり大げさな問題意識を持ちだせば、「おら・・」を読んだ孫のいない老年期の人間はどうするのか?と。同じ老年期の女性を描いた漫画家近藤よう子のある作品には、近所の幼子との関係が結末に描かれる。主人公のさまざまな思い(それはいずれ遺志になるやもしれず)は、血のつながりはない、何も関わらなければそのままの他人でしかない幼子に託され、継がれる(少なくとも、主人公はそうした確信に近い何かを抱ける)ことになる。 「タイガー・・」の結末は、終わりに見えて終わりではない。ブラックユーモアと言っていいかもしれない現在進行のありさまを提示して終わるのだ、それは終わりではなく、始まりかも知れない。ただ、「上手過ぎはしないか?」という一抹の疑問も持った。著者の本はまだこの一冊である。むろん、その疑問はありつつも、小説としての力を感じる。結末の一文はスッキリすぐさま映像化してしまえるような締めくくりではない妻の一言で終わる。もし映像にするならば、全く別の才能と力が監督(演出家)にも役者にも要求されるだろう。 その「上手過ぎはしないか?」という疑問は、二作目の「残暑のゆくえ」で一掃された。 帰りの車中で読み切らず、自宅に戻って晩に読み終えたのだが、そうしたのは正解だった。平静で読み終えることは出来なかった。 尚且つ、大げさな「文学は誰を救うのか?」という問題意識が改めて明確に沸き起こり、その問に真正面から応える文学として本作を受け止めた。 あの戦争の傷跡が静かに一貫して伏線として描かれる。主人公の女性と夫、それに商店街の中のろうそく屋の主は、戦後、満州からの引揚者である。三人はそれぞれ違った、しかし同根の傷を深く深く抱えて生きて来た。それが終盤で明かされる。読み手の私は不覚にも震えて泣いた。 それだけの力がこの作品にはある。この作家の技量はとんでもない。 「最も優れた小説は推理小説の趣を持つ」というような意味のことを誰かがどこかで言った・・・ことを誰かがどこかで書いていたという、実にあやふやで適当な記憶があるのだが、本作もその趣がある。つまりは、謎解きである。しかし数式が解かれてスッキリするような謎解きには終わらない。たとえば主人公の夫が、戦後、鉄道レールの上にへばりついたガマガエルをなぜ持ち抱え、轢かれないように助けたのか? という、ささやかながら決定的な問題が、終盤で明かされるのだ。 私が愚直ながら本作から伝えられたのは「生きている人間は希望を失わずに生き続けていくこと。それが死者への鎮魂である」ということだ。 この作家の次作を心待ちにしている。
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面白かったです
林芙美子文学賞を受賞した表題作を含む2作品が収められている、作者の初の単行本です。 どちらの話も老境の、過去に悲劇といえる出来事を経験した女性の物語。2人は、老境のとあるタイミングでその過去と向き合います。私はこれでもかと不幸を突きつけてくる、読んだあとでどよーんと凹むような小説は苦手なのですが、この、やりきれないほど悲しい過去を抱えて生きるおばあちゃん2人はどちらも魅力的で(タイガー理髪店のほうの語り手はその夫なのですが、妻に対する理解の鈍さ加減が絶妙です)全体を覆うユーモアもあり、最後まで一気に読んでしまいました。老いることが何か与えてくれることもあるのだな、と思える、深くあとを引く味わいがありました。個人的には2作目の「残暑のゆくえ」の方が、より面白かったです。
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