帆船軍艦の殺人
A classic whodunit about impossible crimes aboard a sailing warship bound for the North Sea.
Work Information
The award-winning work was retitled “The Murder of the Sailing Warship” on publication.
Winner of the 33rd Ayukawa Tetsuya Prize. It was published under the new title “Hansei Gunkan no Satsujin.”
Book Information
- Publisher
- 東京創元社
- Published
- 2023-10-10
- Pages
- 336 pages
- Language
- 日本語
- Size
- 13.4 x 2.7 x 19.4 cm
- ISBN-13
- 9784488025670
- ISBN-10
- 4488025676
- Price
- 1980 JPY
- Category
- 本/文学・評論
【第33回鮎川哲也賞受賞作】 辻真先 終盤で明らかとなるこの物語ならではの、 トリックにも感じ入った 東川篤哉 この舞台でのみ可能なトリックがあって大いに関心した 麻耶雄嵩 敵艦との交戦などストーリー的に盛り上げるべきところは 盛り上げ、しかもきちんとトリックに関与している。 正賞受賞にふさわしい 海上を征く巨大な“密室”で相次ぐ人知を超えた不可能犯罪 【第33回鮎川哲也賞受賞作】十八世紀末、フランスと交戦状態にある英国海軍は常に兵士不足だった。強制徴募された若者たちを乗せ、戦列艦ハルバート号は北海を目指すが、新月の夜に衆人環視下で水兵が何者かに殺害される事件を切っ掛けに、続けて不可解な殺人が発生。逃げ場のない船の中で、誰が、なぜ、そしてどうやって殺したのか? フランス軍との苛烈な戦いのさなか、軍艦という巨大な密室で相次ぐ不可能犯罪を描く第33回鮎川哲也賞受賞作。
Reviews
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異色のミステリとしてはいいのだけど、ね。
第33回鮎川哲也賞受賞作ということで、辻真先さんなど錚々たる方々が賛辞を送っていらっしゃいます。たしかに、日本人が書いた帆船時代の海洋冒険小説など、多島斗志之さんの「海賊モア船長」シリーズ以外読んだ記憶はなく、舞台背景としては異色。 1795年の英仏戦争時、フランス革命半ばでナポレオン台頭のちょっと前。対フランス戦争を続ける英国海軍戦列艦ハルバート号(90門?)に強制徴募された靴職人ネビル・ボートを主人公に据えた、日本では珍しい帆走戦闘艦の物語。さすがに冒険譚としてはいかず、主人公が巻き込まれた殺人ミステリ仕立てですね。──帆船ファンとしては興味津々で、語られるさまざまな蘊蓄を楽しみました。 とはいえ最初の殺人があまりに偶然すぎましたし、基本的に「文官」である主計長が、帆船水夫の花形であるトップマンのような技量を発揮するとか、なんか無理がないかな。それらを含め、ミステリとしてはまあまあかな。 気になったのは最後の締めくくり。あり得ないと思いましたが、どうなのかな。 あり得ないというのは、乗艦が喪失したからといって、乗船している強制徴募兵が「人があまることになったから帰りたいヤツは帰っていいぞ」になるはずがないと思うから。あの戦争のさなか、慢性的に人員不足な英国海軍が下級水兵とは言え熟練者を簡単に手放すはずがないんじゃないかなァ。
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「冒険小説」作家の誕生であってほしい
第三十三回鮎川哲也賞、受賞作。 1795年。英国、サウサンプトンの港で物語が始まります。フランスと戦火を交える英国海軍。ほとんどの舞台は、その海軍の軍艦「ハルバート号」の中。酒場で無理矢理徴募された靴職人のネビル・ボートが主人公。彼は新米水兵として様々な労苦を味わいながら、故郷に残された妻と生まれてくるであろう子供のために何とか生き抜こうと心に決めます。しかし、いつフランス軍の敵艦に遭遇するかわからない緊張感の最中、艦内で連続殺人事件が発生し、彼はあろうことか犯人に名指しされそうになります。果たして、犯人は一体誰?その動機は? 三つの殺人事件が発生しますが、やはり当時の船上で発生する殺人トリックが出色でした。状況は異なるものの森村誠一の或る山岳ミステリなども思い起こしました。他は、まあアベレージだと思います。 むしろこのような時代の、このような状況を創造した「冒険小説」作家としての力量こそ注目されて然るべきではないかと感じました。特に後半は謎解き以上にそのストーリー・テリングの巧みさに読書の歓びを得ることができました。 時間軸を「点鐘」で表現された瞬間、故アリステア・マクリーンなども想起したりして、もしかすると「クライブ・カッスラー」が描くところのUp-to-Dateな海洋冒険小説などが書ける作家が現れたようなとてもウキウキした想いに包まれました。
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帆船好きには嬉しいしトリックも新鮮だが、小説としては改善の余地あり
私は普段はミステリを読まないのですが、帆船好きなので、本屋で偶々本書を見かけた際、そのタイトルに惹かれて購入しました(私のは2023年10月発行の初版).1795年、英国はソールズベリーにて運悪く強制徴募(サウサンプトンから内地まで派遣された)に引っ掛かった靴職人が、戦列艦ハルバート号の水兵としてスカーゲン泊地(ユトランド半島の先端沖)に向かい、北海での哨戒中に遭遇したフランスのフリゲート艦2隻と戦闘、その後シアネス(シェアーネス?)に帰還するという航海において、殺人事件が3度発生する.帆船ものでの殺人事件というと、私はつい『ホーンブロワーシリーズ〈2〉スペイン要塞を撃滅せよ』を想起しますが、事故として処理されたそちらとは違い(そもそもミステリではない)、本書では不可能殺人のトリックと犯人がちゃんと明かされます(私は答えが明かされるまで謎解きできませんでした).靴職人が新米水兵として体験する当時の帆船軍艦内での生活(船の内部構造、交替制のルール、様々な雑務、食事、トイレ、軍規違反者への刑罰、等々)は少々盛り込みすぎなほど細かく描写されていて、帆船ファンである私にとっては楽しめました.ただ、小説の前半がそのように靴職人に密着していたのが、中盤での第1の殺人事件の発生後は、探偵役であるヴァーノン五等海尉という士官の視点に移り、そこに靴職人周辺での陰謀や船全体の状況説明が並行して進行したりして、叙述の焦点が少し混乱しますね.また、全体的に文体が生硬でぎこちなく、登場人物も皆が類型的で個性が無いのが難点で、そこら辺は改善の余地が多々あるかと(「フランス人船長の幽霊」話は必要?).もっとも、これらは単に私がミステリの作法に不案内なだけで、この世界ではこういうのがお約束なのかも知れません.あと、私の個人的な好みで好き勝手を言えば、もっと海の情景描写や、ハルバート号の航路図も欲しかったですね(たぶんドーバー海峡を抜けているはず).