作品情報
隈取絵師は、歴史小説を軸に作品世界を立ち上げる。
歌舞伎の隈取を描く絵師を主人公に、江戸の芸能と職人の世界を描く歴史小説。舞台裏の技と誇りが物語を支える。
書籍情報
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 発売日
- 2012-03-07
- ページ数
- 232ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784022509499
- ISBN-10
- 402250949X
- 価格
- 29 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
町絵師の恵斎は、松平定信の庇護により、お抱え絵師となる。しかし、ある日、定信に納めた絵が盗まれてしまう。盗人は津山藩主の松平康孝であるとされ、恵斎は城中からの絵の奪還を命じられるが……。第3回朝日時代小説大賞受賞作。
レビュー
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興味が沸かなかった
同窓の作との紹介で、購入してみたが、最初からわたしの感性に合わず、途中で(最初の1/3くらい)読むのを止めました。
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整然とした文体で紡がれる、辛くも優麗な世界
暮らす田舎町の書店で、当作品を見つけた。 平素、時代小説に全く親しみを持たない私が、 どうして「隈取絵師」なる、よくイメージすらできないタイトルを付す 作品を読んでみようなどという気を起こしたのか。 今でも、不思議な気持ちになる。 シンプルな文体で紡ぎ出される平茂寛氏の世界は、 小石や藻をさらさらと流す、澄んだせせらぎの清々しさを感じさせる。 一方で、危険な匂いをじんわりと放つ、官能的で妖しい色香を漂わせてもいる。 一瞬、矛盾するかに感じる二種の空気感が、 その実、確かに混じり合う独特の宇宙に引き込まれた。 天井裏から見下ろす奥の乱交場面の導入。 入念に描かれた日本画の絵具や描法。 主人公恵斎の町絵師としての生と誇り。 権力に任せ、絵に狂う定信と康孝。 得体の知れぬ怪僧亮円、美しき職敵如慶、 狡猾な見習絵師如水など、色濃い個性を持つ登場人物たち。 それらが相まって、緩急あるストーリーと巧みな描写の波に乗り、翻る。 美しく強く、あるいは虚しく弱く。 人々の欲望が烈しく行き交う中に、どこか穏やかさが保たれながら 終盤へと向かう物語は、ラストの一行まで確実に読ませる魅力に満ちていた。 行きつけの店がまた一つ増える予感を胸に、一見のレストランを 後にするときのような温かく豊かな気持ちが生まれた。
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隈取絵師・・・ふしぎな題だ
嫁さんと一緒に読み始めたら、冒頭、そこでなにやってるんですかのシーン(>_<) 嫁さんがリタイヤしたあと、読み進めていくといつのまにか物語の中に入り混んでしまっていた。 あれ、もうこれで終わりか?・・・読後感はある意味悪い。 まだ続きがあるはず。そんな気がする。 松平定信との関係は? 仲が悪かったらしい北斎とは? これは次作を期待するしかありませんね。 主人公の鍬形恵斎は、鳥の目を持つ男として、このところ注目を集めている絵師です。 略画式と言う技法を編み出した、北尾政美として知っていたのですが、かっこいい名前に変えていたんですね。 カメラが無かったこの時代、パチリパチリとやるわけにはいけません。 そこで略画式の登場、現場でサッサと描いてしまえるわけです。 さて、「恵斎」が人に言えないところでパチリとした画が大騒動のもとに 本当に画狂いは恐ろしい、ゴッホが何十億円もするのおかしいと思っていたけど この本、それどころではない。
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情景描写のうまい作家!次回作が楽しみ
縁あって人からもらったことにより、この本と出会った。 隈取絵師という風変わりなタイトルに加え、時代小説をあまり読まないこともあり、 導入は読み進むのに、ちょっとくたびれた。(だって、時代小説特有の言い回しとかが) でも、時代小説に慣れた中盤から終わりまでは一気に読めた。 この作家は非常に情景描写がうまい。文章を目で追っていると自然に情景が 頭の中に描かれていくようだった。 この本の白眉はなんといっても、主人公である成り上がり絵師の鍬形恵斎が 正統派の狩野派絵師と対決する腕比べのくだり。 準備の段階から絵の具作り、下絵、下塗り、隈取りなどの日本画の行程が 鍬形恵斎の手仕事の様子を語る文章から、目に見えるようだった。 ただ、絵師として一流なのは分るが 主人公の個性がそれほど強烈には感じられない。 それも作家の意図か。連続物になるのかもしれない。次回作が楽しみ。
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小説愛を見た!
お色気、艶っぽさ、あります。 冒頭から作品世界に引きずり込まれます。 ハラハラドキドキ、勿論あります。 興奮の坩堝と化す富くじ会場に仕掛けられた、 名画「現金に体を張れ」を彷彿とさせるサスペンス。 絵の技法の蘊蓄が深い、圧巻の絵画対決シーン。 何より心地よいのは物語構成と人物配置の巧みさでしょうか。 面白い物語を紡ぎたいという、作者の小説への愛が、めくる頁の そこかしこから立ちのぼります。 私などより優れた〈小説の読み手〉の方に、この作品の魅力を もっともっと汲み上げて欲しい、何やら得体の知れぬ興奮に包まれています。
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1本の映画を見たような感覚が・・・
読み終えたとき、1本の映画を見たような感覚におそわれた。冒頭からテンポよく物語が進んで、一気に読み終えた。 その間、映像が常に頭の中に浮かんでいた。 これまで多くの小説を読んできたけど、こんな感覚は初めてだ。 スリルとサスペンス、スペクタクルありのエンタテインメント小説。 江戸時代の絵師が主人公のこんな小説がいままであっただろうか? とても機転がきく人物として描かれていた鍬形恵斎は実際はどのような人物だったのか興味を持った。 また、作品中に出てくる絵を見たくなった。津山市にいけば見られるのだろうか? とにかく、映画化されるのを切に願うような作品だった。 次回作が楽しみだ。
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スピード感あふれる江戸時代のスパイ小説!
ちょっと読み始めたら、ぐいぐい作品世界に引き込まれてしまい、一気に読了してしまった。書き込まれた細部が、情景と心情をリアルに突きつけてくるが、決してスピード感を損なっていない。内容は、津山城を舞台とした江戸時代のスパイ小説。と言っても、主人公の絵師・鍬形恵齋は、ミッション・インポッシブルのトム・クルーズでなく、ダイ・ハードのブルース・ウィリス。為政者同士の争いにいやいや巻き込まれてしまうのだ。なんで俺がこんなことを…とぼやきながら、江戸時代特有の階級制度の中、絵師という特殊な立場を巧みに使って捜査を開始する。ラストのどんでん返しは圧感である。追い詰められ、為政者に翻弄されていただけだったのかという無力感の中、恵齋が打った一手とは。 他の評者が書いているが、もし主人公恵齋に個性が感じられなかったとすればそれは、恵齋が唯一登場人物の中でまともな人間だからではないか。恵齋のまともさと来たら、今自分が戦っている、激しく自分を憎んでいる敵の女絵師に、淡い恋心を抱いてしまうほどなのだ。他の人物は全て狂気と言ってもいいほどの執着を持ち、自分の属する陣営のために、己の才覚と意思のすべてをかけて戦いを挑んでくる。「隈」とは、もともと道や川が曲がって入りくんだところにできる物陰をいうそうである。タイトルの「隈取」は、絵の技法のことだけでなく、そういう人の心の暗部と、対峙する絵師ってことなのかなと思った。これはもう、続編を期待してしまうのだ。 スカイツリーで展示されるという、鍬形恵齋の江戸屏風を見たくなった。桜が咲いたら、鶴山公園(津山城跡)にも行って、兵馬の駆け上がった石段を歩いてみよう。そんな気持にもさせる作品だった。
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歴史ミステリー
搦めてから攻め込まれたような導入で、一気に読まされました。 それぞれの場面を微妙に関連させ、最後にまとめ、そして余韻を残して締めくくりと、心憎い構成ですね。 町絵師とお抱え絵師の対決に大奥が絡んだ歴史ミステリーでえ、大変面白く読ませていただきました。
関連する文学賞
- 朝日時代小説大賞 第3回(2011年) ・受賞