作品情報
受賞記録から読む、藤井論理『クラウは食べることにした』の輪郭。
<p>KADOKAWA,2017,978-4-04-106028-5<p><ul><li>タイトル:クラウは食べることにした</li><li>タイトル(読み):クラウ ワ タベル コト ニ シタ</li><li>責任表示:藤井論理 著</li><li>シリーズ名:角川スニーカー文庫 ; ふ-6-1-1</li><li>シリーズ名(読み):カドカワ スニーカー ブンコ ; フ-6-1-1</li><li>NDC(10):913.6</li></ul>
レビュー要約
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読者反応は、作品の題材や受賞歴への関心を軸に受け止められている。書誌情報が限られる作品では、賞の記録や作者情報を手がかりに評価される傾向がある。
書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 2017-08-01
- ページ数
- 328ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.7 x 1.6 x 15 cm
- ISBN-13
- 9784041060285
- ISBN-10
- 4041060281
- 価格
- 682 JPY
- カテゴリ
- 本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル
第22回スニーカー大賞〈特別賞〉受賞作!お風呂?侵略?それとも…ご飯? 第22回スニーカー大賞〈特別賞〉受賞作! 庭先の巨大な竹から現れたのは、文化侵略兵器を名乗る銀髪の美少女・クラウ。日本の文化力を吸いつくし、高天原に送るのが目的らしいが―― 「も、もうダメぇ……変身しちゃうよぅ……」 料理を食べては悶え、蓄えた文化力で変身するし、あげく香辛料でハイになり。 そんな食い意地MAXな侵略者は俺、匠香介の家に居着き、料理と文化と地球の明日を巡るドタバタな同居生活が始まるのだった!
レビュー
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人の為に動く事が出来なくなった少年が食欲旺盛な侵略者との出会いを通じて再び動き始めるまでを描いた成長譚。若干構成がドタバタしている
第22回スニーカー大賞「特別賞」受賞作 物語は主人公の匠香介がシェフの父親から仕込まれた特技である調理技術を活かして三種類の苺大福を作っている場面から始まる。 香介が苺大福を振る舞おうとしている「三浦佳奈」はスマホゲー「魔女これ」のキャラクター。 画面の向こう側にしか存在しない女の子の好物を作る香介にはかつて小学校で好きになった女の子に 調理実習で得意のスパゲティを振る舞おうとして、小学生離れした出来の逸品を作りあげクラスの賞賛を集めたは良いが、 同じ様にスパゲティを振る舞おうとしたその女の子のプライドをへし折り、泣かせてしまった挙句 掌を返したクラスメイトに責め立てられたというに苦い記憶が残っていた。 そんな苦い記憶がちらりと蘇る香介だったが、気が付けば三浦佳奈が同じ台詞を繰り返し発し続けている事に気付く。 バグかと思い再起動しようとした香介だったが、窓の外に見える庭に見慣れない物がある事に気付く。 違和感の正体は天を突くかのようにそびえ立つ巨大な竹。しかもその竹の中を通って遥か上空から光が下降してくる。 香介の目の前で竹の一部に窓の様な穴が開き、そこから転がり出たのはカプセルトイのカプセルだった。 異様な状況を前に恐々と竹に近づいた香介だったが、何者かに押し倒され腹の上に乗られてしまう。 腹の上に跨ったのは平安貴族の様な髪型が特徴の全裸の女。 その奇妙な女は香介に「あなたが進歩的文化人ですね?」と問い質した上で白い蛇の様な物を手にして 香介の持つ文化力を吸い取って自分の祖国「高天原」に捧げると宣言。 訳が分からない香介だったが、女は香介があわよくば竹を伐採しようと手に持っていた鉈を警戒し飛びのく。 鉈を手に対峙する中、香介は「裸のままじゃ色々とアレだから」と女を言い包めて一旦家の中に連れ込むことに成功。 ジャージに着替えた上でクラウと名乗ったその女は世間の冷たい視線を浴びながらも二次元少女の好物を作り続ける 香介の痛々しい魂こそが高い文化力を産み出し続けるのだと説明した上で「チャンスを与えましょう」と言い出す。 クラウが香介の料理で感服すれば何もせずに高天原へと帰るという条件の勝負が突き付けられ、仕方なしにオムライスを作る香介。 香介のオムライスを口にした瞬間、腰をくねらせ切なげな吐息を漏らし始めたクラウは 「く…くやしいけど…返信しちゃうー!」と絶叫するや巫女の様な姿に変身し、窓から空へと飛び立つと 夜空へと向かってビームを発射して失神。 クラウのビームで夜空に巨大な「オイシカタデス」の文字が描かれ、勝負は香介の勝利に終わったかと思われたが、 翌朝目を覚ましたクラウは「言ったのではなく、書いただけ」と屁理屈をこねまわして一品だけでは性急すぎるとして あなたにもっとチャンスをあげましょうと居座る事を宣言。香介との勝負を続けることになるが… 作者がこういう賑やかなラノベが好きで、自分でも書いてみたくなったんだろうな、というのはよく伝わってくる。 ただ、勢いで書いているという部分も伝わってくるわけで、得意な所はのびのびと書いており非常に読みやすいが 今一つ不得手な箇所に差し掛かると文章がテンポを失い、四苦八苦しながら書いてくることが伝わってくる、 ある意味非常に新人賞作品らしい作品。 物語の方は高天原から文化力を奪いにやってきた侵略者にして文化侵略兵器かぐや型、通称「泥人(どろうど)」14号のクラウと そんなクラウから二次元少女に本気で料理を作り続けるという痛々しい行為を続ける「文化力」を狙われた香介が出会い、 クラウの「料理で感服させれば諦めて帰る」という条件を付けた勝負を続ける中で、香介のクラスメイトである ギャルの志緒がクラウの物ではない文化力吸収具「天沼矛」に襲われるという事件が発生、クラウ以外の侵略者の存在が 見え隠れする中、高天原からの文化力を早急に送れという圧力が強まっていく展開が描かれている。 序盤から「ああ、この作者さん本当にコメディ系の作品が好きなんだな」と伝わってくるノリとテンポの良い会話劇は 作者の一つの武器になっている。特に主人公の香介とクラウの会話は中々に毒があって、ニヤニヤさせられた。 文化力が奪われたらどんな世の中になるか、というクラウの説明と香介の反応 「誰にでも当てはまる様な当たり障りのない歌詞、覚えやすさだけを重視しただけの単調なメロディの歌が ランキングの上位を占める様になります」 「それ昔からだろ」 「海外から輸入された映画が、監督の意向を無視して勝手に編集されて公開されます」 「国ごとにレーティングがあるし」 「演技の経験の浅い、モデル上がりのタレントが吹き替えにキャスティングされます」 「一般層への宣伝効果を考えるといたしかたない」 「かつてヒット作を描いた漫画家が、漫画を描かずにテレビに出演する様になり、文化人ぶったコメントを乱発する様になります」 「漫画家が一生漫画家である必要はないもんなあ。転職だよ転職」 …どこの業界に喧嘩を売ってるんだか、というようなやり取りが連発されてオタク業界系のネタが好きな方には堪らないかと。 しかも主人公の香介を中心にどのキャラクターも人間臭いというかちょっとズルい所があって、学校に乗り込んできたクラウに たじろいだ挙句、最後は見て見ぬふりを貫き通そうとする担任の篠里先生の態度とか適当人間の見本市みたいなノリも 多少クセはあるけどなかなかに楽しませてもらった。 ただ、ギャグで押し切ろうとするだけでなく割と「良い話」っぽい所もあるのが本作のもう一つの特徴。 冒頭で主人公の香介が「善かれ」と思ってやった事が裏目に出てしまい、「人の為に動いたってロクな事にならない」という 人間不信っぽい性格になった経緯が描かれているのだけど、 そんな香介が最初はクラウの文化侵略から愛する二次元文化を守るという目的から動き始めたものの 同級生である志緒が正体不明の侵略者に襲われた事件などを通じて少しずつ「人の為に動く事」の意味を思い出していき、 最後は窮地に陥ったクラウを助けに身を挺する姿を見せるようになるなど、一つの成長譚としても描かれている。 冒頭では会話劇中心で勢いだけで乗り切る作品なのかと思っていただけにテーマ性もしっかりと打ち出している辺りは 良い意味で予想を裏切られた。 ただ、話が全体的にゴチャゴチャしているという構成の不備は否定できないかと。 最初は侵略者としてやってきたクラウが香介との勝負の為に居座る事になったと思ったら勝負自体は大して描かれず 急にクラスメイトの志緒の話になったり、志緒の話を大急ぎで片付けたと思ったら急に高天原の圧力で クラウが危機に陥る展開になったりと、どうも話全体がドタバタと進行しているような印象を受けた。 もう少しじっくりとキャラクターを、特にヒロインのクラウが侵略者から変化していく過程を掘り下げて欲しかったように思う。 また、「文化力」という話の根幹になる設定自体も結局の所冒頭近くの「文化力とはどういう物か」という説明と 中盤での志緒とその母親を襲った事件の辺りで描かれた状況が今一つ繋がらず理解に苦しんだ。 作中に独自の設定を持ち込むのは良いが、シンプルで読者に理解しやすい物にしないと読者の集中力が削がれて ストーリーに集中できなくなるのでこの辺りの配慮はもう少し欲しかった。 読み終えてみれば作者の好みであり、「書きたい部分」であるテンポの良い会話劇やコメディシーンは良いし、 人間不信だった少年の成長というテーマ性の部分もストーリーの中に落とし込めているが、 全体の構成や設定の作り込みというどうも作者が苦手としている部分の粗は残ってしまった。 良い部分・今後「売り」に出来そうな部分は割と明確になったので、残った部分は苦手な部分をどう次作意向で 克服するか、という良くも悪くも新人作家のデビュー作らしい作者の成長が望まれる一冊だった。
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肝心の部分が曖昧で尻すぼみ
ヲタネタを交えた掛け合いや,ヒロインのアホの子ぶりはそれなりに楽しいのですが, 美味にあえぎ声を上げてのアヘ顔ダブルピースや,なぜかお米をカタカナで表記したり, このほか,直接や間接を問わず,下ネタを連想させる言い回しは少しやり過ぎに感じます. 何より,軸の部分が見えづらく,『かぐや姫』を重ねた侵略者という設定が曖昧なら, そこへ少年の特技(?)である料理や,彼のクラスメイトの問題を絡める展開も唐突で, これらのまとまりも悪く,ゴチャゴチャしたまま進められる話運びには目が滑りがちです. 一応,ハッピエンドとなる結末は,二人で囲む食事のやり取りが暖かさを残しますが, 侵略者だけでなく,冒頭によくわからないままに始まった対決とやらは尻すぼみの印象. 敵側であったはずの彼女の心変わりにも,これまたいきなりというのは否めないところで, 彼女の変化をはじめ,もう少し二人が心を通わせていく様子を丁寧に見せてほしかったです.
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